The First Chapter/「Feder ignite of magic」
5 Yars ago/November
シャーロック作


埋葬機関の予備員であるフェーダー・・・
この話は、彼女が埋葬機関に所属するまでの話である。
そう・・・・・・・・・事の発端は志貴達と会う5年前のあの事件・・・・・・・・・・・・・・・。



5Years ago



 この日は清清しい日だった。
雲ひとつない青空、その中を気持ちよく飛んでいる小鳥。
 ドイツの外れにある美しい山々が見られるこの村。
 私の名は「クリス」。
一見アメリカ人のような名前だが私は気に入っていた。
 今日も両親が働いている洋服屋の手伝いをするために出かける準備をしていた。
 私はふと、窓の外の青空を見た。
心地よい風が部屋の中に入り、カーテンを揺らす。

「今日の夕方は雨か・・・・・・」

 そう、私は天気を当てることができるのだ。
そしてそれはいつも的中する。
理由はわからないが、いつも 
両親はクリスのおかげで洗濯物などが突然の雨に濡れる事などなかった。
この時、クリス自身は知らなかった。
自分にその「能力」があることを・・・・・・。



 私はお気に入りの折り畳み傘をバッグに入れ、必要なものを持つと出発準備ができた。
バッグを持ち、少し速足で家を出ると、思いっきり背伸びをした。

「うん、気持ち良い天気。でも雨になるんだよなぁ?」
 私はドアに鍵をし、自転車を家の倉庫から出すと、それに乗って父と母がいる洋服屋へと一直線に向かった。

「さぁ、急がないと…」

私は少し自転車を跳ばし、両親がいる洋服屋に向かった。
街に入ると、何が違った……街にいつもの活気がないのだ。
少し速度を落とし、街を眺めながら自転車を進ませる。
と、交差点に差し掛かったその時、私の目の前に突然人が現れた。

「危なっ…」

 私はとっさに私はブレーキをかけ、ハンドルをきった。
しかし後輪がスリップし、自転車は勢い良く倒れ、私は地面に叩きつけられた。

「いたたた…」

「だ、大丈夫ですかっ?」

その人は私に寄り、私を抱き起こした。
青い髪で眼鏡をかけた優しそうなお姉さんだった。

「大丈夫ですか? すいません、私の不注意で…」

「大丈夫です…ちょっと擦り剥いただけですから…」

私はゆっくりと立ち上がり、自転車を起こそうとした。
お姉さんも自転車を起こすのを手伝ってくれ、彼女は私の服に付いた誇りを払ってくれた。

「すいません、少しボォーとしていて……」

「大丈夫ですよ…あなた……この辺じゃ見ない顔ですね…?」

「何言ってるんですか?忘れましたか私のこと?」

その時、私の頭の中に何かが流れた。
そうだ、たしかこの人…

「ごめんなさいシエルさん…」

「いえ、気にしていませんよクリスさん。何だか大慌てでどこかに向かっていたようですがどこに行くのですか?」

「今日、雨が夕方から振るんです。だからこの傘を父さんと母さんに渡そうと」

 シエルさんは気を付けてくださいと言って絆創膏を私にくれた。
公園に向かい、水で消毒したあと絆創膏を張ってくれた。

「これでよし、もう大丈夫ですよ」

「ありがとうございますシエルさん、じゃ、私は父さん達のところへ向かいます」

「はい、気を付けてくださいね。では」

 そう言ってシエルさんと私は別れた。
この時、私には気付かなかった……シエルさんの秘密、この街の惨劇………そして私に待ち受ける悲劇を……。



 今回の任務はこの街に忍び込んでいる吸血鬼の調査、ナルバレック機関長の命でここへ来た。
 しかしこの街へ来たのはもう一つある。
 一人の少女の調査である。そう、今あったクリスという少女だ。
彼女は、誰も気付いていないが魔術が自然に使えるのだ。
 通常、魔力というのは先祖から受け継がれるもので、それを示したのが魔術回路なのだ。
彼女はいわば突然変異の魔力保持者なのだ。
今回は魔術協会からの依頼で私にその任務が与えられたのだ。

