21/光と影

14day/November 3(Mon.)
シャーロック&ルイ作


 あれから、私はすぐに深い眠りに落ちた。
ゆっくりと寝れるはずだった。
しかし、この夜は違った。
夢の中で、誰かが私を見ているのだ。
顔が影に隠れて見れない。
でも目だけははっきりと確認することができた。
赤く、血に染まったような瞳吸血鬼と同じ瞳………。



 現実で私は、うなり声を上げながら、ユイの服を掴んでいた。
その声を聞いた七夜は、静かにこの部屋に入り、私の様子を見た。

「ユイ………ユ………イ………」

 七夜はそれを聞き、私の手をきつく握る。
何も言わないが、しっかりしろと目で言う。

「ぅ………ん……ぁぁ……」

 夢の中で、私を見ている誰かが近づいてくる。
私はそれが怖くて必死で助けを求めた。
ユイ………ユイッ!と………。

「…ス……テアー?」

 私のうなり声で目がさめたのか、ユイは躰をゆっくりと起こした。

「起きたのか」

 七夜は私を見ながらユイに問う。
ユイは、夢の中でステアーが助けを求めてたと言う。
七夜はそれを聞くと、私の手をユイに差し出した。

「なら、この手はお前が握るべきだな………。今はそいつの側にいてやることだ…………」

 七夜は手を放し、部屋を出て行った。
ユイは私の手を握る。

「しっかりステアー、大丈夫だから………」



 ゆっくりと相手の顔から影が消え、誰かが分かるようになった。
それは……私だった。
黒服のボディーラインを強調したライダースーツのような服を着て、何かに勝ち誇った顔をしながら私を見ていた。

「ふふふ、はじめまして、かな?」

「あなた………私?」

「焦っちゃって可愛い……、でも今より…………彼の血を舐めてた時の方が良いなぁ〜」

 流し目で見るもう一人の私、いや、言うなればシャドーステアー。
血を舐めていた時………さっきのことか。

「それは!……ただユイの傷がっ……」

「それって言い訳でしょ?」

 くっ………しかし何この勝ち誇った顔は………、まるで私と正反対の性格じゃない………。
 何時しか私はシャドーステアーを睨んでいた。
 しかし、シャドーステアーはわざとらしく怖がるだけだった。

「そんな睨まないでよ、怖いなぁ。だって本物の吸血鬼が言ってたじゃない………。貴方の作り出した刃からユイの血が匂ったって…」

「本物?……アルクェイドの事ね」

「だから貴方の血の中に、少なからず遠野の血が入った、ということよね?」

 シャドーステアーは、フッと七夜のように姿を消すと、私の背後に現れ、いきなり私を抱きしめた。
しかし私は動揺しなかった。

「だからって……その血が必ず目覚めるとも限らない。ユイの場合だって、あれは確率的なものだったし………むしろ、目覚めないほうが普通なの」

「それでも、貴方だって目覚めないとは限らないでしょ………よね?」

「それはっ………」

 その時だった。

「ステアー!!」

「あら、王子様の登場ね」

 ユイが現れたのだ。
私のところへ走ってくるユイ。
しかし、地面から何かが姿を表し、行く手を阻んでしまった。
それは人だった。
黒いロングコートを着て、目にはサングラス、手にはドライバーグローブ、ユイと同じくらいの背……まさか……。

 ユイは血の刃を出そうとするが、その人物は、指を鳴らすと、どこからか鞭が跳んできて
ユイの両手の自由を奪った。

「おとなしくしろ………」

 この声……その人物から聞こえた。
やっぱり影のユイ、つまりシャドーユイだったのだ。
 二人は私たちの方へ向かって歩いてくる。

「ユッ……んっ!」

 シャドーステアーは、人差し指で私の口を抑える。

「はぁーい、ストップ。まだこっちの話は終っていないわよぉ?さて、貴方は本当は血を求めているんじゃないかしら?ということを話していた訳なんだけど………ユイはどう思ったかしら?」

