『星空の見えない夜 左介×千代』by木登りブタさん




「キス したんだ。」
才蔵の言葉に、驚き固まっちまった俺をよそ目に、お姫が乱入してきた。
才蔵を平手が襲う。
激しい言葉の応酬。
俺は、明らかに部外者だった。
「何故、こだわりになる…っ」
才蔵の問いかけに、一瞬の沈黙。そのくせ何の迷いもなくお姫の口から出た言葉。
「好きだからよ……っ!」
ここで、完全に事態が変わった。
俺はこれ以上、その部屋の中にいることが出来なかった。
ただただ、思いも寄らない展開の連続で、なにを考えたら良いのか分からなかった。
しかも、やっとこさあの緊迫した部屋を出ると、お殿さんが聞き耳を立ててやがった。
心臓が止まるかと思ったてぇのはあのことだ。
唇に人差し指を当て、静かにしろという殿の顔は、意外にも微笑んでいた。
そして、今日の外泊だ。
俺も折角のチャンスをつぶすのも野暮だと思って、出てきたが、アイツなにをたくらんでやがるんだろう?

□ □ □

特に目的があるわけでもないがなんとなく、夜の町をぶらつく。
俺は、才蔵とお姫が上手くいったことに、なんだか説明できないわだかまりを感じていた。
恋敵が片付いたんだからいいじゃねぇか、そう思おうとしたが納得いかない。
才蔵のバカの、ずっと一途なところも知っているから報われて良かったと思う気持ちはもちろんある。
俺は、知ってんだ。
千代姉は、そんなこと関係なく才蔵を好きなんだろうし、才蔵とお姫にしても俺達以外に知られたら大問題だろう。
才蔵と、お姫は新たに重荷を背負い込んだ。どう考えたって幸せな恋人同士にはなれないだろう。
それを知る、千代姉も傷つくんだ。その傷をえぐりながらでも千代姉は才蔵を思いつづけるだろう。
そして、俺は、俺が千代姉から才蔵への思いを消すことは出来ないことも知っている。
どうやっても、誰も傷つかずに上手くまとまる方法はないように思える。
だからといって、俺が千代姉からひく気は全くないが…。
「お前も当事者だからな…。」
義兄の声が頭に響いた。
一体、俺ぁどうすりゃ、いいってぇんだ!!
頭をかきむしってため息をつく。
すると、雑踏の中になれた気配を感じた。
一般人を巻き込むわけにはいかね―な。
路地に入ると、そのビルの屋上まで駆け上った。相手もついてきている。
足音も立てず、気配をあらわした人物は望兄だった。

□ □ □

一方的に用件を言った後、望兄は消えた。
敵対しあっている状況で、個人的になにを見せたいというのだろう。
また、新たな考え事が増えちまった。
自分で言うのも腹が立つが、俺はそんなに物事を上手く考えられねぇ。
きっと望兄は敵に弱みを握られてんだ、そんな考えが甘いことは分かってるがそう思わなけりゃ、やってられんねぇ。
考えても考えても、まとまらねぇのに、イライラしてコンクリートに大の字に倒れこんだ。
星でも見れば気分が変わるかと思ったのに、街の明かりが明るすぎてちっともみえやしねぇ。
ちっこいころ、世界は里で全てだと思っていた俺は、夜、星の見えない場所があるなんて考えもしなかった。
あのころは、望兄も才蔵も千代姉も俺も、ずっと変わらずにいられると思ってた。
でも、気が付いてみれば、時に流されてずいぶん、遠くまできちまった気がする。
俺は、なにを守ろうとしているんだろうか?
今更、ガキのころに戻れるわけではねぇし…、なんなんだ、この感じは。
暗闇に飲み込まれまいと、必死に身体で多い隠して守っているつもりだったのに、
実際は、自分が暗闇に引きずり込まれまいと、しがみついていたみたいだ。
どうしても上手く、言葉にならねぇ。
ひたすら、腹の中にいらいらが溜まっていくだけだ。
もう、考えるのも面倒くせ―や、このままここで、寝ちまおうか。
ゆっくり、目を閉じたときだった。
「何の装備もなしに露営するのは、もうしんどいんじゃない?」
あぁ、トリに望兄を追わせてるって言ってたっけ。
「いくら、あんたがバカでも風邪引くわね。」
俺の頭の上で、いつものように静かに笑う千代姉だった。

□ □ □

千代姉のアパートに向かいがてら、どうしてお互いにあんなところにたどり着いたのか話した。
千代姉は、情報収集の合間にロプロスからの連絡で、望兄がどんな場所に出入りしているのかを確かめているといっていた。
いまだにアジトが絞りきれねぇらしい。
俺は、お姫と喧嘩して飛び出してきたところ、ビルの屋上で望兄らしき人影が見えたので上ってきたが逃げられた。
と、我ながら明らかにうそ臭いうそをついた。
千代姉はふーんと言ったきり、深くは追求してこなかった。
ドアを開け、部屋に入る千代姉に続く。
「悪いけど、ろくに食べるものないわよ。あ、後、鍵とチェーンはかけてね。」
俺の居候している、マンションとは比べ物になんねぇくらいこじんまりとした部屋だった。
「千代姉、俺、やっぱり露営する。いくら何でも一つの部屋で…。」
「なに言ってるのよ。それともなに?あんた襲い掛かるつもりなの?」
「なっっ!そんなつもりはねぇけど、その、やっぱり…。」
「なら、問題ないじゃなぁい。ほら、早くあがりなさい。私は疲れたからシャワー浴びて寝るわ。
あがってから毛布出してあげるから、音楽でも聴いていて。」
すたすたと、バスルームと思しき部屋に千代姉が入っちまったせいでなんとなく、身動きが取れない。
本当に、わかってんのかよ?それとも俺は完全に弟なんかなぁ?
「まだ、突っ立ってるの?ちょっと、そこのシャンプーの買いおき、取ってくれない?そう、それよ。」
ひょっこり扉の間から顔を出して、命令する。
濡れた髪や肩にドキッとする。実はわざとやってるのか?
「ふふ、大丈夫よ。左介、あんたが血迷っても私には、敵わないから。」
鼻の頭をチョンっとつつくと、文句を言うひまも与えずに目の前で扉を閉められた。
俺のこと、からかってやがる。確かに、千代姉には敵う気がしない。
かすかに、聞こえてくるシャワーの音と千代姉の鼻歌にまで、からかわれている気がした。