「彼女が……クリスですか…」

私は彼女が向かった街に向かい始める。
まもなく時間は昼になる。
「どこかでお昼をとらなければなりませんね」




「父ぉ〜さん、母ぁ〜さん」

 カランコロンと鈴が鳴りながらドアを開くと、ちょうど二人は服の仕立てをしていた。

「あらクリス、どうしたんだい?」

「雨が夕方から降るから傘を持ってきたの。はいこれ」
 母さんはありがとうと言い、傘を受け取り、レジの隣に置いた。

「もうすぐお昼だね、私たちはまだ離れられないからご飯を食べておいで」

「はーい」

 私は店を出ると、お気に入りの見せに向かうことにした。
喫茶「フリーダム」という私がお気に入りの店はイタリア料理を中心に何でもできるこの街では一番の人気の店である。
ここのボロネーゼは私の大のお気に入りだ。

「いらっしゃーい」

 顔馴染みのマスターがいつもの笑顔で出迎えてくれる。
するとそこにはシエルさんがいた。

「あらクリスさん、あなたも食事ですか?」

「はい、お隣、よろしいですか?」

「ええどうぞ」

 隣に座ると、シエルさんはここのマスターの得意料理であるビーフカレーを食べていた。
マスターはいつものだねと言い、私はお願いしますとお願いする。

「あなたもここへは良く来るのですか?」

「はい、マスターとは幼い頃からの知り合いで」

「そうなんですか、私、つい最近までこの店のこと知らなくて、友人に聞いたんですよ。そうしたらここのカレーがすごくおいしくて」

 何気ない会話をしているとマスター特製のボロネーゼができ、私はソレを食べ始めた。




 食事が終わり、店に戻ると、両親から早く帰りなさいと言われ、私はシエルさんと帰ることにした。
家の近くまで戻ると、私はシエルさんを家に招くことにした。
シエルさんは始め、いいですよと断ったが、少し強引に誘ったらOKしてくれた。
 家の中に誘い、私はシエルさんにコーヒーを入れた。

「シエルさん、今日は街にはどんな用で?」

「ええ、少し街へ出てぶらぶらしようと思いまして」

 シエルさんは天気が良いから街へ出て散歩したのだと言った。
 しばらく話していると、予想通り、雨が降り出してきた。
 雷が鳴り、大粒の雨が地面に叩きつける。

「ホントに雨が降り出してきましたね」

「ええ、父さんと母さんに傘を渡してきて良かったですよ」

「凄いですね、雨を当てることが出来るなんて」

「いえ、ただどの風が流れれば雨が降るかって…なんとなく分かるんです」

「なるほど、じゃあお父さんとお母さんは大助かりですね」

 いろいろと話しているうちに夕食の時間になり、父さんと母さんが帰ってきた。
シエルさんは帰ってきたことを確認すると、お邪魔しましたといい、帰ろうとしたが母さんがそれを止め、一緒に食事はどうかと誘った。
 シエルさんは始めは断ったが、母さんが大丈夫だからと言うと、シエルさんはその好意に甘えた。
父さんが部屋に行ってなさいと言うと、私はシエルさんと一緒に階段を上がり、私の部屋に案内した。
部屋に入ると、私はシエルさんに自慢のぬいぐるみを見せた。
父さんが誕生日のときに作ってくれた猫のぬいぐるみだ。
名は「ブリュンスタッド」、父さんが付けてくれた名だ。
父さんが外国へ出掛けたとき、吸血鬼のお姫さまの話をしてくれた。
最後の方は暗い話だったけど、私はその話が大好きになった。
私はそのお姫さまの名を聞いて、この猫のぬいぐるみに付けてもらったのだ。

「可愛いですね〜、このフニフニ感が気持ちいいです」

「でしょシエルさん、私もいつもこれを抱いて寝ているんです」

 シエルさんはブリュンスッドを頬でスリスリし、感触を確かめている。
ふとシエルさんは私を見ると、おいでと言われ、私はシエルさんの傍によった。
すると私をギュッと抱き寄せ、ブリュンスタッドを私の頬や首筋にあて、なでなでし始めた。

