29/Invoke
19day/November 8(Fry.)
シャーロック&ルイ作
夕方になっても私は寝ていた。
しかしじっくり寝れなかった・・・。
そう、その夢を見て起きるが、今見た夢が思い出せない。
それを忘れようともう一度寝ても、また見てしまうだ。
私は額に手を当て肩で息をする。
そこにユイが部屋の中に入ってきた。
「ステアー?大丈夫か?」
「ええ・・・なんとか・・・・・・」
汗をひどくかき、尋常じゃないとユイは思った。
ユイは私の手を握る。
「ステアー、大丈夫・・・・・・一緒にいるからね」
「ありがとう・・・・・・」
ユイはゆっくりと私を寝かす。
「何があったの?」
「・・・・・・分からない、夢は見ているんだけど・・・・・・・・・思い出せない・・・。思い出すと……すごく怖い…。でも、14、夜、赤に関連があると思うの…………」
「・・・ステアー」
「ごめん、少しだけ一人にしてくれないかな」
「分かった……」
ユイは部屋を出ると深くため息を吐き、居間へと向かおうとした。
しかし階段の前で立ち止まり、ふと考えた。
14、夜、赤という言葉に何か引っかかったのだ。
ユイはそのままもと来た道を戻り、秋葉の部屋へと向かう。
ドアをノックすると秋葉が顔を出した。
「何でしょう?」
「すいません、槙久お父様のお部屋の鍵はありますか?」
「何故そんな物が必要なんですか?」
「ステアーが……何かの夢にうなされて苦しんでいるんだ。どうも僕に関することで苦しんでいる。だから槙久お父様の部屋に行けば何かあるんじゃないかと…」
秋葉は顎に手を沿え、考えると再び結いの顔を見る。
「お父様の所にあるにはあるでしょうが、しかし…個人の者があるかどうか……。それに、夢で見るならエレイスに聞けばいいじゃないんですか?」
「残念ながらそれが覚えていないんですよ。ただ14、夜、赤に関係があると」
赤という言葉で秋葉は何かに反応したように眉をピクっと動かした。
秋葉はユイを中にいれ、ソファーに座らせると話の続きを始めた。
「先ほど赤と言いましたね?こちらから質問なんですが、ユイさんはエレイスの力によって回復したんですよね?その力を受けた時、何か拒絶反応というか…力の『反発』は無かったんですか?」
「『反発』ですか? さあ〜、その辺のことはなんとも………」
「そうですか……すいません、余計なことを聞いて」
秋葉はソファーから立ち上がると、自分の机に向かい、引き出しから鍵を取り出した。
それをユイに渡すと優しく微笑んだ。
「これがお父様の部屋の鍵です。もしかしたら何かわかるかも知れません」
「ありがとう秋葉」
ユイは部屋を飛び出し、槙久の部屋へと向かう。
その後姿を秋葉は見送った。
ユイは槙久の部屋につき、鍵を開けると遠野の血に関することが無いか探し始めた。
引き出し、本棚すべてを探す。
しかし一向に有力な手がかりはつかめない。
「探し物か?」
ユイの真後ろに七夜が現れ、ユイに問いただした。
「ああ、ステアーが14、夜、赤というキーワードを教えてくれた。僕のことに関することだから今探している」
七夜はキーワードを聞くが、ハァとため息をついて答えた。
「あいつの夢に見るなら、いつぞやの時のようにお前もあいつの夢に入ったらどうだ?」
それを聞いて、ユイの手が止まり、七夜を見つめた。
「まったく、戻るならさっさと戻ってやれ。見るに絶えれん顔をしてお前の名を呼んでいたぞ」
「ありがとう七夜!感謝するっ!!」
ユイは槙久の部屋を飛び出し、自室へと走った。
ユイが部屋に戻ってくると突然、自分も夢の中に行くと言い出した。
七夜からヒントを得たことを言い、苦しんでいるなら僕はそれを和らげるとも言ってくれた。
「・・・・・・ありがとう、でも……」
「反対なんだろう?でも今まで僕のせいでつらい目にあってばかりだ。だから今度は僕がそれを知らなければ」
ユイはゆっくりと私を抱く。
本当に嬉しかった。
私は首を縦に降り、承諾する。
「じゃあ、行こうか」
「うん・・・・・・」
手を握りながら私は目を閉じ、眠り始める。
ユイは私の隣に座り、同じく眠り始めた・・・・・・
気がつくと私達はある家にいた。
見覚えある家の匂い、壁・・・・・・私の実家だった。
「私の実家だ・・・・・・」
「本当だ、君の家だ」
ふと、背後に人の気配を感じ、振り返る。
するとそこには私のお母さんがいた。
そして・・・・・・私も。
年齢は・・・・・・・・・14歳の時だろうか?
