32/VSメカ翡翠&まじかるアンバー
21day/November.10(Sun.)
シャーロック&ルイ作
私は目を覚ます。
あまりの寒さで起きてしまったのだ。
今夜は一段と冷え込んでいる。
「ん〜にゃ〜さ〜む〜い〜にゃ〜…」
私は布団の中に潜り寒さから逃げようとする。
するとユイの顔が目の前にあった。
彼も寒さから逃げるために布団の中に潜っていた。
やっぱりやることは同じなんだなぁ〜。
その頃、秋葉の部屋で一緒に寝ていたフェーダー。
この所、夜になると胸の息苦しさを感じていた。
その為、浅くしか寝られず、その度に秋葉に気づかれないように外へと出ていた。
今日もまた息苦しくなり、異様な喉の渇きを覚えていた。
「胸が苦しい……いったい何なんだ……」
フェーダーはその場に座り込み、星空を見る。
今夜も満天の星空でとても綺麗だ。
オリオン、大犬、子犬、カシオペアなど様々な星座が見える。
「綺麗だな……」
胸の息苦しさが収まると、深呼吸し、再び部屋の中に入った。
部屋の中に入ると。
そっと窓を閉めると、秋葉が体を起こしてフェーダーを見ていた。
「どうしたのですかフェーダー?」
「なんでもない、ただ外の空気を吸いたかっただけだ…気にするな……」
「そうですか? ここしばらく貴方の様子がおかしいと思っていますが…」
「なんでもない、大丈夫だ」
「そうですか……今日は冷えます。暖かくして寝ましょう」
「ああ…」
フェーダーは秋葉の隣に入り、眼を閉じた。
しかし秋葉は気づいていた。
フェーダーから「血」のにおいがすることを……。
朝日が昇り、私は体に鞭を撃って体を起こした。
部屋が冷え込み、寒さが体の髄までしみ込む。
私は布団から出て服に着替えると、廊下へ出る。
するとそこには瑞希さんがいた。
「おはようございます瑞希さん」
「あっ、おはようエレイス。今日は一段と冷えるね」
「はい、そうですね…」
私達は居間へ向かい、琥珀さんの暖かい緑茶を貰うことにした。
ホントに琥珀さんは何でも美味しく造れるな。
しばらくすると、寝ぼけた顔のユイが居間へ入ってきた。
目を擦りながら今に入ってきたユイは、秋葉の目にとまった。
あっ、まず…またお説教のが始まる……。
「ユイさん、挨拶するときは顔を洗い、目をちゃんと覚ましてから挨拶してください。失礼ですよ」
「ゴメン秋葉、ちょっと眠れなかったもんで寝不足で………」
「ではなおさらです……」
「秋葉様、朝一番からはお体にも悪いですよ。紅茶を飲んで心を癒してください」
ナイス琥珀さん。
いいときに琥珀さんがフォローをしてくれてユイも難を逃れることが出来た。
朝食が出来ると私達は揃って朝食をとった。
しばらくすると、フェーダー、青子さんと志貴も居間へ入り、朝食をとり始めた。
サイレントもお茶を運んだりして楽しそうに琥珀さんの仕事を手伝っている。
やはり皆で食事をするというのは楽しいな。
ふと私は翡翠の方を見た。
今日の翡翠はどこかおかしかった。
ずっと琥珀さんの方を見ているのだ。
琥珀さんが目を合わせると、翡翠は目をそむけてしまう。
何かあったのかな?
後で聞いてみるかな?
朝食が終わり、部屋に戻ってユイと一緒にのんびりしていると、誰かがドアをノックした。
私はは〜いと呼び、ドアを開けると翡翠が立っていた。
ちょうどいい、さっきのことを聞いてみるかな?