「し、シエルさんっ……んあぁ〜…」

「どうですか? 気持ち良いでしょう?」

「は、はいぃ〜、気持ち良いですぅ〜〜〜…ああ〜〜〜………」

 しばらくすると、下から母さんの声が聞こえた。
ご飯が出来たのだ。
 私達はすぐに下へ行くと、そこには豪華な食べ物がいっぱいあった。
 シーザーズサラダ、コーンスープ、フランスパン、ステーキに食後のフルーツなどたくさんあった。
こんな短時間で用意できる母さんは凄い。

「さあさあシエルさん、こちらの席にお座りください」

「じゃ、お言葉に甘えて」

 シエルさんは私の隣に席に座ると、私もちょこんと自分の席に座った。
父さんと母さんも席に座ると食事が始まった。
 私はサラダから食べていく。
 このクルトンとペッパー、そしてドレッシングのハーモニーがたまらない。
 シエルさんも凄く美味しそうに食べている。

「美味しいですか? シエルさん」

「ええ、お母さんの手料理、凄く美味しいですよ。羨ましいですね〜こんなに美味しい物を食べられて」

「えへへ〜〜」

 食事が終わり、ソファーで会話をしているとお母さんがデザートを運んできてくれ、それを食べると時間はもう10時になっていた。
 シエルさんはお母さんとお父さんに挨拶し、シエルさんは家へと帰った。

「楽しかった?」

 お母さんは私の隣の座り、頭を撫でながら問い掛けてきた。
私はよくお母さんから頭を撫でられる。
撫でられているうちにウトウトと眠気に襲われ、私はそのまま眠ってしまった……………。




 翌朝、町の方で事件があった。
人が殺されたのだ。
ただ、警察も首を傾げるほど奇妙な死に方だった。
死体からは血がなくなっており、争った跡はどこにもなかった。
警察も捜査を始め、父さんからはしばらく店は手伝わなくていいと言われた。
 私は学校が終わると、店には向かわずに私は真っすぐ家に帰った。
しかしその日から私の周りに異常を感じはじめた。事件が起きるたびに私の背筋に悪寒が走るのだ。
 風が騒つき、天気の変化とは違う、何かを感じていた。
無論、幼かった私に危険が迫っているとは予測できない。
 しかし吸血鬼事件が続発する中、嬉しいこともあった。
シエルさんが私の世話をしてくれるようになったのだ。
父さんと母さんが帰る前まで私に付き添ってくれ、シエルさんから色々な事を教えてもらったり遊んだりした。
今ではもう私のお姉さんで、退屈な時間はなかった。




 この子に何かあるのは間違いない。
ここ数週間の調査でそれは間違いなかった。
 クリスの体には間違いなく魔力が存在する。
そして殺人事件……、首には歯の跡、そして血液がなくなっていた。
目当てはクリスだろう……知らず知らずのうちに魔力を察知し、ここに来たのだ。
一緒にいれば確実にその吸血鬼に遭う可能性は高い……。
両親が帰宅すると、私はお休みなさいと言い、家を後にする。
クリスもバイバーイと言い、私は手を振り、彼女と別れる。

「さて、私も仕事はじめましょうかね?」

アパートに戻るとわがままな精霊が出迎えてくれる。
あっ、わがままは言いすぎましたね。

「お帰りなさいマスター」

「ただいまセブン、今日も仕事に行きますよ」

「はーいマスター」

 法衣に着替え、夜の街に出る。
吸血鬼が現れたせいか街は静まり返っている。
私は街を隅々まで捜索し、吸血鬼を探す。
しかし知恵があるのか今夜は見つからなかった。
おそらく何かに感付き、姿を隠しているのだろう……。
 夜が明け、私は家に戻り、軽く睡眠し、クリスの家へと向かった。
 今日は休日で、クリスは家にいるからだ。

