13/復讐

11day/October 30(The.)
シャーロック&ルイ作


 その日は、風が強く、天気も曇りだった。
私はいつものように起き、朝食をとった。
 しかしユイはずっと眠りつづけている。
遠野の血に目覚めてしまったことで、数年間抑えていた力がリバウンドした為に相当な負担になったのだろう。
 朝食後も、私はユイの看病した。
まだ一向に目覚める気配はない。
 私は、部屋で読書をした。
何時でも動けるようにスタンバイはしている。
 夕方になっても、まだユイは目覚なかった。
ほんとにどうしたのよ………。

「んっ…………」

「ユイ?」

 私は、ユイによる。
うっすらと目が開いていた。
そして、私の方へ向く。

「す……てあー………」

「よかった、気づいた?」

「うん、心配かけたね……」

 私は、彼の頬を触る。
その手を握るユイ。
よかった、いつものユイに戻った。
 そこに、秋葉と琥珀さんが入ってきた。

「ユイさん、お目覚めですか?」

「はい…秋葉、琥珀さんゴメンね」

 琥珀さんの手には、水と薬があった。

「はい、これを飲んでくださいね」

 ユイは黙ってそれを受け取り、薬を飲む。
 私は、あとのことを秋葉に任せ居間へと向かった。
 秋葉は、ずっとユイを見つめたままだった。
琥珀さんは、仕事がありますからと言い、厨房へと戻ってゆく。
秋葉もしばらくすると部屋を出て、自室へ戻った。
 ユイは、秋葉の様子がどこかおかしいことに気づいた。
上着を着てユイは、秋葉の部屋へ向かい始めた。

「う〜、さむ」

 今日はほんとに寒かった。
昼なのにぜんぜん気温が上がらない。
もう完全に冬になってしまったのかなとユイは思った。
 二階の東館の秋葉の部屋に着くと、ドアをノックする。

「はい?」

「ユイです、あの、今だいじょうぶですか?」

「ええ、どうぞ」

 ユイは中に入る。
秋葉は、ソファーでゆっくりとしていた。

「あの、さっき部屋に入ってきたとき、何だか気分が優れなかったようですが…」

「…大丈夫です。ただ、血には逆らえないと思っただけです…」

 秋葉は目をつむり、うつむいてしまった。
ユイはそれを聞いて驚いた。
秋葉本人も同じことがあったのか、と。
 そう、シャーロック家はあまり遠野本家には縁がなく、ユイ自身もここへ来て始めて遠野家のことを知ったのだ。

「私は、昔は血を飲んでいました、押さえるために。もちろん、兄さんには隠していました。…でも、一番はやはり、自分を強く持つこと…なんですね。貴方の家系には、私たちの血があります。ですから、あの時…すぐに貴方が遠野の血が目覚めたとすぐにわかりました」

「…そうなんですか」

「ええ。私も貴方のように暴走していたときがありました。今では自分でコントロールができるようになったんですが………すこし怖くなったんですまたいつか暴走するんじゃないかと……」

 ユイには、秋葉の気持ちが痛いほどわかった。
と、そのとき、ユイの視界が真っ暗になった。

「あう…」

 それと同時に、胸を突く痛みが走る。
ユイは胸を抑え、うずくまった。

「ユイさん!?」

「あぁぁぁ………なんだ………この痛み…………」

 秋葉は、ユイによると、ソファーに寝かせた。
ただ事じゃないと感じ、すぐに琥珀を呼んだ。
 すぐに琥珀が部屋へ入り、秋葉に何事かと確認する。

「秋葉様!どうかなされましたか!?」

「琥珀?ユイが倒れたの、すぐに部屋に!」

「わかりました!」

 秋葉と琥珀は、ユイをかつぎ部屋へ戻る
 琥珀は、急ぎ足で部屋を出ると、すぐに医療キットを持ってくる。
鎮静剤を投与するが、まったく効果がない。
 すぐに、私はユイの寝ている部屋まで走って向かった。
 まさか、また遠野の血が?
 ふと、私はそんなことを思ってしまった。
 中に入ると、琥珀さんが、懸命な措置をしていた。
しかし、もう手の施しようがない状態に見えた。

「ユイ………」

「いやだ………くるな………くるな………」

 うなされていた。
何が来るのだ?

