9/友人
7day/October 26(Sun.)
シャーロック&ルイ合作
この日も、空は秋の空だった。
そよ風が肌をさわり、心地よい。
でも少しだけ冷えるな…、冬の訪れが近いのも感じ取れる。
今日は朝から騒ぎが起きず、久々に静かだった。
ユイも、もう昼なのにずっと寝ている。
私は、窓の外を眺める。
ベッドの端に座り、秋の空を見つめる。
「いけない……」
私は用事を思い出した。
今日は、前から約束していた友人と会う日だった。
早速、仕度をし始める。
部屋を出ると、翡翠さんにあった。
ちょうど掃除をしていたところだった。
「翡翠さん、ユイのこと少しお願いできます?ちょっと今日用事があって」
「わかりました、いってらっしゃいませ」
「あと志貴はどこにいるかな?」
「志貴様なら先ほどご自分の部屋に戻られましたが…」
「ありがとう」
Uターンだ。
私たちが今使わせてもらっている部屋の隣まで行く。
志貴の部屋の前に着くと、私はノックをする。
「はい?」
「私、あけるよ」
「いいぞ〜」
ドアを開けると、志貴は、デスクで本を読んでいた。
結構分厚い本だ。
「志貴、今日、友人に会う日だって覚えている?」
「あっ、しまった!?ごめんごめん、今日だっけ?」
やっぱり忘れていたんだ。
まっ、私もさっきまで忘れていたけど…。
「はやく仕度してね。私は玄関で待っているから」
わかったと志貴が返事をすると、私は玄関へ向かう。
玄関にある、来客用のイスに座り、じっと志貴を待つ。
目を瞑り、じっと待つ。
しばらくすると階段から足音がした。
「おまたせ、いこうか」
「ああ」
玄関を出て、そして門を出る。
目的地は三咲町の市街地にある、とある事務所だ。
今日は日曜日だということも会って人が多い。
あまりこういう人が多いとこは好きじゃないんだけどなぁ。
ようやく、とある事務所についた。
少々古びたビルの中の一室の前に来ると「伽藍の堂」のインターホンを押す。
「は〜い」
ドアが開けられると、そこには20代くらいの眼鏡をかけた青年がいた。
何だかいつみてもユイにも似ている。
「えっと、エレイスさんですよね」
「そうですが…」
「お待ちしていました。どうぞ〜」
中に入ると、そこには和服を着た女性と、高級感あるカッターシャツを着込んだ女性がいた。
「おそかったなエレイス」
和服を着た女性が言う。
「ゴメン、ちょっと手間取って」
私は、志貴を見る。
苦笑いしているがまぁいいか。
「紹介するよ志貴、和服を着た女性、彼女は両儀式」
「よろしく……」
相変わらずそっけないな式は。
「眼鏡をかけた青年、彼は黒橙幹也」
「始めまして」
「奥のデスクに座っている眼鏡をかけた人は蒼崎橙子」
「よろしくね」
志貴は一歩前に立ち、自己紹介を始めた。
「皆さん始めまして、遠野志貴といいます。よろしく」
私と式たちとの出会いは、橙子さんの「伽藍の堂」に行った時だった。
変わったとこだなと思い、入ってみると橙子さんと式がいた。
式の和服に皮ジャンの姿に驚いたが、よくにあっていた。
「何か気に入ったものがあったかい?」
「あ…はい……」
「橙子」
すると突然、式が橙子さんに話し掛けてきた。
「あいつ、線はあるが点がない、何者だ?」
「こら、初対面の人をにらまない」
扉から出てきたのは黒橙だった。
仲がいいなと思ったのが第一印象だった。
「ふむ、君は何か特別な力があるわね?」
す、鋭い……。
この人は何者?