「マスター、今日もいつもくらいですか?」

「そうですねぇ、たぶん同じくらいですよ。ではいってきますねセブン」

 今日は黒のジーンズに白のタートルネックを来て外に出る。
家に着き、インターホンを押すと、お母さんが出てきた。

「あらシエルさん、いつもいつもすまないわねぇ。今日も仕事で……。ささっ、なかに入って入って。今、暖かい飲み物を用意してあげるから」

「ありがとうございますお母さん。今日もいつもと?」

「今日はちょっと遅くなるの、だから今日は家に泊まっていいわ」

「いいのですか?私、部外者ですのに……」

「いいのよ、気にしないでシエルさん。あなたは私たちの家族なんだから」

「ど、どうも、何だかちょっと恥ずかしいです」

 私は…………この家族を見て、自分と重ねてしまった。
私がまだ『エレイシア』の時の事を………。
しばらくすると、クリスがまだ眠たそうな顔をしながら二階の自室から下りてきた。

「おはようございますシエルさん……ふぁ〜〜」

「お早ようございますクリスさん。おやおや、まだ寝たりませんか?」

「えへ、ちょっと眠いです……ふぁ〜…………」

 クリスは私の隣に座り、おもいっきり背伸びをし、無理やり体を起こした。
お母さんがクリスに朝食を出すと、それを食べ始めた。
お母さんは私にも出してくれ、私はそれをいただくことにした。
しばらくすると、二階の部屋からお父さんも下り、仕事の出発準備を始めた。

「ねえねえ、シエルさんの家はどこにあるの?」

「私ですか?あっ、そういえば話したことないですねぇ。じゃあ今日は私の家で泊まりますか?」

「えっ?いいのシエルさん?」

「はい、せっかくですからぜひ。お母さん、よろしいでしょうか?」

「本当にいいんですか?何だかシエルさんばかりにご迷惑をかけて……」

「気になさらないでください。私は大丈夫ですから」

 お母さんに許可をもらうと、私はセブンをどうしようか考えた。
普段、セブンは特定の人物以外はその姿を目にする事ができない。
しかしクリスは何事も素直に受け入れる子で、セブンとは気が合うかも知れない。
 帰ったらセブンに手を加えないと……。

 朝食が終わり、クリスのお父さんとお母さんは仕事に出発すると、私たちも荷物を揃え、出発する。
テクテクと道を歩いて行き、私の家に着く。

「少し待っていてくださいね」

「はーい♪」

 鍵を開け、中に入るとセブンがお帰りなさいと言う。

「セブン、今からお客さんが来ます。それであなたにも会せたいのです」

「わ、私もですかっ! で、でもこの状態で会うなんて………」

「大丈夫ですから、こうしますからね」

 私はセブンにちょっと手を加える。

無かった手を出し、お尻の尻尾は髪の毛と一本化し、さらに耳も普通の耳にした。
この姿を見て、セブンはうわぁ〜〜と感激した。

「これなら大丈夫ですよ。気にいりましたか?」

「はいマスター♪」

 ルンルンとはしゃぎ、自分の姿をみるセブン。
私は玄関に行き、クリスに中に招きいれた。

「お邪魔しますシエルさん」

「どうぞクリスさん、ゆっくりしてくださいね。あっ、彼女はセブンと言います」

「初めましてクリスさん♪」

 ペコリとお辞儀し、挨拶をするセブン。
クリスさんもお辞儀し、始めましてと言う。
 その間に私は紅茶を入れる。
 この紅茶には特別な葉がブレンドされており、吸血鬼が嫌うハーブ、ちょっとした魔力を測る葉などがブレンドされている。
魔力を持つ人間以外が飲むと少々苦く感じるのだ。
それがある一定の能力ならば逆においしく感じるのだ。

「はい、お茶ですよ」

「あっ、ありがとうございますシエルさん」

ゆっくりと飲むクリス、見たところ変わったとこは無いようだ。

「おいしー、これどんなお茶ですか?」

「オリジナルですよ。その日によって味が変わりますから味は保障しませんけどね」

「はい、キャロット味のクッキーです。甘くておいしいですよ〜〜」

 セブンがお気に入りのキャロットクッキーをクリスに差し出すと、一枚取り、それを食べる。
するとおいしいと言い、お茶とよく合うとも言った。 この様子だと、彼女には確実に魔力を持っており、それに訓練も無しにかなり高い能力を持っている。
魔術教会の目にも入らず、この町で普通に暮らし、親孝行な子供をどうやって説得させるか………。
 感情移入しすぎだろうか……どうしてもクリスが自分、つまりエレイシアにかぶってしまうのだ。
たった数週間の調査でこんな風に思ってしまうなんて………。
 しかし確実に実行せねばこの子の将来が危ないのは見えている。
 今回の調査、後味が悪いですね……………。



