12/遠野の血

10day/October 29(Wed.)
シャーロック&ルイ作


 朝になり、私は目を覚ました。
私はユイを見る。
 すると、彼はうなされていた。
 息も荒い。
 汗もびっしょりとかいている

「ユイ?」

 私は彼の額を触った。
すると、彼の体温は異常に熱かった。

「ユイ!?」

「くぁぁぁぁぁ………」

 ひどいうなされ方だ。
 見ていられない。
私は、すぐに翡翠さんを呼んだ。
 事情を説明すると、すぐに琥珀さんが、治療用の道具をもってきてくれた。
琥珀さんは、まず、ユイを落ち着かせるため、鎮静剤を打つ。
次に、栄養剤が入った点滴をするため、腕に針を刺す。
 しばらくすると、ユイは落ち着き、うなされる声もなくなった。

「これで大丈夫です」

「っ………」

 私はユイを見つめる。
シキとの戦い以降、ユイはどこかおかしい。
 私は琥珀さんと秋葉さんに、私がユイを見ますといい、二人を外へ出した。
私は、ユイの額を撫でた。
 彼は両親を失ったせいか頭を撫でられるのが好きで、よく膝枕をして彼の頭を撫でていた。
そう、彼の両親は仕事尽くしでユイは甘える機会が少なかった。
 両親が亡くなってから私は精一杯彼が楽に甘えるられるようにしている。

「大丈夫?ユイ?」

 私は、タオルを取ると、彼の汗を拭いた。
 ひどい汗、ほんとにどうしたのよ………。
 シキ、あなた、ユイに何かしたの?
 私は、窓の外を見た。
外は、風が葉を揺らし、涼しい風が部屋に入ってくる。

「こいつが心配か?」

 振り向くと、そこには何時の間にか七夜がいた。
七夜はユイを見下ろしている。

「勝手に出てこないで」

「かまわんだろう……」

「かまうわ、それに私呼んでない」

「ユイに興味が?」

「安心しろ、こいつには興味がない」

 私はため息をつく。

「もう少し言い方ってものがあるでしょ」

「本当のことだが」

 ったく、この人は………。

「俺はお前しか興味がないといっただろう」

 確かに言った。
シキとの戦いの後に。

「七夜、今は消えて。お願い」

「…わかった」

 フッと消える七夜。
 私は、ユイの方へ振り返る。
鎮静剤のお陰か落ち着いた表情で眠るユイだった………。



 夕方になり、再びユイに異変が起きた。
私は、交代で居間で休憩をしていた時だった。
 その異変を伝えたのは翡翠さんと琥珀さんだった。

「キャァァァァァァ!!!」

 二人の悲鳴を聞き、私はコックリと眠くなっていた頭が一気に目を覚ました。
 志貴や秋葉、シエル先輩にアルクェイドも居間の悲鳴でバッと立ち上がっている。 
 私たちはユイのいる部屋に走った。
部屋に入ると、琥珀さんが床にしりもちをついていた。

「翡翠! 琥珀!」

 秋葉は、翡翠さんと琥珀さんによる。
二人とも怯えていた。

「ユイさんが……」

 私はユイを見る。
すると、ユイがベッドから降りて立っていた。
しかし、違っていた。
 ユイの目は、赤くなっており、髪まで赤く変わっていた。
そしてユイは、まっすぐ私を見ていた。
明らかに殺気立っている。
 そう、何年かぶりに紅赤朱ユイになったのだ。
私が彼のち「力」を抑えてから何年か経ち、そのリバウンドが今来たのだ。

「彼………」

「完全に理性を失ってる」

 アルクェイドとシエル先輩は攻撃態勢に入っている。
本能が危険と察したのだろう。

「ウウウウ………」

 シエル先輩は黒鍵をだす。
秋葉も髪の色を変え、ユイを睨む。
しかしその瞳はどこか悲しそうにも見えた。
 ユイは、私達に向かって走り出した。

「ウガァァァァァ!!!」

 私たちを殺す気ね………。
 アルクェイド、先輩、秋葉は攻撃しようとする。
 私は彼女達の前に立った。
何も構えず……。

「エレイスさん!!」

 琥珀さんが叫ぶ。

「エレイス!」

 アルクェイドが飛び出そうとしているが、私は両腕を広げ、それを止めた。

「直撃を食らうつもりですか!?」

「何か策があるのですか?」

 先輩と秋葉も言うが、私は動かなかった。
明らかに私達を殺そうとしている。
 まず私なのは確実ね。
あの時と同じように……。

「殺るなら殺れば、ユイ?」

 その言葉に、志貴達が驚いた。
しかし、ユイを救えるのは私だけだった。
それを知っているのは自分なのだ。
 ユイが私に飛びついてくると、私はバランスを失い、体が倒れた。
背中を強く打ち、苦痛にゆがむ私の顔。

