33/影
22day/November.11(Mon.)
シャーロック&ルイ作


 今日ものどかな日だった。
いつもは私が先に起きるのに、今日はユイが先に起きていた。
 ユイは服を着替えて下へ降りると、中庭へ出る。

「ん〜………やっぱりこれじゃ寒いな……」

 それもその筈、黒服の上下にベストを羽織っているだけだからだ。
 しばらくすると青子さんが来た。

「おはようキサト君」

「おはようございます青子さん」

「ちょっとタイム、その『青子さん』ってのやめてくれる?」

「えっ?」

 少し起こっている顔をしている青子さん。
 おっと、この言い方もまずいな。

「あの? まずいですか?」

「私はあまりその呼び方、好きじゃないのよ。志貴にもそういってあるし」

「じゃあ………………………せ、先生?」

「う〜ん、まっ、それでもいっかな? それで何をしてたの?」

「朝の空気を吸いに…先生は?」

「私もよ、でもやっぱりイギリスの冬よりこっちの冬のほうがまだなじみ易いわ」

「ユイ様、青子様」

 翡翠が中庭に来ると、ユイにはそれが朝食の合図だと分かった。
 ユイは一度自室に戻り、上着を置く。

「んにゃ?」

「あっ、おはよ。朝ごはんだよ」

「おぅ、すぐに着替えるから先に行ってて」

 ユイを先に行かせ、クローゼットから服を取り出す。
白のズボンに赤い服を着ると、階段を降りて洗面所へ向かう。
 蛇口を捻り、冷たい水を出す。
水を手に掬い、顔にかけると冷たさが顔にしみる。
 タオルで顔を拭き、居間へ向かうと青子さん、おっと…先生達が食事を取り始めるところだった。

「お待たせみんな」

「エレイスさん、ユイさん、今日は私、兄さんと翡翠と琥珀と共に、外に出かけます。すいませんが留守番をお願いできますか?」

「えっ? あっ、はい分かったよ」

「あと私も出かけるわよ、帰りは遅くなるわ」

「先生も? は〜い、分かりました」




 朝食を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいると、先生が出かけ、続けて秋葉達も出かけていった。
 みんなが出かけると、この大きな屋敷に私とユイだけだからいつもの静けさが更に静かになった。
 私は中庭に出て、秋の終わりだというのに暖かい日差しを浴びることにした。
 長椅子に座り、太陽に手を翳し、ボォ〜ッとした。
 猫みたいにヌクヌクと太陽から暖かさをもらっていると、いつの間にかお昼になった。

「エレイス〜〜? 」

「は〜い? なに〜ユイ?」

「お昼にするよ、手伝ってくれる?」

「いいよぉ〜」

 キッチンへ向かい、昼食の準備をし始める。
 何を作ってくれるんだろう?
 ユイに聞いてみると、トマトがあり、スパゲティーの麺があるという事でトマトスパゲティーにするという。
 そしてフランスパンを使ったブルスケッタというパンも作るという。
 まずユイは、トマト、たまねぎ、肉を適度な大きさに切り、笊に乗せてゆく。
 私はパンを切り、トマトをオリーブオイルにつけ、かき回す。
 うん、オリーブのいいにおい♪



 その頃、一人の男がこの屋敷を見ていた。
目を細め、私達を見ている。
この男性の標的はユイ。

「あいつ、生きてたのか?」

 男はゆっくりと屋敷内へと侵入し、警報機も探知せずに簡単に侵入する。
 そして時が来るまでジッと森の中から見続けた………。



 トマトスパゲティーとブルスケッタが完成し、それを机の上に置く。
 ユイはフォークとスプーンを綺麗に並べ、紳士ごとく椅子を引いた。

「はい、どうぞエレイス」

「ありがとユイ」

 ゆっくりと私が座るのと同時に椅子を押し出す。
席に着くと、私は頂きますと言い、フォークに麺を巻きつけ、口へと運ぶ。
 うん、ベリーグッド!
 おいしい!
 このブルスケッタも中々なもの。