 日が落ち始め、シエルさんは夕食の準備を始めた。
あれから私たちは近くの公園などで遊んだ。
アスレチックや駆けっこ、セブンちゃんが鬼なってかくれんぼをしたり、すごく楽しかった。
 シエルさんは、さんと呼ばなくて良いですよと言い、私は

「じゃあお姉さんでいい?」

 と言ってみた。
するとシエルさんは快く良いですよと言ってくれた。
部屋に戻ってくると遊び疲れたのか私はセブンちゃんと寝てしまった。
気が付くともう夕方で、お姉さんが夕食は何が良いかと聞いてきた。

「じゃあお姉さんの得意料理でいい?」

「わかりました、じゃあとっておきのカレーを作りましょう」

 そして私は持ってきた筆記用具と紙を出し、絵を書き始めた。
いろいろな絵を書くのが私の趣味で、時間さえあれば書いている。

「上手ですねクリスさん」

「まだまだだよセブンちゃん、この絵は70点くらいかな」

「えーそうですか?私は100点だと思いますが………」

 今書いているのは草原、いつかこんな草原に行ってみたいと思っている。
こんなとこがあるなら思いっきり走り回りたい。
しばらくしてその絵が完成し、セブンちゃんにあげた。
セブンちゃんはキャッキャと笑い、ありがとーと喜びながら受け取ってくれた。 食事ができ、みんなと一所に食べ、楽しい時間が過ぎて行く。
食事が終わり、寝る準備を始めたとき、私はうっかり忘れ物に気付いた。
ブリュンスタッドを忘れたのだ。
あれがないと私は眠れない。

「シエルお姉さん、ちょっとだけ家に戻りたいんですけど………」

「どうしたんですかこんな時間に?」

「ブリュンスタッドを忘れたの。あれが無いと眠れないの。近くだし、取りに行っていいですか?」

「うーん、仕方ないですねぇ。すぐに帰ってくるんですよクリスさん」

「はーいシエルお姉さん」

 上着を着て、トコトコと出掛けるクリス。
やっぱりただの女の子と同じようにぬいぐるみがあった方が眠りやすいのだろう。
さて、片付けが終わったら寝る準備を……………
その時、開いてる窓から微量だが血の匂いがした。
私は手を止め、窓に駆け寄った。
街の方を見ると異常な程静まり返っていた。

「セブンっ、行きますよ!」

 法衣を着て家を飛び出す。
 うかつだった。
ここまで自分の存在を消し、なおかつ吸血行動をしている奴は今まで見たことがない。
 街へ全速で行ってみると、時すでに遅かった。
街は力を増した死徒は、町中の人間を殺した後だった。
近くの家に入り、中を見るとどこの家も生きている者はいなかった。

「うかつでした………」
 
 私はふとクリスの事を思い出した。
 私は急いでクリスの家に向かおうとした。
その時、行く手を吸血鬼と化した人々が阻んだ。

「どうやら、さらに急がなければいけませんね」

 私は両手に黒鍵をだし、生きる屍に向け投げる。
 黒鍵が刺さり、死体達が怯んだ隙に一気に跳躍し、家の壁を蹴り、クリスの家へと急いだ。
 家に着くと、中からは血の匂いがした。
中に入ると、まず目に入ったのがキッチンとリビングに倒れていたクリスのお父さんとお母さんだった。
 十字架を切り、安らかに眠れと心の中で言い、クリスの捜索を再開した。
 二階に上がり、クリスの部屋に入ると、まだぬいぐるみのプリュンスタッドがあった。
つまり、まだここへは着かず、私の家からこの家の短い間にクリスの身に何かがあったことになる。
 家を出ると、そこにはまだ襲われていない人が立っていた。
 いや……襲った人だ…………。

