31/怪盗七夜
21day/November.10(Sun.)
シャーロック&ルイ作


 あれから私達は屋敷へ戻り、夕食を取り、部屋でのんびりとしていた。
また私達が好きな「輪廻○果てに」や「This i○○usion」などの音楽を聴いている。
 ふと急になぜか知らないが、眠気に襲われてきた。

「ぅ…ぅう…ん」

「どうしたのエレイス? 眠たくなってきたの?」

「うん、ちょっと寝かしてもらうね」

「うん、いいよ。ゆっくりしなよエレイス」

「うん、じゃ、おやすみ」

 私は布団の中にに潜り、ゆっくりと寝始める。
 ユイが私の隣に来て、そっとポンポンと肩を叩き、安らぎを与えてくれる。
 と、そこへ七夜が部屋の中に入ってきた。

「ん? エレイスはもう寝たのか?」

「うん、疲れたみたいで…。で、エレイスに用があったの?」

「ああ…しかしお前もつくづくと運がない奴だな。まさか体が小さくなるとは思わなかっただろう?」

「うん、これにはほんとにビックリしたよ」

「だろうな、しかし変わった格好をしているな」

「そうかな? エレイスと出来る限りおそろいにしてみたけど……」

「アニメでな……しかし……」

 七夜はそっと寝ている私を見た。
すると、そっと笑みを浮かべ始めた。

「悪くないな…」

「ねえ七夜、少し頼み事していいかな?」

「何だ?」

「その…七夜のこと、兄さんって言っていいかな? ほら、僕って一人っ子だから…」

 そう、彼は一人っ子、更に今は家族がいない。
幾度の戦いによって、七夜とユイは強い絆で結ばれ、今では七夜はよくユイのアドバイザーとなっている。
 その為か、七夜がユイにとってはお兄さんのような存在に見えるのだ。

「おかしな格好をした弟を持つ気は無いが…」

「だって……今までが今までだもんで何だか七夜がお兄さん的存在に見えるというか……」

 これには七夜も驚いたようだ。
しかしすぐに普段どおりの鋭い目に戻る。

「ねっ、七夜兄さん」

「勝手に言ってろ」

 七夜は呆れたようにユイの頭を軽く叩いた。
 それを見た私は起きることにした。

「ふふっ、そうしているとほんとに兄弟にみたいだよ」

 そう、私は起きていたのだ。
七夜が部屋に入ってきた当たりで目が覚めてしまったのだ。
 でも七夜とユイの話すことが気になり、そのまま寝たふりした。

「でも少し無愛想だよ七夜」

「言う事欠いといてそれか、お前は」

「まあまあ七夜兄さん、お願い、今だけ言わして」

 ユイは手を合わせ、七夜にお願いする。
 すると七夜は諦めたように息を吐いた。

「小さくなっているときだけだぞ…それ以外は許さん」

「ありがとう〜七夜兄さん♪」

 ユイは満面の笑みを浮かべ、七夜を見た。
 あっ、そうだ!

「ねえ七夜、少し私も頼みごとしていい?」

「お前もか? いいだろう聞いてやる」

「あのねぇ〜、ちょ〜っと七夜に如何しても着て欲しいものがあるのっ」

 目をキラキラさせ私は七夜にお願いをする。
それを見た七夜は少し引くが、すぐに平静になる。

「着て欲しいもの?」

「うん、おねが〜い七夜」

「七夜兄さん、僕の事聞いてくれたんだからエレイスのことも聞いてあげて」

 七夜はため息をつくと、分かったと言った。
早速私は、七夜の手を引っ張り、部屋の外へと連れ出した。
 ユイも私達に付いて来る。
私達は琥珀さんの部屋に来ると、ドアをトントンとノックした。

「は〜い、どうぞ〜」

「失礼しまーす」

「あら、どうしたんですかエレイスさん?」

「また衣装を貸してくれますか?」

「はまったみたいですね〜? で、お次は誰の衣装をするのですか?」

「今回は私じゃないの、この人で〜す♪」

 私はバッと七夜を見た。
さすがに七夜も頭に?がつくような顔をしている。

「七夜さんですか。それで、何の衣装ですか?」

「うん、私、ずっと七夜は和服が似合うと思っていて、いい機会だから試してみようということで……え〜っと、衣装は……あった、これだぁ!」

 バッとある衣装を取り出すと、それは新撰組の衣装だった。
ちゃんと小道具も揃っている。
うん、これなら文句なしだ。

「ねっ、お願い七夜。これ着てくれない?」

「仕方ない、今回だけだぞ」

 フンとため息を吐きながらも、新撰組の衣装を受け取り、部屋の隅で着替えを始める。
私は琥珀さんのベッドに座り、ワクワクしながら待っていた。
 五分が経ち、七夜が部屋の角から出てきた。
その格好を見て私達一同はおぉ〜っと声を出して驚いた。
似合いすぎているのだ。
それも文句が無いくらいさまになっている。