 食事が終わり、またのんびりしていると、いつの間にか夕方になった。
二人で話していると、瑞希さんが遊びに来てくれた。
 これでまた楽しくなる♪

「へぇ〜、ユイ君、料理が上手なんだ〜」

「うん、お昼、すごくおいしかったんだもん」

「中々、いい夫になりますなぁ〜エレイス君?」

 にし〜っといたずら顔になっている瑞希さん。
怖いよなんかぁ〜。
 そしてここに来る前の頃の話、そしてこの遠野家生活の話をした。
 話が盛り上がったところでユイは部屋を出て、中庭へと出た。
 夕方になって急に冷え込んだため、コートを着て出ると、先客がそこにはいた。
 七夜だ。

「二人のところにいなくて良いのか?」

「うん、二人のほうが良いかなと思ってね」

「まぁ、お前の自由だけどな」

「そういえばお昼、どこかにいってたの?」

「ああ、ちょっと街中に出ていた。何かあったのか?」

「いいや、お昼ご飯にいなかったからさ」

「すまんな、今度はちゃんと言ってから外に出る」

 スッと立ち上がって、軽く背伸びをすると、ユイの方を見る。

「ユイ、一つ手合わせてもなえないか?」

「えっ」

「最近からだが鈍っているような気がしてな…いいか?」

「いいよ」

 ユイは両手から血の棒を出し、一本を七夜に渡す。
 右手で掴み、軽く振って棒を逆手に持つ。
 ユイも両手で棒を掴み、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
 七夜はわざと隙を見せるような形に構え、ユイを誘わせる。

「はぁぁ!」

 七夜の読みどおりにユイは七夜に切りかかった。
 七夜の腹に向かって棒をきりつけようとすると、七夜は一方後ろに引き、棒を受け止めた。
 続けざまに七夜に向かって右、左と切りかかるユイ。
 しかし七夜は簡単に避け、すべてユイの関節、手首に攻撃を当てるだけだった。
 徐々に痛みが増し、振ることが困難になるユイ。
 そして五分も経たずにユイは何発目かの打撃を食らい、棒を落としてしまった。
 そして結いの目先に棒を向ける。

「終わりだ」

「う〜ん、やっぱり上手くいかないもんだな」

「今ここで強くなったら俺だって強くなっているさ。腕は大丈夫か?」

「うん、大丈夫。あっ、もうすぐ夕食を作るから先に部屋の中に入っていて」

「ああ、早く来いよ」

 部屋に入る七夜。
 腕を摩りながら椅子に座ると、今日の夕食のことを考え始めた。
 と、その時、尾が長い綺麗な鳥がユイの近くを飛んできた。

「ツバサ?」

 ユイの声に反応し、クルッと旋回するとユイの手に止まった。

「ユイ様、お久しぶりです」

「よく来たね、遠かっただろう?」

 ツバサ
 ユイの使い魔ともいうべき存在。
 ユイが以前。祖父母の家に帰った時、ユイ、私のサポートの為に作ってくれ、つい先日までいろいろなことを勉強をしていたのだ。
 そして今日、ユイの下へ向かうことが許され、ここへ来たのだ。

「もういいのかい?」

「はい、お爺様とお婆様に様々事を教えてもらいましたから」

「そうか、じゃ、みんなに紹介しないとね。人間の姿に戻ったらどうだい?」

「は〜い♪」

 ツバサは一度飛び立つと、パァッと青く光だし、翼が手に変わり、ゆっくりと人の姿へと変わっていく。
 そしてゆっくりと地面に着地すると、ユイに向かってニコッと笑顔を作った。

「じゃ、行こうか?」

「はい……っ!」

 突然、ツバサの顔が変わり、あたりを見回した。

「どうしたツバサ?」

「気をつけてくださいっ」



 私と瑞希さんがユイや志貴のことを話しているといつの間にか夕方になってしまった。
 お互い、ユイの長所短所、志貴の長所短所に関して話して、盛り上がってしまったのだ。