「少しお時間をよろしいでしょうか?」
「うん、良いよ。どうしたの?」
「はい、実はお二方にお話することがありまして」
「何? 話すこととは?」
私は部屋の中に招きいれ、翡翠の話を聞いてみる。
翡翠は一礼して話始めた。
「実はこのお部屋にはいくつ物監視カメラが設置しています」
「「はい?」」
翡翠の話に寄れば、琥珀さんが悪戯兼趣味の為に面白半分に盗聴器、小型のCCDカメラを部屋の五箇所に設置し、それで楽しんでいるのだという。
始めは信じられなかった私達だったが、翡翠が嘘を言うような人ではないことは以前から知っている。
だからこの話も嘘ではないとすぐに思った。
しかし琥珀さんがそんなことをしているとは許せない。
私達は翡翠に頼んで、何とかならないか頼んでみた。
「難しいです。しかし私がまず姉さんの部屋へ行って見ます。そしてそこで部屋を見て後で紙に書いてお渡しします」
「良いのか翡翠? 少しばかし危険だが…」
「大丈夫です、15分しても戻らなければ姉さんの部屋へ来てください。よろしいですか?」
「しかし何でそこまでするの? 別に翡翠がすること無いじゃない」
「私は姉さんの行き過ぎている行動でお二方に支障をきたすような風にはなって欲しくないからです」
「…分かったわ、気をつけてね」
「無茶はしないでな翡翠」
「分かりましたエレイス様、ユイ様。では後ほど」
翡翠は一礼すると、部屋を出て行った。
ドアを閉め、一度深呼吸すると、琥珀の部屋に向った。
琥珀の部屋の扉の前に付くと、 まだ琥珀が中にいるのかを確認するために二、三回扉をノックする。
しかし部屋からは反応がなく、誰もいなかった。
翡翠はゆっくりと扉を開け、中に入ると、あたりを確認する。
そしてそっと扉を閉め、監視カメラの映像が映っているモニターを探し始める。
しかしそれが見つからず、今度はそれがあるスイッチを探し始める。
ベッドの下、机の下、壁にかけられている絵の後ろなど丹念に調べていく。
しかし背後から何かが近付いている事に翡翠は気づいていなかった。
その気配に気づき、振り向いた瞬間、足元に何かが絡まり、天井高く上げられてしまった。
「きゃあ!」
「な〜にをしていたのかな翡翠ちゃん」
そこには琥珀がいた。
そして足元に絡みついているのは植物の触手だった。
「ね、姉さん……」
「ははぁ。さてはここの監視カメラのスイッチを探していたのかな?」
「っ………」
「探してどうするつもりだったのかな?」
「まあ〜目的はわかっているんだけどねぇ〜。さて、困った妹には罰を加えなきゃいけないわね」
琥珀さんは懐からいつものように注射器を出す。
しかし今回はそれだけではなかった。
足元に絡み付いている触手がどんどんとのびて、つけねにを目指しているのだ。
「ね、姉さん!!」
「今回ばかりは許しませんよ〜、おいたしたんですからね〜〜」
部屋で待つこと10分、私達はジッとベッドに座り、待っていた。
しかし20分経っても翡翠からは何の連絡は無かった。
「ねえユイ、ちょっと遅すぎないかな?」
「やっぱり?」
「琥珀さんの部屋に行ってみた方が良いよね?」
「元からそのつもりだよ、行ってみよう」
部屋を抜け、階段の隣にある琥珀さんの部屋に向う私達。
ノックする寸前、中から翡翠の悲鳴が聞こえた。
ユイはドアに手をかけたが、ロックされており、ドアが開かない。
「このっ!」
ユイは懇親の力をこめ、ドアにタックルするとドアが開いた。
すると部屋の中では、植物の触手が足のつけねを刺激し、その快楽に負けじと我慢している翡翠がいた。
「ひ、翡翠!!」
「こ、琥珀さん、これはいったい……」
