がたがた揺れるジープの中、西日が顔に当たる。
都庁に着くまで仮眠を取るつもりであったが、寝付けなかった。
血のように紅く夕日で照らされている都庁が見える。
周囲に存在する高層ビル群はまるで都庁を守るかのようにその破壊された姿を見せていた。
この荒涼とした新宿は難攻不落の要塞のように思える。
春が近いとはいえ
日は早々と沈み、もうすこしで悪魔たちが支配する時間が始まる。
これから訪れる激闘を暗示させる。
「着いたぜ!さっさと降りろ!」
ジープの運転手が素っ気無い声で到着を知らせた。
都庁前の広場では人間の死骸と悪魔の成れの果てが無残に転がっている。
戦いからもう何日もたっているのだろう?
死臭と悪魔が崩壊した時に発生するマグネタイトの臭いが鼻につく。
その臭いに釣られ、春が来る前に目覚めた蟲達が蠢く。
駐車場へ向かう入り口の前にバリケードが張り巡らされている。
そして周囲を見張っている数名のレジスタンスが僕達に気づいた。
「応援部隊か!助かったぜ!」
「あんた達、応援部隊だな!やったぜ!
応援部隊が来てくれれば、百人力だぜ!
早く仲間たちを助けてくれ!」
と、歓迎の意を示した。
僕らはバリケードを通り抜け、都庁の駐車場に入る。
大破壊前は、駐車場だったであろうホールに足を踏み入れた。
ホールには血と硝煙の臭いが充満しており、激しい戦闘があった事を物語っていた。
血で濡れた布切れで覆われている死体が駐車場一面に並んでいる。
向こうでは担架で死体が運ばれている。
死体を地面に安置したレジスタンスの一人が僕たち応援部隊に気づいて、こちらを向いた。
「畜生!あんたらがもっと早く来てればなぁ、あいつは、死なずに済んだかもしれねぇんだよぉ・・・・・・・
・・・・・・・・ちくしょお・・・・・・・」
彼は涙声で叫び、そのまま泣き崩れた。
「畜生!
悪魔やら、罠なんぞに引っ掛かって、このザマだ。
まだ中で戦っている奴もいる!
そいつらを助けてやってくれ!頼む!」
死体を運んだもう一人はそう言い、死体に布を被せた。
「ああ、分かった。
俺たちに任せろ」
園田が答えた。
しかし、その言葉を聴いていないかのようにその男は叫んだ。
「みんな死んじまった・・・・・・・・・・
畜生・・・・・・畜生ぉぉぉっ!!」
その悲痛の叫び声を聞きながら駐車場を後にした。