I f . . . ( 恋市ver. )



もしも、市丸さんが高所恐怖症だったら。



「いやぁー!」


俺の腕にしがみついてギャースカ喚く。黙れと言えば死んじゃぇ、そして黙れば「お ろ し て !」。 5分ほど前から引っ張られ続けた右腕はちぎれそうな勢い。 ちぎれますよ、と言えば、千切れてしまえばしがみつくものがなくなって困るだろう市丸さんは、 ちぎれて死んでしまえ、としか言わない。自分の左腕を俺の右腕にからめて、自分の右手と俺の右手をつなぐ。 はっきりいえば俺の右腕は動けない状態にある。


「恋次のバカ、死んでしまえ。なんでボクをこんなとこに連れて来るわけ、信じられへん」
「20分前にここに来たいって言ったの市丸さんですよね。」
「知るか、あほ。そんなことボク言わへんもん」


そんなこと言われても確かに言ったんだこの人は。 20分程前に「恋次、ボク行きたいとこあるねんけど」そう言った。 人が仕事で疲れて副隊長用の広めの部屋で布団に包まって、うとうとし始めた途端に、 部屋の戸を遠慮なしにバンバン叩いて(実際に俺の部屋の戸は少し傷ができている) 返事もしてないのに無遠慮に戸をあけて、「恋次、今からどっかの煙突のてっぺん登るで」
それなのに大体真ん中まで登ったとたんに「いやぁー!」という悲鳴。 登ろうと選んだ煙突は太く、大人二人が横に並べるほどの幅があったものの、 腕にしがみつかれては不安定なバランスで細い鉄のはしごからは足を思わず滑らせそうになる。


「市丸さん、そんなに腕にがっちりしがみつかれると」
「感じちゃう?」
「死んでください。腕はなしてください」
「や、うそやって!やから腕は離さへんで。で、なに?」
「しがみつかれると、落ちそうにな」


落ちそうになる、の、るを言えずに俺たちは落ちた。


「い、いた!」
「それより重い・・・」
「あ、恋次が守ってくれたんやー」
「どいてください」
「感じちゃう?」
「もう一回煙突登りますか」
「うそやって!」
「顔笑ってますよ」
「あ、恋次!ボクらすごいで!」
「人の話聞けよ」
「落ちる前からずっと手つないだまんまやで」


そう言われると妙に恥ずかしくなって思いきり手を振り払ったら、市丸さんはいやらしくニヘーと笑った




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Ifシリーズ、ほんとはテニスも作るつもりだった。
前サイトのアンケートお礼で、そろそろ時効でしょうと言うことで
03.09.14 しま

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