「ユイさん、エレイスさん、翡翠ちゃん、この部屋で悪戯をしていたからお仕置きをしているんですよぉ」
「ひ、翡翠は何も悪くない。離すんだ琥珀さん!」
琥珀さんは動じようとしない。
その代わり、翡翠に対して更に攻めた。
ユイは翡翠に寄ろうとしたが、琥珀がユイに向けて注射器を向けた。
「あまり手荒なことはしたくありませんが、動くとこの注射器がユイさんにはいりますよぉ〜」
「っ!」
注意がユイに向けられている隙に私は翡翠に付いている触手を血の刃で断ち切った。
あっ、っと言い、視線を私に向ける琥珀さん。
その隙にユイは翡翠をキャッチし、ドアに後退した。
「さあ、形勢逆転、降参して琥珀さん」
「ふふふ、そうはいきませんよぉ〜」
琥珀さんはどこからか箒を取り出すと、バッと窓から飛び出し、その箒に乗って地面に着地した。
「っ! 追うよエレイス!」
「うん、翡翠さん、ちょっと待っていてね」
私はユイに捕まると、ユイは血の鞭を出し、固定しているベッドの足に巻きつけると、そのまま窓から飛び降りた。
バンジーと同じく血の鞭が反動をつけて戻り始める瞬間に鞭を消し、私達は地面に着地した。
「やりますね〜、でもまだまだこれからですよぉ」
そういうと、聞きなれた機会音が聞こえてきた。
そう、メカ翡翠だ。
えさを探していた鳩達がワッと飛び立つ。
「ユイサマ、エレイスサマ」
私達は琥珀、そしてメカ翡翠に向って刃を出し、構える。
しかしそれだけでは無かった。
「ユイサマ、エレイスサマ」
別の方から新たなメカ翡翠が現れたのだ。
一体ではなかった。
私達を囲むように二体、三対と現れ、私達を囲んだ時には琥珀さんを合わせ、一人+六体だった。
私達をここをのなかで驚くが、すぐに平静を保つ。
「さて、これだけの人を相手できますか?」
ジャキっと腕を構えるメカ翡翠たち。
「やれるさ!!」
「ええ!」
私達は同時に攻撃を仕掛けた。
ユイは刃を回転させ、メカ翡翠たちを仰け反らせると、その隙を突いて一体を踏み台にし、高く跳躍した。
「エレイス! 三対の相手を! 僕は琥珀さんと残りのメカ翡翠を!」
「分かったわ!!」
私は一体を足払いすると、刃でもう一体のメカ翡翠に向けて突き刺そうとしたが、ライトセーバーで塞がれてしまった。
一度後退し、深呼吸しメカ翡翠を睨む。
メカ翡翠は全部が同じ行動をするかと思い気や違っていた。
一体は普通に形にライトセーバーをもっているだけだが、もう一体は両手にライトセーバー、最後の一体はライトセーバーをつなげダブルライトセーバーにしている。
私も左手にもう一本血の刃を出し、こちらも二刀流で戦うことにした。
しかし………………
ユイは一体ずつ相手をし、少しずつ琥珀さんに近付いていた。
メカ翡翠は中距離攻撃を中心に展開し、ミサイル、レーザーなどを駆使してユイに攻撃している。
幸い、ミサイルは誘導弾ではなく通常のミサイルだったために、ユイは次々とミサイルを避けていく。
「アップグレードしたな」
「ご名答ですユイさん、何時までも同じタイプにしていてはよくないですからねぇ」
ユイはミサイルやレーザーを中心に撃っているメカ翡翠に近付く。
そして一瞬で背後に回り、動力部を狙って刃を突き刺した。
メカ翡翠はたちまち煙を上げ、機動停止した。
残りは二体。
ユイは今倒したメカ翡翠を盾にし、残りの二体のメカ翡翠に近付いてゆく。
形成はユイに傾くかと思った。
しかし屋敷の方を振り向くと、扉が開き、そこに新たなメカ翡翠が何体かいた。
そして次の瞬間、森の方からも別のメカ翡翠が現れ、ドッとユイに向ってきた。
「エレイス! 大丈夫か……エレイス?」