「兄さん、これってやっぱり……」

「遠野の血が再び目覚めようとしている」

「そんな!?」

 私は声を荒げてしまった。
あの時、力をありったけ与えたのにと思ったからだ。
 すると、ユイの髪の色がすこしずつ変わりだしていた。
まさか………。
 そのとき、アルクェイドがすこし慌てた様子で部屋の中に入ってきた。
今回は窓からではなくちゃんとドアから。

「志貴、外の様子が変よ!」

「なに?」

 志貴は外を見る。
確かにいつもと何かが違っていた。
 空は漆黒の闇ごとく覆い、外の空気は霧のように濃密になっていた。
 志貴はポケットから七つ夜の短刀を出すと、刃を出した。

「ここは頼んだ、俺が確かめてくる」

 志貴は、走って外へ出て行った。
 とうとうユイは、髪をすべて血のごとく真っ赤にしてしまった。
明らかに、この前と同じ状況だ。
それを察したのか、シエル先輩の目つきもきつくなった。

「この状況…すこし危険ですよ」

 シエル先輩の読みごとく、ユイは起き上がり、こちらを見た。
そう、赤い瞳で……。
 再び目覚めたのだ……紅赤朱が。
秋葉、先輩、アルクェイド、琥珀さん、翡翠さんは、一歩引く。

「ユ……イ…」

 私は、ゆっくりとユイに近付いた。
みんなの静止を振り切りながら。

「エレイスさんっ、危険です!」

 シエル先輩が叫ぶが、私は、それを無視し、一歩、また一歩とユイに近付く。

「ハァァァァァ………」

ユイの赤い瞳が、私を睨みつける。

「大丈夫です……」

「しかし、このまま貴方を一人にするには………」

「そうよ、ここは逃げて!」

 アルクェイドも逃げろという。
しかし私は……逃げれない。
ユイをこのままして置けない。

「ユイ……」

 私は、彼に触れようと手を伸ばした。
ユイは、まだ私を威嚇している。
 でも、怖くなかった。
ユイのためならと思ったら……。
 そう、昔から……。
そして、ユイの頬に触れた。

「大丈夫だよ、ユイ……。大丈夫だよ……」

 私は、やさしく声をかける。
しかしユイは私の声にも聞かずに私の腕をつかむと、鋭い牙で私の肩に噛み付いてきた。

「ぅああっ!……ぐっん………」

 私は、必死で我慢する。
激痛を押さえようと、脳から大量のアドレナリンが分泌する。
しかしそんな暇もなく、激痛が増していく。

「エレイス!!…くっ」

 秋葉は髪の色を変え、ユイを鋭く睨む。
そしてユイに向かって「髪」で攻撃を始めようとした。

「あ、あきっ…は。だめっ……」

 私は、苦痛に耐えながらも秋葉を止めた。
 それを見た秋葉は動きを止める。

「どうし…て」

「だって……大事だから、ユイが…わかるでしょ?秋葉も……」

 そう、ユイを傷つけることなんてできない。
 私の大事な人……。
 私の大好きな人……。
 秋葉も、それを聞いて黙ってしまった。
 するとユイは肩に噛み付きながら、今度はアルクエィド達を睨みつけ始めた。

「やる気ですか?エレイスさんが傷ついているにもかかわらず?」

 先輩はユイを激しくにらみ返す。

「彼女を傷つけたくない……と言うのは、嘘ですか?先ほど言ったはずですよ、自我と大切な人は忘れるなと………」

 秋葉も髪をさらに紅くしつつ、にらみ返している。

「そっちがやる気なら、容赦はないわよ」

 アルクェイドも戦闘状態になっている。

「うっ…だ、だ……め」

 秋葉が一歩前出ると、思いがけないことを口に出した。

「それとも………一度貴方も飲んでみては如何ですか?」

 ……えっ、
ぁ……秋葉、それは本気?
 私はそう思った。

「何か変わるかも知れませんよ?」

 その時だった。
とうとうユイは、私の腕の骨を折ってしまった。
 激しい激痛が、私を襲う。

「ひっ!!ぃやああ!!!」

 ユイの噛み付く痛みと噛み砕いた痛みが重なって尋常じゃないほどの痛みが私に来る。
 それが合図になったのかとうとう、アルクェイド達が動き出した。
先輩は黒鍵を出し、アルクェイドは爪を立て、ユイに接近する。

