eye











キバの目線と今まで必死にそらしてきた目線が、思わず重なった。
重なって、またあわててそらす。
ほんの少し開いた唇からは、暑い蒸した空気が流れ込んできて、
気持ち悪くなって戻しそうになったけど、この状況下でそれはマズいと思い下唇をかんだ。
下唇をかんでうつむく。暑いのに髪の毛をおろしていてよかった、そう思った。
目からじわりじわりと熱をもった水は落ちようとする。
ぽつんと一点 茶色い地面を濡らした。
目から涙は流れ、そして額から出た汗も流れ始める。額とこめかみあたりの汗を拭って顔をあげれば、キバと目線がきっちりあった。
キバのきつい目つきが、よりいっそうきつくなる。冷静さを持っている目をしていて、心臓がドグンと波打った。

「なんか、あったわけ?」

俺が何も言えずにうつむくと、キバは小さく細いため息をついた

何もなかったといいたい。それでもキバは見抜いてしまう
そして嘘をついた俺を、嘘をつかれたことを、悲しむのだ。そう思うと頷くことも、首を横にふることも、何も出来ないと感じた。

「何も、言ってくんないの?」

「そういうわけじゃ、ない。」



いっぽ、二歩。そろりそろりと前に出してキバへ近づいたら、キバはすんなりと俺を抱きしめた。
頭が回らなくなる。



俺はいつもキバの感情を読み取ってあげられない。楽しませることも喜ばせることも安心させることも出来ず、そして傷つけることしか出来ない。俺がそのことを歯がゆく思えば、キバは一緒にいればそれでいい、と言う。さらに俺は歯がゆくなり、心臓がドグンと波を打ち、またそこはズキズキと俺を追い詰めていく。



「なにが、あったんだよ」


キバの口調が少し悲しそうに聞こえる。俺を抱きしめたまま、耳元でつぶやく。夏に現れるセミの、うめき声のようでもあった


まぶたを閉じ、心臓を落ち着かせる。(脳みそは混乱したままだけど)
まぶたを閉じたままのひとみに、少し影が落ちた気がした。
目を開ければ、木の上にいるひとの姿を、ひとみは水晶体をとおり網膜に映した。
脳みその中で敵だと確定されたそれは、こちらに向かってクナイを投げつける。狙いはキバの左胸、心臓だ。


キバは気づいているだろう。でももしも、気づいていなかったら?とっさに感じた。ゼロコンマ一秒と短いなかで、さっきまで動こうとしなかった脳みそは、光速の速さに近くはたらく。





瞬間、俺の体はキバの上にのしかかった。










心臓あたりから、ぼたりと、熱くながれた。










「うそだろ・・・?シカマル。」









「うそじゃないよ」

























今まで、俺が笑えば君のひとみは俺を映した。

いま、君のひとみをうつすものは、なにもない

キミはいま、なにを映そうとしているのですか、

なにをかんじ、なにをおもい、だれをおもい、だれとすごしたいのですか。

俺には、きみといたじかんがあるから、それでまんぞくだ。

さいごまで、なかないで。

うそじゃない。ほんとじゃない。それでもげんじつ。

俺の死を、きちりとうけとって。

そして、できるならば、おれを、
わすれて。きみのために

 

 

03.07.21 shima

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