「これでいいのかエレイス?」

「うん、文句なし! 私の目に狂いは無かったっ!」

 グッと親指を立て、七夜に突き出す。

「うん、僕も文句ないよ。凄く似合ってる」

「そうですね〜、なんていうかこの世界にタイムスリップしたような感じもしますね〜」

 琥珀さんとユイの言うとおりだ。
ずっとこの格好でいて欲しいくらいだ。
 気がつくと私はジッと七夜を見つめていた。

「エレイス、もういいか?」

「あっ、もう少しだけ…」


「仕方ないな……」

「あの…七夜…」

 ユイがおずおずと手を上げると、七夜はユイを見る。

「僕ももう一つだけ頼みごとしていいかな?」

「……なんだ?」

「僕も着て欲しい物があるんだ……名探偵コナンの怪盗キッド…なんだけど……」

「おぉ〜、そうきたかユイ〜」

 私はその案はすぐに賛成した。
あの七夜が怪盗になるのだ。
 七夜は頭をポリポリとかき、ユイを見ながら承諾した。

「では、これをどうぞ」

 琥珀さんは七夜に怪盗キッドの衣装を渡すと、再び部屋の角に移動し着替え始める。
今度はユイもワクワクしている。
 そういえば私達も工藤新一と灰原の元の姿の宮野志保の服を着ている。
ちょうどコナンの世界になっている。
 しばらくすると部屋の角から、シルクハットにマントを羽織った怪盗キッドならぬ怪盗七夜に変身した。

「おぉ!」

 私は興奮した。
めちゃくちゃ似合っているのだ。
当然お願いしたユイも凄く興奮している。

「ねえねえ七夜兄さん、何かキザな台詞を言ってよ」

「なに?」

「だぁ〜って、今は怪盗なんだし、ちょうど月が出ているし………絶好の日よりだよ」

「しかし何を言えばいいんだ? 分かるかエレイス?」

「私に聞かれても……」

「ユイさんユイさん、貴方は何か思いつきますか?」

「僕ですか琥珀さん? う〜ん……」

 顎に手を当て、深く考え始めるユイ。
こうして見てみると本物の工藤新一に見えてしまう。

「『今宵は三日月、美しい貴方のお持ちになっているその宝石をいただきに参上しました。どうか私にその宝石をお譲りいただけないでしょうかお嬢様?』かな?」

「うわっキザ…」

 私は七夜を見ると、フッとため息をついていた。
まさか……

「仕方ないな……」

 やっぱり………

「ホントにいう気なの? 歯の浮くような台詞を……」

「やむ終えんからな……」

 七夜は一方白に下がり、窓の外に見えている月をバックにマントのつばを持ち、ナイト風の挨拶の格好をし始めた。

「今宵は三日月、美しい貴方のお持ちになっているその宝石をいただきに参上しました。どうか私にその宝石をお譲りいただけないでしょうかお嬢様?」







 ズキューーーーーーン!!








「………」

 堕ちた……文句なしに……

「乗ってますねぇ〜」

「確かに……七夜、めちゃくちゃあってるし。ねっ、エレイス………エレイス?」

 ユイが私の方を見る。

「お〜いエレイス?」

 ユイは私の肩を掴み、軽くゆすった。

「私……今だけ盗られてもいいかも………」

「エレイスぅ!!」

「ホントに盗ってやろうか?」

 いつのまにか七夜は私の背後に立ち、私を抱きかかえた。

「本人からの承諾もあるからな」

「そ、そんな事させるわけにはいかないだろぉ!」

 ユイは七夜に寄ろうとすると、七夜は懐から劇中で怪盗キッドが使用しているカードガンを出し、ユイの足元に一枚のスペードのエースカードが刺さった。
それを見てユイは立ち止まる。

「さて小さな探偵君、もしこのお姫様を助けたければ、力ずくでも奪って見せることだな」

 そう言って七夜は窓から外へと飛び出した。
まるで本物の怪盗キッドごとく・・・。
 華麗に着地し、ユイのいる部屋を見るとニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

「このっ!」

 ユイは何を考えたのかバッと部屋の窓から飛び降りた。
そして血の鞭を出し、近くの木の枝に鞭を巻き付け、振り子の用にブラ〜ッと揺れ、血の刃を消して地面に着地をした。
 そして七夜に向かって再び走り出した。
 七夜はカードガンを再びユイに向けると連続してトリガーを弾いた。
それをユイはしなやかなステップで次々と除け、だんだんと七夜に近づいてゆく。
 しかしあと一歩で七夜に近づく寸前、七夜は持ち前の跳躍力で空高く跳躍すると、壁を蹴って屋敷の屋上へと上がった。

