偽典・女神転生 東京黙示録

第九話「解放」

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「おいっ!起きろよ!」
頭にもやがかかったかのようにだるい。
早坂が僕の体を揺すっている。
「新宿解放作戦が進展したんだ!
新しい情報が入ったんだよ!!」
園田はもう着替えも終わり、いつでも出かけられる格好をしていた。
「俺達も、解放作戦に加わる事になったんだ。
作戦会議が開かれるみたいだ、早く詰め所に行こう!!」
早坂に急かされる様にブルゾンを羽織り、部屋を出た。
廊下では戦いの準備に取り掛かっているレジスタンスの人たちが見られた。

「全員揃ったな・・・・・・・・・」
会議室に入ると、レジスタンスのメンバー2部隊ばかりと、渡邊伸明が待っていた。
そして、桐島も待っていた。
「では、これより新宿労働キャンプ解放作戦、作戦会議を始める。
労働キャンプの内通者である、猫娘から連絡が有り、内部の大まかな地図が手に入った。
これを元に解放作戦を練った。
爆破部隊、解放部隊、陽動部隊の3部隊に分かれて行動してもらう。
まずは爆破部隊だが、君達の手筈はすでに通達した通りだ。
異存は無いか?」
「ありません!」
「解放部隊は、既に部隊のリーダーに作戦は通達してある。
後は、部隊内で調整をつけてくれ。頼んだぞ!」
「はい!」
渡邊さんは次々と確認を行っている。
そして、僕たちのほうに向き、
「・・・・さて、園田以下4名による陽動部隊だが・・・・・・・
君達には、進入した後キャンプ内の歓楽街とも言える所を抜けて、奥に進み、キャンプの管理者であるダンタリオンを、弾薬庫爆破と同時に襲撃してもらう。」
「それまでの間に、ダンタリオンに動かれては困るのでは?」
爆破部隊の一人が疑問を口に出した。
「それは、猫娘が何とか食い止めるそうだ。
彼女はダンタリオンに、気に入れられているらしいのでな。
で、陽動部隊は猫娘を逃がし、応援部隊が到着するまでダンタリオンを食い止めてもらう。」
「完全に捨て駒ですね・・・・・・・」
上河は小さな声でつぶやいた。
「この任務を達成すれば、我々はペンタグラムから完全な信頼を得る事が出来る。
文句は言ってられないよ。」
上河を諌める様に園田は言った。
「そうだ。俺たちにできるのは、デビルバスターの底力を見せてやるだけだ。」
自分自身に問うかのように早坂は言い放った。
「園田君たち、この作戦は君たちの手にかかっている。是非頑張ってくれ!」
「はい!!」
「各部隊とも、月に一度、キャンプ内に食糧を補給するトレーラーの倉庫に進入する。
そこで猫娘と落ち合い、彼女が用意しているバエルの服を着用し、作戦を遂行する。
各部隊とも、潜入後に見張りなどに看破されそうになった時は、面倒な事になる前にその場で抹殺してしまってくれ・・・・・・・
では、これで作戦会議は終わる。
各自、武器類の点検を厳重に行い、自室にて待機する事。」
渡邊さんの言葉で会議は終了した。
「今日は、とっとと準備して明日に備えな!
途中でギブアップなんてのは、通用しねぇんだからな!!」
幹部の一人がからかい半分に声をかけてきたが、僕たちは無視して会議室を出た。
「何よあの作戦!
上河君が言う様に、完全にあたし達の事、捨て駒にしてるわ!」
明らかに顔を脹れて桐島は怒っていた。
そんな桐島と対照的に早坂は
「ああ・・・・・・・だが、いいチャンスだと考えよう。
奴等に、デビルバスターの底力ってヤツを、見せつけてやろうぜ!
そうすれば、あいつらも見直すだろうよ!」
といかにも早く作戦に作戦したそうだった。
「さっさと、武器庫に行こう。弾の補充をしとかないとな。」

武器庫では多数のレジスタンスが並んでいた。
明日のキャンプ解放作戦だけでなく、都庁解放作戦に参加する人たちも多くいた。
ようやく自分の番になり、倉庫の中に入った。
「新入り!お前さんの扱えるのはこんなモンだぜ。
どっちにする?」
中に入ると、髭を蓄えた親父がモスバーグM500と64式自動小銃を手に持っていた。
僕は迷わずモスバーグM500を手に取った。
その砲身の長い散弾銃がここに来てから毎日見る夢の矢のように思えた。
「ほら!これも持って行きな。」
フリッツヘルムも貰った。
「それと弾だ。これがSS通常弾で単発の弾だ。そして、こっちがわれらペンタグラム特注のSS光子弾だ。これはな、単発の弾を発射して、悪魔に命中したら体の中で爆発し、奴等の苦手な光を放つんだ。」
9つのSS通常弾の入った箱と1つのSS光子弾の箱を手渡された。
ずしりと重い感触が手に感じる。
「よし。これで、武器の心配も無いな!」
「はい。」
「頑張ってきな!」