「あなたでしたか、今回の主犯は……」

「機関の犬か……。今回は俺の勝ちだな、お前の気付かぬ間に一つの村を全滅できた」

「だからなんです? これが貴方の目的ではないでしょ?」

「ご名答、目的は………」

 吸血鬼はいきなり真正面に接近し、鳩尾に拳を加えようとした。
 しかし私は黒鍵を出し、それを塞ぐ。
しかし威力が強すぎ、数メートル後ろに飛ばされた。
 バランスを建て直し、着地すると吸血鬼に向って6本の黒鍵を投げた。

「ゼロ!アン!トゥー!トロワ!セット!ヌフ!」

 吸血鬼は腕を出し、黒鍵をすべて弾くとその場から天井高く跳躍し、森の奥へと入った。
シエルもその後を追うと、古びた小屋があった。
 黒鍵を構え、慎重にその小屋を目指して歩を進める。
ゆっくりと窓から中を覗くと見覚えのある足が見えた。

「クリス!」

 私はドアを開け、中に入るとクリスに駆け寄る。
 どこにも異常はない。
 クリスをそっと寝かすと、黒鍵を出し、ドアの先に向って投げる。
 その先にはさっきの吸血鬼がいるのだ。
 しかし又も腕一本で黒鍵が弾かれた。

「無駄だ、そいつの力を頂いたからな……」

「なっ!?」

 私はクリスを抱き上げ、体の隅々を見ると、首に歯の髪跡があった。
 しかしまだクリスには息があった。

「すべての血を吸ってはそいつの力が制御しきれなくってな…」

 なるほど、そういうことですか…
 私はこの子の力が強大なことに少し感謝した。
 しかし早くしなくてはクリスの吸血鬼化が進んでしまう。
 私は再びクリスを寝かすと私は黒鍵を出し、一気にその吸血鬼に突っ込んだ。
 吸血鬼は爪で黒鍵を出して受け止めると、そのまま鼻と鼻が付くまで接近し、睨みあった。
 その時、吸血鬼が数メートル吹っ飛び、木にぶつかった。
 私はそれを見て、何が起きたのか一瞬分からなかったが、すぐにそれが分かった。
 振り返ると、そこにはクリスが右手を上げながら立っていた。

「クリスっ……」

「し、シエル………お姉ちゃん………」

「き、貴様っ……」

 吸血鬼は相当なダメージを受けたのかよろよろと立ち上がった。
 私は黒鍵を投げると今度は避けることが出来ず、何本も体に刺さった。

「ガァァアァァァア!!!」

 吸血鬼は黒鍵を抜きすべての力を振り絞って私に向って襲い掛かってきた。
 黒鍵を出して応戦しようとした時、再び何かが私の横を通り過ぎ、吸血鬼を攻撃した。
 今度は吸血鬼の体に傷がつき、夥しい出血が起きた。

「これが………クリスの力………」

「お姉ちゃん……離れて…………」

 クリスは再び腕を降り、何かを起こした。
 そう、それは「風」だった。
 それを「かまいたち」にし、次々と吸血鬼にダメージを与えてゆく。
 私はこの気を逃さず、法衣を脱ぎ、それを第七聖典にすると一気にその吸血鬼に接近する。

「喰らいなさい!!! カルヴァリオ・デスティオォー!!!!!」

 転生批判の鉄槌が吸血鬼に見事に命中し、吸血鬼は叫ぶ間もなく塵と化した。
 第七聖典を再び法衣に戻すと、私はクリスに寄った。
 クリスは慣れていない魔力の放出で力尽き、膝をついて息を荒くしていた。

「大丈夫ですかクリスさん?」

「お、姉ちゃん………教会の人だったんだ…………かっこい、いね………」

 気を失い私に倒れ掛かり、そっと受け止めると膝に寝かせた。

「クリス……ごめんなさい、貴方はこれから私の所属するところに連れて行くんです………この街は……もうなくなります。
お父さんもお母さんも…………今は天に召されました。だから…………」

 私はそこで言葉が詰まってしまった………。
 おそらくこのことでクリスは尋問されるだろうから………。
 私は心を鬼にし、クリスを抱くと街を抜け、クリスのいた街から去った………。
 クリスは当然これからのことは予想してないだろう………。




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