「あっ、七夜」

 瑞希さんの声で振り向くと、七夜が部屋に入ってきた。
 ユイが夕食をもうすぐ作るということを教えてにきてくれたのだ。

「じゃ、私、ユイの手伝いをしてくるから」

「うん、じゃ、七夜と少し話しているよ」

「りょ〜かい」

 部屋を出て、一回へ降りると私は中庭へと出た。
 ユイの姿を見つけると、一人の女の子と一緒にいるのが見えた。

「ユ〜イ〜、その子は………」

「エレイスっ」

 ユイは私の前に守るような形で立つ。
 後ろから覗くと、何かに警戒をしている顔をしている。

「ふむ、私の存在に気づくとは……ユイ、お前、なかなかいい使い魔を持ったな」

「誰だっ!!」

「ユイ様、気を付けてください…」

 ゆっくりと警戒しながら歩き始めるユイ。

「貴様、生きていたか…」

足を止め、振り替えるとそこには、黒ずくめの男が立っていた。
黒ラフなスーツの隙間から短刀が二本見え、体中から不気味なオーラが漂っていた。
ユイは戦いの中で気付きあげた経験から、自然に体を構えた。
腰を落とし、相手の出方を見る。
ユイは自分からは決して攻撃しないように決め、そして可能なら殺傷せずに倒すというのを決めている。
しかし、この相手にはソレが通用しないとすぐにわかった。
この男からは精気が感じられない、それに…………………………どこかで見たことがあるような気がしているのだ。
そう、自分を狙っているような………うまく説明できないような感じになっているのだ。

「お前………誰だ?」

「ふっ、私は貴様の影……名は六動神楽」

ユイは構えを解き、ゆっくりと近づく。

「私の事を覚えていないようだな?まあいい………。率直に言おう、貴様の両親を殺したのは私だ」

ソレを聞いたユイは、頭の中に稲妻のような電撃が走った。
そう、あの時、ユイの運命の分岐点とも言うべき交通事故の事を思い出したのだ。

「私はこの遠野家の前党首から依頼を受けた。分家の子供、ユイ・キサトを抹殺してくれと。私は依頼どおりに貴様、そして両親を殺した………はずだった。イレギュラーが交じったのだ。そのイレギュラー、エレイス・ステアーにお前は助けられ、生きている。前党首は現党首の遠野秋葉並の力を持つユイが、次期党首の座を奪うことを恐れたのだ。ユイ、お前は生まれてならない存在なのだ……」

「そんなことない、生まれていけない命はないっ」

「ふん、綺麗事だな、おまえこそ、自分の力が制御できない時は無差別に人を襲うくせに…」

一歩、また一歩と近づいてくる六道。

「ユイ、お前の運命はとっくに昔に死んでいて当然なのだ」

「何をっ……」

 六道は腰を低くし、腕から剣が飛び出してきた。

「ユイ、もし生きたいのなら私の仲間になれ。そうしたら永遠の命を与えてやるぞ…」

「なに?」

「我配下にこれば、貴様の命は助けてやるぞ………ククク…」

 薄汚い笑いを浮かべつ六道。
 しかしユイの答えは決まっていた。
 手から刃を出し、それを両手で構え、六道をにらみ付ける。
 そして自ら六道に接近し、切りかかった。

「うあぁぁぁああ!!」

 持てる力をすべて腕に集中し、振り落とすユイ。
 しかし六道も装備している剣でそれを受け止め、目線と目線がぶつかる。
 ユイは六道を剣で押し、再び切りかかる。
 だが私は、六道の身のこなしを見ていると、技量ではユイより六道の方が上だとなんとなく感じた。
 何度も刃と剣がぶつかり、激しい攻防戦になっていた。

