28/記憶
19day/November 8(Fry.)
シャーロック&ルイ作
久々に昨日の夜は熱かった。
いつも以上にユイを感じ、ユイも私を感じてくれた。
日が昇り、朝日が部屋の中に差し込むと、私は目を覚ました。
布団を胸元で押さえ、躰を起こす。
「おはようステアー」
「あっ、おはようユイ」
ユイも躰を起こすと、私の肩を抱き、そっと抱き寄せた。
「どうしたのユイ?」
「ううん、何でもない。ただこうしたかっただけだから…」
正直、私もそれが嬉しかった。
ずっとユイとこうしていたいと思う……。
「ステアー、今日、何の日か覚えているかい?」
「えっ?」
突然、私に質問してきたユイ。
えと…私やユイの誕生日でもない……祝日や祭日でもない……なんだろう…11月8日……………そうか…。
思い出した、今日はユイのお父さんとお母さんの亡くなった日だ……。
あの事故……の日……。
「そっか、お墓参りに行かないとね」
「うん」
誰かがドアをノックする。
あっ、翡翠さんか……。
「失礼します」
いつもの朝の挨拶に来たのだ。
部屋の中に入ると、翡翠は顔を赤らめた。
しまった…、私たち、今裸なんだった……。
「き、着替えたら居間へ行きますから…」
「は、はい、お待ちしております……」
翡翠が部屋を出ると、私たちは服を着始める。
今日はお墓参りということも会って、すべて黒にした。
あまりはかないスカートにし、着終わる。
「いこっかユイ」
「うん」
部屋を出て居間に向かう。
居間に到着し、中に入ると青子さんや志貴、瑞希さん、フェーダーや秋葉がソファーに座って話していた。
「おはよう、皆」
「おはようございますエレイスさん、ユイさん」
秋葉が挨拶すると、紅茶のカップを持ち、中の紅茶を飲む。
「おやっ?どうしたんだ二人とも同じような服を着て?」
「今日、ちょっと行きたい所があってね。だからこの格好なんだ志貴」
「そう、デートかな?」
「違うよ瑞希さん」
「は〜い♪、皆さん朝食ですよぉ〜」
サイレントが屈託のない笑顔でテーブルに朝食を乗せてゆく。
今日は洋風だ。
席に座ると、いただきますといい、パンをかじってゆく。
ふとユイを見ると、あまり元気がなく、少しずつしかパンをかじっていない。
「どうしたのユイ?」
青子がいうのことに気づき、声をかける。
「いや、何でもないです。大丈夫ですから」
朝食が終わり、自室へ戻るとユイはジッと窓の外を眺めるだけだった。
何だか声がかけづらく、そのままにしておいた。
9時ごろになると、私たちは出かける準備を始めた。
ユイはクロのロングコートを着て、眼鏡に上につけれるサングラスをはめる。
私は同じく黒のコートを着て、マフラーを巻き、手袋を嵌める。
「行こうか?」
「うん、忘れ物はないユイ?」
「大丈夫だよ」
部屋を出て、屋敷を出ようとする。
その途中、翡翠さんに出会い、出かけると挨拶する。
「分かりました、道々お気をつけて」
「行ってきます」
屋敷を出て近くのバスに乗る。
目的地は三咲町と隣町の栄目にある墓地だ。
バスに揺られて30分、墓地近くのバス停に到着し、バスを降りると近くの花屋の向かう。
ユイは花屋の中に入り、花を注文し始める。
その間私は花屋の外で待つ。
と、その時頭の中に何かが流れた。
頭の中には学校の廊下、実家の部屋………そして……紅赤朱になったユイだった。
「ステアー?お〜いステア〜?」
「あっ、な、何?」
ユイの呼ぶ声で目を覚まし、ぎこちなく返事をする。
「花、買ったよ。大丈夫かい?」
「う、うん、大丈夫。行こう」
墓地に到着し、ちょうど中心部当たりにユイのお父さんとお母さんのお墓はある。
ユイはまずお墓の周りの掃除を始めた。
私も手伝いをし、お墓をきれいにしてゆくと、今度は花を沿え、線香とろうそくに火をつける。
そして私たちは手を合わせた。
しばらくし、手を下ろす。
ふとユイの顔を見ると、何かを思い出したのか悲しい顔をしていた。
「大丈夫?」
「うん……、ねえ、行きたいところがあるんだけどいいかな?」
「うん、いいよ」
ユイは墓地を出ると、さっき来た道とは反対の方向へと歩き出した。
何も話さず、無言で歩くユイ。
10分くらい歩き、緩やかなカーブのある道でユイは足を止めた。
「ここは?」
「僕の運命の分岐点……、父さんと母さんが死んだ場所だ…」
息を呑んだ。
彼のお父さんとお母さんのお葬式は出たことはあるが、事故現場は今日始めてきた。
確かあの時は、ユイたちの家族は夕食を食べたあと、帰宅途中でセンターラインをはみ出した大型トラックと正面衝突をしたと聞いた。
その際、ユイのお父さんは事故で即死し、お母さんはその30分後に息を引き取った。
幸い、ユイは病院まで持ち、私の力で怪我を克服したのだ。
ユイを見ると、涙目になっていた。
そう、彼は物心ついてからわずかな時間を親とすごしただけでその後はずっと一人ぼっちなのだ。
何もかも一人でやってきて今でもお父さんやお母さんの甘えることとは少ししかしていない。
寂しいのだ……。
「行こうユイ、もういいよ……」
「うん、そうだね……」
その後私たちは、三咲町の繁華街で昼食を食べ、遠野家へと帰った。
屋敷に戻ると、私は昼寝をすることにし、そのまま自室で眠った………思い出したくない記憶を見ながら…………………。
「あいつ……まさか……」
ユイの姿を見て一人の男が呟いた。
すべてが黒の彼……
今後、彼がユイと生死をかけたをするとは私、そしてユイにも予想は出来なかった………。