「何をっ?」

「私は……見ててちょっとドキドキしちゃった……。だって普段見られないような表情だったから………ねぇ、ステアー?」

 シャドーステア−は、口を私の耳の側まで持ってくる。
彼女の息がかかり、こそばゆい。
  その口から離れようと私は顔を動かす。

「ふふ、ユイの方がいい?」

「何を!?」

 一気に私の顔が赤くなる。

「ユイ、この質問に答えて。ステアーが貴方の血を舐め取るとき、どんな顔をしていたか?」

「えっ……それはその…………確かに今まで見たことがない顔だったなとは思ったけど・・・」

 突然シャドーユイは何を思ったのか、あいているほうの腕から血の刃を出し、ユイの腕を傷つけた。

「うっ……くっ」

「ユイ!何をするの!?」

 私はシャドーステアーから抜け出ると、ユイの元へ走った。
また、赤い血がドクドクとあふれ出る。
その傷口に目が釘付けになってしまう。
 頭を振り、その考えを無くす。

「違う……血なんて要らない………要らない!!」

「無理しちゃって、躰に毒よ……。これが欲しいんでしょぉ?」

 シャドーステアーは指でユイの血をすくい取って、私の目の前にその指を持ってきた。
 ……躰がうずく………血なんて…………いらない………いらない…………。
 でも……

「っ!……ぁ………あぁ・・・」

 何時の間にか、ユイの肩に腕が伸びていた。
唾を飲みこみ、ユイの傷口に口を運ぶ。
 そして、一口舐める。

「はぁ………」

 美味しい………。
 私はそのまま飲み続けようとする。
 しかし、すぐに私は理性を取り戻す。

「あ、ああ……いや………」

「っ………どうして………」

 シャドーステアーは口を噛む。
 私は頭を抱え、力なくその場に崩れる。

「私は…………何を………まさか………いや……………いやあぁ!!」

「あぁん…………もうちょっとだったのにぃ、ざ〜ん念」

「ステアー…………しっかり………」

 ユイは、腕の痛みを堪えて私を心配してくれる。
 その時、もう一人助けが来た。

「そいつを壊すのがそんな楽しいか?」

「あ〜ら、もう一人の王子様のご登場ねぇ………」

「七夜か………」

 無口だったシャドーユイも七夜に反応する。
しかし七夜は冷静だった。
ゆっくりと歩いて来る七夜。
 シャドーユイは、ユイから離れるとシャドーステアーの背後から抱きしめた。
 シャドーステアーは、抱かれている手にそっと手を乗せ、躰をシャドーユイに預ける。

「ユ……イ…」

 ユイは無言で私の前に座ると、私を抱きしめた。
私もユイを弱弱しく抱きしめ返した。

「もう一人のユイとエレイス、なぜあの二人を壊そうとする?そんなことして何の得がある?」

「壊すだなんて失礼ねぇ、別に壊してないわ……」

「………なら何故だ?」

「ただ二人に正直になって欲しいだけさ…………二人はなかなか正直に物事を言わないからな………」

 シャドーユイは、そっとシャドーステアーの唇を奪う。
彼女はそれを受け止め、彼の舌に、自分の舌を絡める。

「んっ………そういうことよ」

「なるほど…………ならあいつらは何故それを拒む?」

「それは自分の望んでいない姿だからよ……。貴方だって、同じ私でもあのこの方が良いでしょ?」

「お前はあいつの望まざる姿というわけだ」

「ビンゴね、だからもっと正直になってもらわなくちゃ」

 シャドーユイは、シャドーステアーから離れると私達の方へ寄ってきた。
そして私達の額に人差し指を当てると、指が青白く光だし、頭の中に何かが入ってきた。
その瞬間、ユイは気絶し、私の躰が大きく跳ねた。