「あぐっ!」

 これにはさすがに黙っていず、志貴、アルクェイド、先輩、秋葉はユイに襲い掛かった。
しかしそれより先に、一つの影がアルクェイドたちを通り過ぎた。

「ぁうっ……っつ!なっ七夜っ!!」

 みんなの動きが止まった。
ユイの後ろに七夜が突然現れたからだ。
 七夜はユイの背後に立つと、彼の目を塞ぐ。

「ウガァァァァ!!」

 七夜はユイを私から引き離す。
するとユイは七夜の腹に肘内を喰らわせた。

「ぐっ…!」

 思わず手を離す七夜。
七夜も驚いている。
 普段より倍近い攻撃だったんだろう。

「何なんだヤツはっ……!」

「後で話す…」

 私はそれしか言えなかった。

「今は彼を何とかするほうが先決です!!」

 秋葉は、「髪」を伸ばして、ユイの両手を拘束した。
さっき以上に、私に殺意を向けるユイ。

「そのまま押さえといてよ妹!」

「わかってますっ」

 私は再び立ち上がると、再びみんなの前に立った。
みんなも少しずつ近付いている。
 私は、再び両手を広げアルクェイドたちを塞ぐ。

「皆お願い、ここは一人にして……」

「エレイスさん!?何を言って……」

「お願い…」

 先輩に必死でお願いする。
すると、その誠意が伝わったのか先輩は黒鍵をしまった。

「アルクェイド、ここは彼女に任せよう」

「でも志貴…」

「はやく」

「うん、分かった…」

 アルクェイドと先輩、そして志貴は、ドアの外へ出る。
しかし、秋葉と七夜はまだいた。

「七夜、貴方も…」

「…わかっているな」

「わかっている」

 そう、昨日の夜中の約束。
それを思い出すと、七夜はフッと消えた。

「さあ、秋葉、あなたも。「髪」を解いても大丈夫だから」

 彼女は、黙ったまま「髪」を解き、離れていく。

「あとでね」

「…必ずよ」

 再び会うと約束すると、ドアが閉められた。
とうとうこの部屋には私とユイだけになった。
 ユイは、私を威嚇しつつ、じっと見つめていた。
そして、ゆっくりと私に近付いてきた。

「様子なんてうかがっていたら、逃げられるわよ。…言ったでしょ?殺るなら殺れって…」

「ぐあぁぁぁぁ!!!!」

 その時だった。
ユイは突然、頭を押さえて、ひざまずいた。

「た……たすけて……あぁぁぁ!!」

『血がぁ……血がほしぃ!!』

 ユイの心の中では、二人のユイが戦っていた。
一人はいつものユイ、もう一人は紅赤朱のユイ。

「やだぁ!!ぐぅぅぅぅ!!」

 ユイは自分の腕を抱くと、爪が食い込むほど握リ始めた。
明らかに、このままだと精神崩壊を起こしかねない。
 早く何とかしなければ……。

「くっ…ユイ!!」

 私はしゃがんで、ユイを抱きしめた。

「大丈夫、必ず戻してあげるから。今は……私の血を吸いなよ」

「ダ……メ……、戻れなく……な…る……アァァァアアッァァァ!!」

 ユイは私を押し倒すと、首に目掛けて顔を下ろした。
 ユイなら私の血はいくらでも上げれる。
ユイが助かるなら……

「吸い……たくない……やだ…」

 何という精神力だろうか、ユイは再び精神を取り戻した。
昔のユイならここまで精神力は無かった。

「なら、貴方自身も知らないことを教えてあげる…」

 私は再びユイを抱きしめる。
もうこんな思いをさせたくない。

「貴方に力を与えるときに印を入れたの。今はもう見えないけどね…。でも私は見える。私の力を抵抗なく貴方の体に入れるための物」

 ゆっくりと私は、『印』のとこへ手を動かす。

「ここ最近のことで力が弱くなっているは知ってた。だから、今ここで…」

 『印』の上に手をおくと、私は手に神経を集中させる。
すると、手に薄い光が出る。

「今度はすこし強めにね…受け取りなさい!!」

 私は何度目かの「不死の躰」の力を彼に与える。
すると、彼の髪の色は徐々に元の色に戻り、目も元の青みがかった瞳に戻った。
でもさすがに、今回も辛い。

「っはあ、はあ…」

「ス……テ……ア………?」

「今回は……っあ、久々に辛かったかな…」

「ありがとう………好きな…人を………傷つけなく……て………」

 ユイは、私の上に倒れこみ、気を失った。

「こ…っちには無限に力が……あるからね……」

 私は、ユイを頭を打たないようにうつぶせから、仰向けに寝かせた。

「待ってて、すぐ、志貴たちを…呼んでくるから」

「終ったか?」

 振り返ると、再び七夜がそこにいた。
七夜にしてはめずらしく、私を心配していた。
 いや、心配してないのかな?

「うん……終ったよ……。とにかく彼を早く……」

 私は立ちがろうとしたが、力が入らないため、倒れそうになった。
しかし、七夜が支えてくれ、倒れなくてすんだ。

「…気をつけろ」

 ドアが開き、志貴達が入ってきた。
七夜が知らせたのか。

「遠野、ユイはお前が運べ、俺はこいつを運ぶ。……いいな」

「わかった……」

 志貴は、ユイを持ち上げると、新しい部屋に移った。
翡翠はあらかじめ用意してたようで、ダブルベッドにシーツが敷かれてあった。
 志貴は、ユイをゆっくりと寝かすと、七夜は、私をユイの隣に寝かした。
そして、私たちは眠った。
 その時、なぜか分からないけど……心の中ですごく「笑って」いた…………狂ったように………。




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