「ステアーだね、中学生の時みたいだね」
「うん、何か話しているみたい。少し近寄って見よう」
少し近寄って、14歳の私とお母さんの話しを聞き始める。
「今回は良く頑張りましたね。貴方のおかげで彼も助かったわ・・・」
「いえ、当たり前の事をしたまでです。ユイはもっと辛かったと思うから・・・それに比べればまだまだですよ」
「しかし、これで完全に彼の血が発現しない訳ではありません」
「はい・・・分かっています。そうならないよう常時私が力を送るんですよね?」
「そうです。でもまだ、彼の中で貴方の力は定着していない。今はまだ彼の中に入っただけです」
「ユイの中で私の力が定着するのはあと一ヶ月・・・。その間、ユイの中では私の力に対して『反発』をする」
「反発に生まれる力はとても強い・・・彼の力が定着するまでの数ヶ月、その力に苦しむことになる。それはもちろん力を与えた貴方にもあるでしょう。直接的であれ貴方は彼から何らかの形で受けなければならない・・・、それがどんな苦痛になるか私には想像できません」
14歳の私はそれを聞いても動じなかった。
目には強い決心が生まれている。
「私はユイを助けれるなら、どんな苦痛も受け入れます。ずっと前から決めていた事ですから大丈夫です」
これ以上はユイには聞かせられない・・・・・・、現実へと返さなければ。
「ユイ、やっぱり戻って、貴方はこの先、見ちゃいけない」
「いや、見るべきだ。自分の事だし見る必要がある」
「ユイ・・・・・・、どうなるかも分からないんだよ、それでも良いの?」
「ああ、構わない。覚悟はできているから」
その時突如、世界が変わった。
今度はかなり広い。
見慣れた光景だった。
時刻はもう夕方だろうか・・・・・・日が落ちかけ、暗くなり始めている。
学校か・・・・・・、それも廊下。
そこにはまた14歳の私がいた。
「こんばんはユイ」
「僕達が・・・見えるの?」
「今日で5回目だね・・・こうやって会うの」
「5回目?」
私はユイを見る。
しかしユイは知らないと首を横に降る。
その時、14歳の私は私達をすり抜けた。
「あっ・・・素通り、見えていないのか私達」
振り向くと、そこには誰かがいた。
激しく殺気を出し、うずくまっている。
14歳のユイだ・・・・・・。
髪は紅くなり、口からは苦しいのか涎をたらしている。
「今日で5回目、私の力を入れて二ヶ月・・・以外と落ち着かないものね・・・・・・力って」
息を飲んでみる私達。
その14歳のユイ・・・・・・紅赤朱ユイは、14歳の私に襲いかかった。
しかし抵抗もせずにそのまま受けた。
「駄目だよそんなことした・・・らっ!!」
笑顔でみぞおちにケリを食らわせる14歳の私。
我ながら怖いな・・・。
紅赤朱ユイは吹っ飛び、背中を打つが、すぐに体勢を建て直した。
「さあ、来なさい」
正面に向いて立つ14歳の私。
紅赤朱ユイは爪で14歳の私に襲いかかってきた。
14歳の私は、攻撃を受けつつも少しずつ下がっていく。
それを見て私は、14歳の私が何をしているか分かった。
「私の躰の回復力は最大に高めてある。しかし・・・時間の問題かな?」
紅赤朱ユイは肩をつかみ、壁に押し付る。
血を吸おうとしているのだ。
「・・・・・・っ・・・残念だけど、今血を吸っても貴方の躰に入って、無意味な物に変わるから。なぜなら・・・」
「なぜなら、今は彼の躰の中の血が、私の力に反発している。私の力を入れた目的は彼の血の力を無くさせる事。だから・・・」
「だから貴方の血を吸ってもそれは私の力によってかき消されてしまう」
しかし紅赤朱ユイはまったく聞こえてなかった。
紅赤朱ユイは、14歳の私の首に噛みつく。
「くっ・・・だ、だから意味ないって言ってるのに・・・・・・かはっ」
14歳の私は、押さえている腕をつかむ。
「それに今日はやけにおとなしいのね。いつもなら真っ先に心臓とかついているのに・・・・・・」
その声に反応したのか、ゆっくりと首から離す紅赤朱ユイ。
「簡単に心臓を取りだしたらつまらないからな・・・・・・じわじわとやったほうが面白い・・・・・・・・・ククク」
普段からは考えられないような笑い・・・。
怖い・・・。
「あぁ、一応考えているのね・・・。でもそれじゃ私は殺せないわよ、すぐに回復するから・・・」
「そんなことは百も承知、しかし今日はその『躰』を使おうとおもってな・・・・・・」
それを聞いてすぐに私はその意味が分かった。
そう、ここで犯すのだ。
今のユイに理性なんて物はまったく無い・・・・・・。
しかし14歳の私には、これは作戦だった。
そう、彼に近づかなければならない。
そして紅赤朱ユイは14歳の私を犯し始めた。
苦痛に顔をゆがませる14歳の私・・・・・・
「くっ……」
ユイも目を閉じ、奥歯をかみ締める。
「今の彼にを戻すには、ただ時間が過ぎるのを待つしかないのよ…。確かにやり方はあるけど、それにだって………彼に近付かなければらない」
14歳の私は、紅赤朱ユイの背中に手を当てる。
そう、力を注ぐために「印」に手を当てたのだ。
そしてそのまま力を注いだ。
ちょうど紅赤朱ユイが絶頂を迎えたのと同時に入れた。
そのままユイは気絶し、私の上に倒れた。
そして14歳の私は、あやすように彼の背中を軽く叩いた。
「おやすみユイ…」
そこで夢は終った。
今広がっているのはあの草原だった……。
「ユイ……」
ユイは俯いたままだった。
ふとユイの頬に一筋の涙が流れた。
「ユイ、どうしたの?」
「嬉しくて……でも………悲しくて……、僕がこうしていられるのもステアーのお陰、でも……ステアーには…」
私はユイの口を人差し指で抑える。
「言わなくていいわ、私は楽しかったもの………それに…あれ、私の初めてだったの…」
一気に顔を紅くするユイ。
オドオドするユイだが、普段のユイに戻ってくれた。
でも私も恥ずかしかったかな?
「ねえ、ちょっと耳貸して」
「え、ぅ、うん」
ゆっくりと耳を傾けるユイ。
「これからもずっと一緒にいてね、私、ユイがいるだけで幸せだもの」
「えっ、あっ…その、もちろん!」
テヘッと舌を出し、ユイに抱きつく。
ずっと顔を紅くしたままのユイは何だか可愛く見えた………。