「い………っつ……くぅ……」

 こぶしをきつく握る。
 何かが私の中から出てくる……。
 あぁ・・・血が吸いたい……。
 ダメ!吸いたくない!
 私は必死で吸血衝動を抑えた。

「へぇ〜、耐えるんだぁ。意味ないのにな〜、正直になれないよ」

「うっ……そんなの…………なりたく…………ないっ……」

「そのままでいろ、できるだけ長くな…………」

 七夜は、私たちの前に出ると、二人を睨んだ。
 二人も同じように七夜を睨み返す。
 しかし、七夜に長くなと言われたが……持たなかった。

「……ふふっ」

 七夜は動きを止め、私を見る。
シャドーステアーはクスクスと笑う。

「あ〜あ、今度こそ…………かな?どう、ステアー?」

「ええ…………すごくいい気分よ、躰はね………でもね」

 私はシャドーステアーに寄る。
そして服を掴むと、血の刃を出しシャドーステアーの胸を突いた。

「なっ!……ぐ…なん…………で…………」

 シャドーステアーはずるずると地面に倒れる。
 私は冷たく笑う。

「一人の人間の中に…………同じ人間は必要ないの。だから…………」

 シャドーステアーの胸からゆっくりと血を抜くと、刃についた血をツゥと舐め取る。
それを見たシャドーユイは、シャドーステアーに駆け寄る。
 シャドーステアーの胸からは、赤い鮮血がドクドクと溢れる。
きれい………。

「このぉ!」

 シャドーユイは、私に向かって血の鞭で攻撃してくる。。
しかし私はそれを簡単に掴み、手に巻きつけると思いっきり鞭を引いた。

「なっ!?」

「貰った………」

 よろめいたところをシャドーユイの懐に入り、胸に刃を突き入れる。

「私の知るユイは………一人でいいわ……………貴方も、嫌いじゃないけどね」

 フッと冷たく微笑み、私はシャドーユイの胸から刃を抜くと、彼の首を切った。
激しく鮮血し、シャドーユイも倒れる。
二人の「影」を殺したと確認すると、私はユイの方へ向かう。

「ユイ………」

 私はユイの触れようとするが、すぐに手を引いた。
触れない……今の私じゃ…………触ることができない。

「…………ス………テ………アー………」

 何時の間にか、ユイの意識が戻っていた。
 でも……できない………彼に近付くことが…………。

「行ってやれ」

 七夜が私の後ろに立ち、軽く背中を押す。
始めは戸惑ったが、うんと首を縦に降る。
ゆっくりとユイに近付き、抱き起こす。
その途端、目の前が揺れるが、振り切るように頭を振った。

「ユイ!」

「よかった………」

 その時、シャドーユイの躰が再び動き始めた。
首と胸の傷は消えており、完全に回復していた。

「不覚を取ったが……まだまだ……」

「っ!」

 私は鋭くシャドーユイを睨みつけた。
ユイの躰をそっと地面に寝かすと、私は再びシャドーユイに切りかかろうとした。
しかし、何かが私の足を掴み、その動きを封じた。

「まだ……死んじゃいないわよ、貴方が死ぬまで……私は死なないから」

 シャドーステアーは更に強く私の足を握る。

「ぅ…つぅ……はっ離して!!」

「い〜や。私は貴方が墜ちるのが見たいの…それまで離さないから」

「ばっ、バカなこと言わないで!!」

 七夜はシャドーステアーに向かって走り、切りかかろうとした。
シャドーステアーはそれを見ると、ニヤッと不適な笑みを浮かべた。
すぐに私はそれが何なのか分かった。

「来ると思った……」

「七夜!!来てはダメ!」

「シャドーユイ!!捕まえちゃって!!」

 シャドーユイは腕から血の鞭を出すと、ユイの手足に巻きつけ、七夜の手足の自由を奪ってしまった。
そのまま七夜は地面に倒れてしまう。

「ぐっ……」

「七夜!」

「捕まえちゃった…確かにユイでも良いんだけどねぇ、たまには変えてみるのも面白いでしょ?……私もその気になってきちゃったし」

 今度は七夜の血を貰う気でいる。
彼女は七夜の頬に触れ、フフッと笑う。
血の刃を出し、七夜の首を少し切ると赤い血が流れ落ちた。
シャドーステアーはそれを手で取り、舐めた。
そして満足そうな顔をし、私を見る。