「くっ……これ以上はみていられません!!」

 アルクェイドがユイを突き飛ばし、先輩はユイの腹に、黒鍵を投げ刺した。

「グァァァァァ!!!」

 ユイは黒鍵のダメージのせいか気絶してしまった。
 私は離れた反動で倒れてしまった。
私は、腕の激痛を逃れようと必死になった。

「うぁ!……っつ」

 秋葉が私によって声をかける。

「エレイスさん!大丈夫ですか!?」

「どうやら、気絶したみたいねユイは」

「ぁああぁ……」

 その時、一階から窓ガラスが割れる音が聞こえた。
そして、志貴の悲鳴も。
 秋葉が何かに感ずいたように顔をあげた。

「来る……」

 先輩は秋葉の顔を見る

「だれが……来るのですか?」

 その時、この部屋の扉が突然開いた。
そこに立っていたのは、あれだけのダメージを受けたにも拘らず、完全に回復したシキだった。

「シキ…」

 秋葉はスッと立ち上がり、鋭くにらみつける。
シキは、クククと冷たく笑いだした。

「志貴はどうしたのよ!?」

 アルクェイドも攻撃衝動を抑え、シキに問いただす。

「あぁ、あいつなら下でおねんねさ。さぁ、そいつらを渡してもらうか」

 なぜ……私たちを……。
私は、折られた腕を押さえつつ、私は立ち上がった。

「くっ、許さない……兄さんだけではなくこの人たちまで………シキ……」

 秋葉の怒りは頂点に達している。

「秋葉さん、ここはお願いいたします。私は遠野君を探してきます」

 先輩は黒鍵をしまうと、シキの間を抜けるように部屋を出ようとした。

「逃がさん」

 しかしシキは腕を伸ばすと、先輩の胸を貫いた。
激しく流血し、床を血で染める。

「クハァ!」

 乱暴に先輩を投げ飛ばすと、シキは腕についた血を舐めとる。

「シエルさん!?」

 琥珀さんと翡翠さんは、シエル先輩により、手当てをしようとする。
しかし先輩の傷は回復しており、流れ出した血も先輩に戻った。

「ここからは一歩も外へ出さん。その二人を連れて行くまではな」

 シキは、一歩、また一歩と近づいてくる。
そのシキの腕を、誰かがつかんだ。

「ま……まて………」

 志貴だった。
激しくダメージを追いながらも、秋葉たちのとこへ行かせまいと力を振り絞ってつかんでいた。

「兄さん!!」

「行かせないぞ………」

「お前もつくづくしつこいヤツだな、えっ志貴よぉ。さぁ、秋葉、ユイとエレイスを渡せ」

「貴方なんかにユイさんと、エレイスさんは渡さないわ……それと、兄さんを傷つけたらどうなるか……教えてあげるわシキ」

「俺を殺せるのか?」

「殺せるかですって?ふっ、愚問ね。殺してあげるわ、お望みならね」

 その隙に私は、ユイのところへ寄った。
腹に刺されていた黒鍵は、何時の間にか消えており、気絶しているだけだった。

「ユ…イ……」

「ス……テアー…………」

 私の呼びかけでかすかに目を覚まし、笑顔を作るユイ。
 ユイは、黒鍵のダメージで理性は戻っていた。
しかし、髪はまだ半分赤く、目も同じように赤かった。
 私は、折れた腕とは反対の手で何とか起こした。

「ユイ……大丈夫?」

「どう……したの……片腕?」

「なんでもないよ……」

 私は折れた腕を隠した。
ユイにやられた、なんて口が滑ってもいえない。

「なんでもない……なんでもないよ」

 片腕で、ユイの頭を抱く。
ユイの苦しんでいる姿なんてもう見たくない………。
もう見ていられない。
そう思うと、自然に涙が出てきた。

「ふん、ユイは目覚めたか……まぁいい……」

「何をたくらんでいるか知らないけど……そんなに死にたいなら殺してあげるわっ!!」

 秋葉は、シキ目掛けて走った。
そして、シキの周りに赤い線を張り巡らす。

「ふん……おろかな……」

 シキは、志貴の首をつかむとそのまま天井近くまで持ち上げた。

「グハァァ!」

「志貴!」

 アルクェイドは志貴をつかんでいる腕を切断しようと突進した。
しかしそれを見過ごしたのごとく、シキはアルクェイドの心臓を目掛けて突き刺した。

「!!?」

「アルクェイドさん!!」

 シキが腕を抜くと、アルクェイドも床に崩れた。

「くくく」

「ア……アルク…ェイド………」

「秋葉、これが最後だ。二人を渡せ……」

「や……めろ……シキ………」

「アルクっ……くっ!」

 かろうじて意識を取り戻した先輩は、再び黒鍵を腕から出すとシキ目掛けてはなつ。
しかしそれはたやすく避けられてしまい、逆に黒鍵の一本を先輩に向けて投げた。
ダメージを受けて動けない先輩は、黒鍵が腹から背中に向けて貫通した。