「残念でした〜、エレイスさんはメカ翡翠ちゃんの放電を浴びて気絶してしまいましたぁ。もし返して欲しければ今いるメカ翡翠ちゃんを倒してくださいね〜」
なるほど、人質か…
ユイは心の中でつぶやくと刃のグリップを握りなおす。
一呼吸するとメカ翡翠が飛び掛ってきた。
「はぁ!!」
ユイは真上に跳躍すると、刃をプロペラ代わりにし体を回転させながらメカ翡翠に向って切り付ける。
そして一体ずつ刃で斬り付けてゆくが一向に数が減らない。
あるメカ翡翠はライトセーバーでユイの体を傷つけようとしたり、別のものはユイを捕まえて動きを塞ごうとするものもいる。
ユイは二つの刃を一本の棒にし、メカ翡翠の足に向って回転しながら足払いをする。
そして飛びつこうとするメカ翡翠をバットのごとく撃ち、一歩一歩琥珀に近付いてゆく。
「やりますね〜、しかしまだまだですよぉ」
「っ!」
琥珀は指を鳴らすと、わらわらとメカ翡翠が出現した。
数にしておよそ50。
ドアや窓から次々と出現する。
しかしユイはそれを無視し、再び一体ずつ破壊してゆく。
自分の持てる体術、剣術などをフルに使い、一気に攻める。
そしてついに琥珀から10mの距離に近付いた。
「ここからは私の出番ですね」
琥珀さんは箒から剣を抜くと、刃先をユイに向けた。
「であぁぁぁぁ!!」
ユイは刀をなぎ払うように琥珀さんに接近し、琥珀さんの腹に拳を食らわそうとした。
しかし琥珀さんは空いている左手でそれをなぎ払うと、刃を中に飛ばし、どこからか注射器を取り出してユイにそれを刺そうとした。
「注射は嫌いですよ!!」
刃を逆さにし、注射をなぎ払うと、琥珀の膝に向けて刃を振ろうとした。
「甘いですよぉ〜だ……ぎゃ!」
その時、コイン!っと音が鳴り、琥珀さんが勢いよく地面に倒れた。
ユイが振り向くとそこには、フライパンを持った翡翠がいたのだ。
「翡翠っ!」
「私も参戦しますユイ様、エレイス様は安全な場所に避難させました」
「助かったよ翡翠」
「いたたたた、翡翠ちゃんずるいですよぉ」
「ユイ様、姉さんを誘導してください。その隙に私が背後から…」
「分かった」
刃を構え、一気に攻め込むユイ。
翡翠も一気に背後に回り込もうとする。
「もう〜ここまでしたら十分ですねぇ〜、参りました」
あっけなく箒を地面に落とし、降伏した琥珀。
最初の数秒間、ユイはその場に止まり、ポカーンとあっけらかんとした。
「何をポカーンとした顔をしているのですか? 私の負けですよぉ。ただ私はこの新しいメカ翡翠ちゃんの能力を測っただけです」
琥珀自身もここまで大事になるとは思わず、試しに量産型のメカ翡翠を出撃させ、能力を測っていたのだ。
ユイはこれを聞いて、突っ込むどころかその場にへタレ込んでしまった。
「さぁ〜て、楽しませてもらいましたよ〜。それでは〜〜♪」
翡翠さんはルンとご機嫌で屋敷に戻っていく。
「大丈夫ですかルイ様?」
「僕は大丈夫だけどエレイスは………」
「気絶しているだけですからしばらくすれば目を覚ましますよ」
「良かった…」
ユイはゆっくりと立ち上がり、パッパっと誇りを払うと翡翠とともに私がいる離れに向った。
中に入ると、ユイはゆっくりと頭を抱き、私をじっと見た。
「何とも無くて良かった。翡翠、もう戻っていいよ」
「分かりました、失礼します」
私達が戦っている中、それを観察していた人がいた。
蒼崎青子先生だ。
先生は特にユイの戦い振りを見て感心をしていた。
そしてもう一人、それを見ている人がいた。
フェーダーだ。
しかし…………胸を抑え、息を切らしながらと様子がおかしかった……………、そう、これはこの後起こる惨劇の前兆だった。
そう、悲しい惨劇の………………………。