「美味しい……ステアー、彼の血も血もすごく美味しいわよ」

 このやろ………。
 私はこみ上げる怒りを必死で抑えた。
 その時だった、ゆっくりとユイが立ち上がりシャドーステアーとシャドーユイを激しく睨んでいた。
そして手には……日本刀……いや、更に長い長剣サイズの血の刃が握られていた。

「絶対に……ステアーを傷つけたりはしない……」

 ゆっくりと近付くユイ、そして更に強く刃を握る。
しかしシャドーステアーはフッと笑うだけだった。

「傷つけない………か、いいわねぇ………」

「絶対にやらせたりするもんか!!」

 ユイは躰のダメージも忘れ、シャドーステアーに切りかかった。
 血の長剣を振るが、シャドーステアーはユイより高く跳躍しそれをかわす。
そしてシャドーステアーも血の刃でユイに切りつけようとしたが、ユイは血の長剣を背中に振って受け止めた。
躰を回転させ、シャドーステアーの方へ向くと手首を回しながらシャドーステアーに切りかかった。

「やるじゃない……でもまだ甘いわね」

 シャドーステアーの視線が、ユイの背後に移った。
ユイが振り返ると、シャドーユイがユイに向かって血の鞭を振り下ろすところだった。
鞭があたらないところにサイドステップで移動し、今度はシャドーユイに向かって血の長剣を振る。

「ふう、危ない危ない……」

 シャドーステアーもシャドーユイの援護を使用とユイに襲い掛かる。
 その間に、私は七夜の手足に結ばれた血の鞭を血の刃で切ろうと努力していた。
しかしなかなか切れない。
改めて血の武器の硬さを知った。

「くそ……切れないわ」

「俺はいい、お前はユイを助けてやれ」

 ユイの方を見ると、二人を相手にしているため徐々に形成が悪くなってきた。
片手に長剣、片手に日本刀サイズの刃で二人にあたっている。
 私は日本刀の半分のサイズの刃を出し、ユイの元へ向かった。
小さな刃を出すと、私はシャドーステアーの足元に向かって刃を投げた。
しかしシャドーステアーは、それを見過ごしたのごとく簡単に避けた。

「甘いわよ」

 私の背後に跳躍すると、刃を私の背中に刺した。

「残念でした〜」

「ぐ……」

 地面に倒れるが、両手を付いて何とか立ち上がるとユイに向かってよろよろと歩き出す。

「うわぁ……まだがんばっちゃうんだ」

「ステアー!!」

「もらった」

「っ!」

 シャドーユイはユイの胸に血の刃を刺した。
痛みの性で気絶し、胸からは赤い血がドクドクと溢れる。
両手に持っていた刃が地面に落ち、ユイも足の力が抜ける。
 シャドーユイは手をユイの前で翳すと、シャドーユイの腕から血の鞭が飛び出しユイを十字架上にし、身動きを取れなくした。

「ほらシャドーステア、この血、飲んで良いぞ」

「えぇ、いいのぉ!」

 シャドーステアーは、子供のようにうれしそうに跳びながら十字架上に縛ったユイに近付いた。
そして、ユイの胸に口づけし、あふれ出る血を飲む。
 幸せそうな顔をしてゆっくりと流れ出る血を舐め取る。

「んっ……ふっ……はぁ、ふふ、たまんないかも♪」

 シャドーステアーは、勝ち誇ったほうに私を見た。
私は、顔をそらして強く手を握った。

「やめて……彼を、離して………」

 しかしシャドーステアーは胸からの出血が少なくなると、今度はユイの首を切り、そこから出血する血を飲み始めた。
満足そうに飲んでゆくシャドーステアー。
私は耐え切れなくなり、ユイのもとへ走った。
そう、彼を助けるため……。
 私はまず重傷の胸の傷を回復させるため、傷に口付けする。
それを見るシャドーステアーはユイの首から顔をあげ、面白そうな顔で私を見た。