「まだまだ技量は未熟だな、そんなもんでは私に勝てないぞっ」

「何を!! はぁ!」

 上から叩きつけるように切りつけ、鼻と鼻がぶつかるぎりぎりまで顔を近づける。

「ふん!!」

 六道はユイを力の限り剣圧で吹き飛ばす。
 背中からぶつかり、一瞬息が出来なくなる。
 私はすぐさま、ユイに駆け寄り体の状態を調べる。

「大丈夫よ、何処も怪我はしていないわ」

「エレイス、早く中へっ!こいつは厄介な相手だ」

「でもっ…」

「ふん、お前の弱点を見つけたぞ……ククク」

 六道はスッと影になり、その場から消える。
 そして影は、目にも留まらぬ速さで私に取り付く。

「エレイス!!」

「あぁぁ!」

 体をガクガクと震わし、ゆっくりと影が私の体の中へと入っていく。
そしてしばらくすると、意識が…………一瞬だけ………なくなり……………何かが変わった。

「エレイス? 大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ。とてもいい気分だわ」

 私はユイの顔に手を置き、優しく微笑む。
 彼がホッと安心すると、私は反対の手を彼の腹部へと当てた。
 そして………一気に体を刃で突き刺した。

「がはっ!! え、エレイ……ス!?」

「ゆ、ユイ様!」

「ふふ、こうしている時が一番いい気分ね…」

 更に力を込めてユイの腹を何度も突き刺すと、おびただしい量の出血が起きる。
 彼は私の腕を手刀で私の腕をなぎ払うと、よろよろとしながら私から離れ、刃を抜いた。
 何とか彼の体の中にある「不死の躰」の能力で傷をふさぐと、疑うような目で私を見る。

「お前、六道だな? ツバサ!! 屋敷に入って助けをっ!」

「何を言っているの? 私はエレイスよ」

「は、はい!」

 屋敷へと入って行くツバサ。
 ゆっくりと私を睨みつけ、痛みを堪えながら私に話しかける。

「エレイス……お前から感じる力は優しい力じゃない。邪悪な力しか感じないっ」

「ふ〜ん、じゃ、戦って私を確認する?」

 新しい刃を出し、ユイに刃先を向ける。
 ユイは口を噛み、つらい顔をするが、覚悟を決めたのか血の刃を出す。
 そして私はユイに切りかかった。
 ユイは私の刃を受け止めると、私の動きを冷静に見極め始めた。
 次々と刃を振って、ユイは屋敷から離れ、中庭へと私を誘い出す。
 そして、一度私の刃を受け止め、私を力任せに私を押し出し、距離をとった。
 刃を消し、私を見るユイ。
 その目は何処か悲しそうな目をしており、反対に何かを決意している眼をしている。

「まだこのエレイスを助ける気でいるな?」

「そうだ、絶対にエレイスの体からお前を出してやるっ」

「ふん、刃を消してか?」

 ゆっくりとユイに近づく私。
 ジッと私を見つめるユイ。

「自らの防技を無くすなんて……愚かね!!!」

 私は一気にユイに切りかかると、ユイも刃を出し、刃を弾く。
 そして左右上下と切りかかり、ユイは防御に専念をする。
 しかしそれがユイの弱点なのだ。
 彼は大切な人には絶対に攻撃をしない正確なのだ。
 だから、私が次々と攻め、ユイの疲労を溜めたところをつけば必ず倒れるはずだ。
 ユイは必死で防御に転じていると、動きに無駄が出てきた。
 私はユイにトドメを刺そうした。
 刃を高く振り上げ、ユイの頭上にめがけて振り下ろそうとした。
 だがその時、私の予想もしない動きをユイがしだした。
 ユイの目つきが変わり、防御から攻めに転じたのだ。
 高く振り上げた私の体は隙だらけだ。
 そこをユイは背中までに達するまで自らの刃を私に突き刺したのだ。

「がはっ!! な、なに……」

「僕が攻めだけだと思ったら間違いだ…戦いには非情な時もある……。六道、お前の欠点は相手を完全に知らないことだ…」

「くくく……昔のお前がここまで成長しているとはな……」

 ユイの頬には涙が流れている。
 いくら非情とはいえ、ユイにとって、最愛の人を自らの手で傷つけてしまったのだ。

「ふっ……これくらいでは死なんが……今回はこの「体」の力のせいでだいぶ体力が消耗したな…。命拾いしたな………」

 ふっと……私の体から抜け出す六道。
そして姿を消してしまった。

「忘れるなユイ、私はいつでもお前の命を狙っていることをな…」

 刃を抜き、傷口を抑えながら私をぎゅっと抱きしめる。
 そしてゆっくりと膝を付き、ゆっくりと私を寝かす。
 ユイは影が消えたほうへと走り出した。
 エレイスを傷つけた悲しみを心にしまいながら…
 しばらくし、七夜たちが来ると、私はそっと笑顔を見せる。