「あぁぁぁ!!」

「シエルさん!」

 琥珀さんと翡翠さんも先輩に刺さった黒鍵を抜こうとするがなかなか抜けない。
 ユイの目にシエル先輩、アルクェイドの血が目に入ってしまった。

「ユ……ユイ?」

 突然、ユイが私の肩をつかんだ。
しかし、手が震えていた。

「だ…め………くるなぁ……」

 戦っているのだ、ユイと遠野の血が。
私の肩に乗せた手を話すと、頭を床につけ、苦しみだした。

「うぐぁぁぁ………」

「ユイ!?」

「う……ごぼっ!」

 ユイは嘔吐をし始めた。
私の血が混ざっている。

「何で……血が…………」

 ユイはその血をみると、再び私の肩をつかんできた。
そして首に噛み付いてきた。

「ぁあっ!……んっ……」

「ユイ…君、飲んじゃいけません……」

 黒鍵が刺さり、激痛に耐えながら放すシエル先輩の声も、今のユイの耳には入っていない。
まだ理性は残っているにせよ、もうほとんど遠野よりになっている。
 シキはその様子を楽しげに見ていた。

「ユイ、お前は私の手の中にある。その力、私によればいくらでも引き出してやるぞ。それともエレイス、お前が逆にユイの血を吸うか?秋葉がいったごとく・・・」

「私は……飲まないよシキ」

 ユイは、少しずつだが私の血を吸い始めた。
喉から血を飲み込む音が聞こえる。

「っ……どうしてもユイが吸うなら……」

「エレイスさん……?」

 ユイが助かるのはもう一つしかない………。
 私は決めた。

「この力をあげる。全部ユイにあげればこれを押さえることもできるでしょう?」

「しかし、エレイスさん!?」

「大丈夫、今は死ぬことはありませんから……」

「だめです!そんなこと言っては!!」

「先輩、このまま……ユイをこのままにしていいの?」

「っ……」

 先輩は口を閉ざす。
私も、意識が朦朧として来た。
 私は手を背中の印に添えると、今までにない光を放ちながら、ユイに「不死の躰」の力を与える。

「ユイ……い、ま、助けて………あげる、から」

「やらせん!」

 シキは、志貴を秋葉に投げ飛ばす。
その反動で、秋葉は志貴を抱えつつ、倒れてしまった。
 シエル先輩も琥珀と翡翠と共に刺さった黒鍵を抜き、力を振り絞って黒鍵を投げる。
そして秋葉も、私たちにこさせまいと、赤い線を張り巡らした。

「ちっ!?」

 赤い線を避け、黒鍵も避ける。
すると突然、シキの腕が真っ二つに割れた。

「ぐはぁ!?」

 振り返ると、志貴が「直死の魔眼」をつかってシキの腕を「殺した」のだ。
ダメージでシキの顔がゆがむ。

「今です!!」

 秋葉が叫ぶと、赤い線がシキを包み、先輩の黒鍵が刺さり、ダメージを追いつつも、アルクェイドの爪の攻撃が、シキに直撃した。

「グアアアアア!!!」

「死ね!!シキ!」

 志貴は、直死の魔眼でシキの「点」を貫いた。
これでもう復活することはない。

「くそぉ……………ぁぅ……」

 シキは消えた。
あとはユイが元に戻れば、すべて終る。
しばらくすると、ユイの髪が元の色に戻り始めた。
私の首にかんでいた力も衰え始めている。

「ス……テ…ア……………」

「もう少し、もう少しだから待ってて。ね。」

 そして、とうとうのユイの髪も完全に元に戻り、瞳の色も元に戻った。
完全に元に戻ったことを確認すると、私は力の放出を止めた。
 あまりにも力を使いすぎたため、私はすぐに気を失ってしまった。

「エレイス!?」

 志貴は私を抱き起こす。
秋葉もユイを抱き起こすと、容態を見た。

「ユイさんは完全に気を失っているわ、兄さん、エレイスさんは?」

「こっちも気を失っている、早く部屋を変えよう」

「そうね、翡翠すぐに私の隣の部屋を!」

「かしこまりました。すぐにご用意いたします」

 翡翠は駆け足で出て行く。
アルクェイドとシエル先輩は、重症をおった物の、すぐに傷も消え、回復した。
 しばらくし、翡翠が準備ができたと報告があり、志貴、秋葉は私たちをその部屋まで運んでくれた。
琥珀が私たち診察すると、私の腕はもう完治しており、その他の外傷もなかった。
 すぐに、琥珀は志貴と秋はの診察に回った。
さすがに琥珀さんも今日ばかりは大変だな。
翡翠さんも手伝っているけど、それでも大変だし。













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