他の人たちが武器庫で装備をもらっている間、倉庫の外でぼんやりとしていた。
同室の真治が慌てている様子で武器庫の中に入っていった。
どうやら僕に気づいていない様子だった。
そういえば彼と卜部さんは都庁解放作戦の先発隊だった。
どうやらみんな装備を整った様だった。
「葛城君、真治さんに会ったのだけど、今日の午後、新宿に出発するみたいだね。」
「相変わらず、おっちょちょこい人だ。どうせ卜部さんに怒られて弾を取りに来たんだろうな。」
園田があきれた顔で言った。
「でも、いいよな。自分の手でバールを倒せるかもしれないしな。」
「達也。まだ都庁の作戦に参加できない事が、はっきりと決まった訳じゃないし、
希望はまだあるわよ!」
「そうだな。俺たちはこの作戦に成功すれば都庁にもいけるかもしれないしな。
俺達、デビルバスターの底力を見せてやろうぜ!
なあ、葛城。」
「じゃあ、皆さん明日に備えましょうか。」
上河の言葉で僕らはそれぞれの部屋に戻ろうとした。
そんな僕らを、犬とともに見張りをしていた一人の長髪の女性が文句を言ってきた。
「作戦に参加できたとしても、それが、私達に信頼されてる証だなんて思うのは大間違いよ。
作戦の中には、捨て駒だって必要だわ。
いつ死んだって惜しくない人間を、捨て駒として投入するのよ!」
「こちらも重々承知の上だ。
君達が、我々のようなシェルター出の人間を憎む気持ちも分かるが、渡邊さんは、君達のように考える訳じゃない。
リーダーを信頼してるなら、リーダーの真意を、もっと考える様にしたらどうかと思うね。」
言いたいことを言っている彼女の言葉をさえぎり、園田は堂々と反論した。
「・・・・・・・・・ふん、エリートさんは言う事が違うわね。
じゃあ・・・・・・
実力とやらを見せてみなさいよ。あるならね!
アンタ達が凄いヤツだって分かれば、私達は認めるだろうし、何も言わないわよ。」
「園田、さっさと行こう。」
あまり下らない事に時間を潰したくない。
「あんたでしょう?
悪魔を操れるのは……
せいぜい、その悪魔に殺されないようにね。」
そんなこと、言われなくてもわかっている。
「そんなへまはしないよ。…明日の作戦で忙しいから下らない事で声をかけるのはやめてくれないか。」
「怖くなって泣いて逃げ出さないでね、お、子、ちゃま。」

部屋に戻ってくると、相変わらず卜部さんは黙々と出発の準備をしていた。
「お前たちも明日出発か?」
「はい。卜部さんはこれからですか?」
「そうだ。」
少しの静寂のあと、真治が戻ってきた。
「はあはあ、よかったまだ出発していなかった。弾を取りに行ってきました。」
「遅い。もう集合時間が迫っている。お前も早く武器を取れ。」
「おす。」
よく見ると卜部さんの手が震えているように見える。
「お前たちも明日出発だろ。今日はゆっくり休んどけ。」
「作戦の途中で疲れちゃったらどうしようないぜ。」
二人とも行く準備は整ったようだ。
「行って来る。」
「バエルの首をお土産に帰ってくるから、お前らも無事作戦成功させろよ。」
「御武運を願っています。」
「お前らも生きて戻って来い。」
「そうそう死んだら祝い酒も飲めないしな。」
「卜部さん、真治さん。頑張って下さい。」
「…新入り、それは俺たちの台詞だ。」
「そうそう。お前らこそ頑張れや。」
「おい、早くしろ。もう時間だ。」
「はい、卜部さん。じゃあな。」

二人がいない部屋の中、園田と僕は明日のために銃を整備した。
そして、早い出発時刻のために少し早めに寝ることにした。

眠れない。
身体中が震えている。
明日、悪魔の群れの中、囮をしなければならない。
それもあの時手も出せず呪文の一つで重傷を負わせたあのダンタリオンと再び闘うかもしれない。
それだけで恐怖が身体の底から湧いてくる。
眠れない。
いつもより錠剤を一つ増やした。
そのおかげかようやく深淵の中へ入っ……

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