橙子さんは、眼鏡を外すと、性格が変わったのごとく、しゃべり方が変わった。
「そう警戒しなくていい、ただ単に気になっただけだ。よかったら話してくれないか?」
私は、橙子さんに自分が知っていることを話すことにした。
何故か知らないけどこの人には話せれた。
「不死の躰」のことで、ユイ以外に話したのはこれが初めてだった。
否定もせずにもくもくと聞いてくれる橙子さん。
すべて話し終わると、式も納得してくれた。
それ以来、何度か「伽藍の堂」にも訪れ、橙子さんのオフィスにも訪れた。
彼が「志貴」と名乗ると、橙子さんは驚いた。
「式と同じ名なのね」
すると、橙子さんが何かに気づいたようだ。
デスクから立ち、志貴に近付く。
「ところで志貴君、その眼鏡を見せてくれないかな?」
「えっ、かまわないですが」
志貴は眼鏡を外す。
そして橙子さんに渡すと、橙子さんも眼鏡を外し、志貴の眼鏡をかけた。
眼鏡を外した瞬間、スイッチの切り替わり、喋り方が変わった。
「やはり私の創ったものをもっていったな青子め」
何でこの人は眼鏡を外す外さないで人格がこうも変わるんだろうか。
しかし志貴は、青子というところで何かに感づいた。
「青子・・・蒼崎青子先生を知っているのですか?」
「私の妹だが、んっ?先生?」
「俺がただ先生と言っているだけです。妹さん・・・なんですか」
「ああ、少年、いや志貴、青子がどこにいるか知らないか?」
「わかりません、8年前に会ったきりです」
「そうか、言っておくが青子が『魔法使い』だというのは知っているか?おそらく本人も言っていたと思うが・・・?」
志貴はうなずく。
ほぉ、魔法使いはほんとにいるのかと私は思った。
「まぁ、かくゆう私は『魔術師』だがね」
これには驚いた。
初耳だからだ。
しかし、式が・・・
「妹に取られたんだろう?魔法追懐と印みたいなもの」
あっ、橙子さんのめが鋭くなった。
しかし、式はぜんぜん動じてない。
もう慣れ照るのかなこういうのに。
「...式、目を見えなくして欲しいか?」
怖い……。
この人を怒らすととんでもないことになると私は思った。
「遠慮しておく」
ふぅ〜と息を吐き、気を取り直す橙子さん。
「それはさておき、あいつはその中でも稀代の破壊魔とも言われている。真祖の姫君なら知っているはずだが…」
「アルクェイドがですか?」
「ああ、知っているのか?」
「知っているの何も僕の知り合い見たいなものですから」
「ほぉ……」
私と志貴は、テーブルにつくと、黒橙が飲み物を出してくれた。
すると突然、橙子さんが思わぬ質問を私たちにした。
「ちなみに聞くが、黒橙の年齢はいくつだと思う?」
「と…橙子さん!?」
意地悪な人だな。
顔が半分にやついているぞ。
まぁ〜私もちょっと考えてみた。
「えっ、んと……」
志貴は迷っている。
「私たちの歳から20までの間か?」
こういう場合はストレートの方がいい。
黒橙もなんだかホッとしている。
「おっ、よかったな、年相応に見られているぞ」
「もう、やめてくださいよ橙子さん。いくら童顔だからって毎回年下に見られるわけじゃないんですから」
「すまんな、ついつい……な」
なるほど、大変だな。
いつもこういう風に虐めるのも面白そうだな。
ふむ、参考になった。
とそのとき、インターホンがなった。
「は〜い」
黒橙がインターホン用の受話器をとる。
「はい、いますよ。すこしお待ちください」
黒橙は、ドアを開ける。
そこにはユイがいた。
すこし顔色の具合が悪いが、元気だった。
「やぁ、伝言どおりにきたよ」
私は、屋敷を出る前に、ユイに伝言を残したのだ。
起きたらここに来いと。
「お前の友達か」
「うん、名はユイ・シャーロック、私の一番の友人よ」
「始めまして皆さん」
「………」
式は再び黙り込む。
何かおかしいと感じたのだろう。
しかし私はあえてそれを聞かなかった。
「お前、血のにおいが濃いな……」
「えっ?」
「こら、式っ。あ〜ユイ君、気にしないでくれ」
「大丈夫ですよ、気にしてませんから…」
式も彼の持つ「血」の濃さに気づいたのだ。
やはり式は只者じゃない。
私はそう思った。
空が暗くなり始め、私たちは屋敷へ戻ることにした。
あまり長居すると、どっかのお嬢様の雷が落ちるからだ。
分かれる直前、志貴は、式達を屋敷に誘った。
式は戸惑いもなくオーケーし、来る日を明日にした。
伽藍の洞を出ると、今日の夜は一段と寒かった。
コートを着ていたユイは、私の寒がっていることに気づき、コートを貸してくれた。
彼のぬくもりが伝わる。
暖かい、本当に暖かい……。
ユイは何時でもやさしい。
それを知っているのは私だけかな………。
そんなことないっか。