「探偵君、ここまで来れたらこのお姫さまは探偵君に変えそう」

「本当だな七夜兄さん・・・・・・いや、怪盗七夜・・・・・・」

「約束しよう探偵君」

 風にマントがゆられ、さらに不敵な笑みを浮かべる七夜・・・・・・・・・かっこいい・・・・・・。



 今や探偵となっているユイは屋根上を目指すべく走り出した。
しかしそれをこっそり見ていた人物がいた。

「ふふふ、楽しそうですねぇ〜。更に盛り上げてあげましょう〜♪」

 そう、この遠野家の小悪魔、琥珀さんが・・・。
 琥珀さんは襖を開けると、そこから幾つもののモニターがついた監視装置とそれに繋がれたパソコンが出てきた。

「ふふふ、では、まずこれからいきましょうかね〜」

 琥珀さんはあるボタンを押した。
すると、壁から防犯用のゴムスラッグ弾を装てんした銃が現れた。

「な、なんだぁ?」

 銃口からゴムスラッグ弾が発射されるとユイの胸を掠めた。

「あ、危ないじゃかぁ!」

 ユイはステップを踏みながら一つ一つかわしていく。
しかしそれだけで終わるはずは無かった。
 今度はユイの足下がバカンッと開いたのだ。

「うわぁ!!」

 ユイは落ちそうになったが、寸前で血の鞭を使って、鞭の先を刃にして壁に刺し、落下を防ぐとそのまま鞭を昇り始めた。
 何とか登りきるとフゥ〜ッと安堵の息を吐くユイ。

「あらあら、なかなかやりますねぇ〜。しかしここからですよ」

 琥珀さんは更にいくつかのボタンを叩く。
すると、ユイの進行方向からガトリングガンが出現した。
 そう、これも琥珀さん特製の対志貴用平平気なのだ。
 琥珀さんの手元にトリガーとターゲットアイコンがついたモニターが現れ、トリガーを握り、モニターに目を合せる琥珀さん。

「逝きますよユイさん、ほんとは志貴さんようでしたが致し方がありません。それっ♪」

 トリガーを引くと、銃先が回転し、無数のゴムスラッグ弾が発射される。

「うわわ! それありかぁ!!」

 琥珀さんはユイに標準を合せながら撃ちまくる。
 ユイは血の刃を両手に出すとそれをつなげ、自分の背よりも長い長刀を作り上げる。
そして、それを回転させ、ゴムスラッグ弾を次々と弾き飛ばし、怪盗七夜のいる屋根上へと足を進めた。



 その頃、七夜は月を見ていた。
マントが風になびき、七夜をいっそう優雅に見せたてる。

「七夜、どうしてこんなことするの? 別にここまでしなくたって…」

「俺自身の楽しみとでも言うのかな? ただ単にあいつをからかっているだけだ…もちろんここにくればお前はユイの元に返すつもりだ」

「…自分自身の楽しみ………」

 そういえば七夜がこうして楽しむのなんて初めてじゃないだろうか?
 そう考えているとき、とうとうユイが屋上へとたどり着いた。
何だか全身ボロボロになっている。

「やっと来たか探偵君」

「返してもらうよエレイスを」

「ああ、約束だからな。しかしボロボロになっているな? さては琥珀がまた一枚噛んでいるか?」

「ちょっといろいろとあってね」

「では、目的は果たしたし、ここで失礼する」

 七夜はマントを翻すと、スッと姿を消した。
あたかも本物のマジシャンみたいに…。
 私はユイのもとへ寄った。
彼は所々に打ち身の跡があった。

「大丈夫ユイ?」

「このくらい平気さ。さっ、部屋に戻ろう。ここだと冷えちゃうしね」

「うん」

 私達は部屋に戻ると、服を脱ぎ、疲れのせいかすぐに寝てしまった。
 でも……怪盗七夜、かっこよかったかも………。



 その頃、琥珀さんは………

「あ〜、ユイさん、見事にトラップをかわしてしまいましたか〜」

 そう、ユイはゴムスラッグ弾を刃で弾き飛ばし、それでも体に数発当たり、苦痛に顔を歪ませながらも足を進めたのだ。
そしてガトリング砲にたどり着くと、それを真っ二つに切り、やっとのことで屋根上にたどり着いたのだ。
 この後、琥珀さんは翡翠と共に掃除をしたとか何とか………。

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