「ふぅ……ん、やっと飲む気になった?」

「違う、私はユイを助けるだけよ・・・」

「まあ、どちらにしろ地は飲むことになるからいいけどね……んぅ……」

 シャドーステアーは再びユイの血を飲んでゆく。
 私は傷口を舐めながらユイの背中の印に右手を添え、力を注いでいく。
次第に胸の傷が消え、首の傷も徐々に塞がってきた。
意識も取り戻し、何も言わずに私に微笑みかけてくれた。
その顔を見て私は、ホッとした。

「ユイ、大丈夫?」

「ああ………ステアーのおかげでね……」

「ユイ……よかったぁ………」

 私はユイの胸に額を付ける。
気がつくと、シャドーステアーはまだユイの首の傷を舐めていた。
あと少しで傷が塞がるのにまだ舐め続けている。

「ちょっとシャドーステアー、何時までやっているのよ」

 彼女の襟を掴み、ユイから引き離す。

「んっ……あん、もう、良いじゃない別にぃ………」

「良くない!!」

 きつく彼女を睨むと、むぅ〜とすねたように唇を尖らしながら、すがるようにシャドーユイの腕に絡め取る。

「シャドーユイ、この鞭を解いて」

「ふん……よかろう…………」

「七夜もよ」

「おとなしくしているならば」

「分かったわ、七夜、解いても暴れちゃダメよ」

「……わかった」

 指をパチンと鳴らすと、二人に絡み付いていた血の鞭が解ける。
ユイは力なく倒れそうになり、私は彼を受け止める。
やはり傷がのダメージだろうか、手足の自由が利いていない。
私はそっとユイを抱きしめる。
それを見たシャドーステアーは複雑な顔をしていた。

「何か不思議な感じね。ね、シャドーユイ」

「そうだな、なんなら僕達もやってみるか?」

「えっ?」

 シャドーユイはいきなり、シャドーステアーの唇を奪った。
突然のことでビックリするシャドーステアーだったが、すぐにそれを受け入れた。
しかしあの二人はお暑いことで………。
 シャドーステアーの舌を求めてシャドーユイの舌が侵入する。
 ゆっくりと口内の唾液を舌に絡めさせると、今度はシャドーステアーの舌を絡めさせる。

「すごいなあの二人……」

 ユイは何時の間にかじっくりと二人の行為を見ていた。

「見なくてもいいの!」

 私はきつく彼を抱きしめ、二人の行為を見ないようにする。
二人のキスは、更に激しさを増す。
シャドーユイは耳をやさしく噛みながら耳を舐めると、シャドーステアーは耳まで赤くしながらその気分を味わった。
ゆっくりと耳から口を離すと、シャドーユイはフッと笑った。

「どうだシャドーステアー?これで満足か?」

「ふぇ?……ん、まだちょっと物足りないかな?」

 あのバカップルは………。
頭を押さえ、はぁ〜っとため息をつく。

「ステアー………苦しい………うう………」

「あっ!ごめんユイっ……大丈夫?」

 ぷはっと息を吐き、深呼吸するユイ。

「うん……大丈夫………」

 私は頭を撫で、優しく微笑む。
その時、シャドーユイがまたパチンと指を鳴らした。
途端、私たちは急に眠気が襲った。

「な…なんなのこれ?」

「君達はもう時間だ。現実の世界へ戻るんだ」

「えっ……」

 意識がなくなり、地面に倒れる私たち。
そして躰が消え、意識は元の世界に戻った。
意識が消える寸前、シャドーユイとシャドーステアーは何かを言った。

「貴方達がいると私たちのお・た・の・し・みがじっくりと味わえないもんね」

「そういうことだ……またな」

 ほんとにあの二人は、完璧なまでのバカップルだ。
何だか別の意味で感心しちゃうよ。
 意識が消える寸前、私は二人を見た。
シャドーステアーの胸を丹念に揉んでいるシャドーユイが見えた。
 そうか…するん…………だ……






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