「大丈夫か?」

「だ、いじょうぶよ……ユイがこうしてくれなかったら危なかったかな?…」

「そうか……」

「私に任せてエレイス」

 瑞希さんはそっと私の傷口に手を乗せ、力を注ぎ始める。
 私と瑞希さんの力のおかげで、すぐに傷がふさがり、体に残った六道の影も消える。

「ありがとう、瑞希さん」

「ううん、気にしないで。あれ? ユイ君は」

 周りを見渡すとユイの姿が見えなかった。
 私はゆっくりと立ち上がり、ユイを探し始める。

「待て、その体で動くな」

「でもユイを探さないと……」

「俺が探す、瑞希、エレイスを頼む」

「分かった、任せて七夜」

 私を置いて、七夜はユイを探し始めた。
 その頃、ユイは遠野家の門を抜け、坂を降りきっていた。
完全に六道を逃したのだ。
塀にもたれ、ユイは膝を付いて泣いていた。
 そう、私を傷つけた事と………ユイの両親の真相を知った事………。

「父さん……母さん………」

 彼を大事に育ててくれた両親……。
 ユイはスッと立ち上がり、当てもなく歩き始めた。
 日も完全に落ち、寒さを増した頃になるとユイは公園にいた。
ベンチに座り、がっくりとうなだれると組んだ手の中に埋める。

「何をやっている?」

「っ!?」

 顔を上げるとそこには七夜が居た。
 手には袋が握られている。

「ほらっ、これを食え」

 渡された袋の中には肉まんが入っていた。
 しかしユイは食べる気になれなかった。

「殺された父親と母親、そしてエレイスのことを考えていたのか?」

 ユイは俯き、小さく頷いた。
 七夜は彼の隣に座り、夜空を見上げた。

「アイツがお前の両親を殺したんだな……エレイスから心の中で聞いた」

「僕は……アイツが憎いよ……でも………それ以上にエレイスを傷つけてしまったのがつらい」

「お前、本気でそう思っているのか?なら、お前は大きな間違いを犯している。エレイスは助けてくれて感謝している」

「えっ?」

「アイツをエレイスの体から開放させる為にはお前が予想外の行動をしないといけない、それはお前がわざとエレイスを傷つけることなんだ。だからそれでエレイスはお前を攻めてはいない」

「そうか……でも………大事な人をあんな形といい傷つけたのが……ショックで…」

「気持ちは分からなくも無い、だが、あの手段しかなかったんだからお前は立派な事をしたんだ。いいか、あの六道とかいうやつには手段は通じないんだ。なら徹底的に攻撃するしかないんだ」

「うん………」

「ほら、お前を心配して……来たぞ」

 ユイは顔を上げ、七夜が指差す方を見る。

「ユイ…」

「え、エレイス……」

 ユイはバッと立ち上がり、私のほうへと近寄ってきてくれた。
 そして突然私を抱き上げ、ギュッときつく抱きしめた。

「ごめんねエレイス……」

「大丈夫だよ、アイツにはあの手段しかなかったんだもん。だからユイは正しい事をしたんだよ」

 そっと優しく抱きかえし、背中を摩る。
 それを見ていた七夜、瑞希さん、ツバサちゃんは安心した顔になった。

「元気になりましたかね?」

「あいつの事だ、心配ない。俺達は先に戻っていよう瑞希、ツバサ」

「そうだね」

「分かりました」

 瑞希さん、ツバサちゃんと七夜はそっとその場から消え、屋敷へと帰っていった。
 ゆっくりとユイと離れると、彼の頬を撫でてあげる。

「ユイ、もう大丈夫?」

「うん……あっ、これ……」

 ユイはふとさっき七夜から貰った肉まんを出す。
ちょっと覚めてしまっているが、まだ大丈夫みたい。

「一緒に食べよっか?」

「うん」

 私達はベンチに座り、少し覚めた肉まんを半分にして食べ、さっきの闘いを少しずつ忘れようとした。
 でもユイは忘れる事が出来ないだろう。
 なぜなら彼の両親を手にかけた男がいたのだから………。





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