□ □ □

水音まじりに聞こえてくる千代姉の鼻歌は、ちっこいころ歌った歌に似ていた。 
才蔵と俺と、千代姉。
畑からサトイモの葉っぱを取ってきて傘にして歩いた。
あーめあめ降れ降れ、かぁちゃんが〜♪ じゃのめでお迎え嬉しいな♪
じゃのめがなんだかわかんねーけど、歌っちまうくらい嬉しいんだからものすげー乗り物なんだろうと思ってたな。
自信満々で、想像の乗り物のジャノメについて説明してると、一歩下がったところで、千代姉がクスリと笑ってた。
あの頃から俺らの関係は対して変わってねぇな。
ガキの頃よりはいろんなことが分かるようになった、じゃのめは傘で乗り物じゃねぇし、まだまだ俺が知らねぇことがいっぱいあるのも分かってる。
夕方、殿が言ってた言葉が急に、頭ん中に沸いてきやがった。
―世界は決して1人では完結しない―
俺には、その言葉を実感できるほどの人生経験も無ぇし、なんとなく理想っぽく感じた。
さすがにお殿さんのいうことだけあって、現実の泥臭さがねぇな、と斜にみてた。
それとも、ただ俺が知らねぇだけなんかな?現実がそんなに上手くいくことは少ない気がする。
でも、何も知らずに鼻歌を歌っている千代姉のことを考えたとき、よくわかんねぇけど、胸が苦しくなった。
才蔵のことなんて忘れさせて、俺のことだけを考えて俺の為に生きてくれるなら良いのに。
今すぐに俺のことを一番好きになってくれれば、傷つかずにすむかもしれねぇのに…。
考えたところで、弟から脱出できねぇ今の状況じゃ、とても行動には移せねぇけどな。
せいぜい、弟の皮をかぶって少しでも長く一緒にいられるようにすることしかできねぇ。
「飲む?」
壁に凭れて座る俺の頬に、冷たい水のボトルが押し当てられた。
遅れて、湯気と石鹸の混じったような匂い。
それと、なんかよくわかんねぇけど、甘ったるい匂い。
振り返ってみると、いつもの格好とさして変わらないようなショートパンツにスウェット姿の千代姉がいた。
髪の毛は濡れたままだ。
タオルでガシガシ拭きながら、部屋に入ってくる。
いくらなんでもここまで無防備だと、対応に困っちまう。

□ □ □

どこ、見てりゃいいかわかんねぇ。
手持ち無沙汰を解消するべく、水のボトルを転がしてた。
「飲まないなら頂戴?私が飲むから。」
しゃがみこんで俺の手の中にあるボトルを奪う。
トレーなの襟元から、ちらりと胸元が見えた。
下着、つけてねぇんだ。
思わず、ごくりと生唾を飲む。
千代姉の口角が上がったのが見えた。
まだ、からかわれてるんだ、俺。
おいしそうに水を飲むと、千代姉はさっき歌っていた曲をかけた。
「知ってる?左介?あんた、なにか考え事があるときすごく色気出してるのよ。」
なんか、面白くねぇ。
「普段が底抜けに明るいから、すっごく分かりやすいわ。あんた。ほら、悩みなら聞いたげるわよ?」
言ったら、俺のことを好きになってくれんのか?
「普段こんなことしないのよ。人の苦労まで背負い込みたくないもの。でも、あんたは特別。なんだかほっとけないのね。」
ずりぃよ。年上ぶんなよ。俺は弟になりたいんじゃねぇよ。
心の端っこからどす黒い気持ちが広がってきた。
「耳、貸してよ。あんまり大きい声出したくねぇんだ。」
仕方ないわね、っていうような顔をして俺の前にしゃがみこんだ。
「俺、千代姉のこと、抱きてぇんだ。」
おどろいて飛びのこうとした千代姉の肩を捕まえ、押し倒す。
すぐに、身動きが取れなくなるツボを押す。
やっと、俺の腕の中に捕まえることが出来た。
湿った髪がほっぺたに当たって気持ちいい。
腕に力をこめると、あったかくて、柔らかい。
「…あんたがこんな男だとは思ってなかったわ。」
「残念だけど、いつまでも誤魔化してられるほど、俺ぁ器用じゃねぇんだ。」
震える手に気づかれないように、トレーナーに手をかける。
これは完全な八つ当たりだ。これで完全に俺達の関係は壊れちまうだろう。
でも、それでもいいじゃねぇか。ずっと堂々めぐりのおっかけっこにゃ疲れちまったよ。
「千代姉、めちゃくちゃ綺麗だ。」
「左介、手。冷たい。」
ずっと触りたかった。胸に手を這わせた。
俺の手の動きに合わせてプルプルとゆれる。
少し力をいれて掴むと、手のひらに当たっている淡い色の先端が、徐々に尖ってきているのが、分かった。
引き締まったくびれまでなぜると、千代姉が小さく息を漏らした。
俺のせいでもらすため息も全部、自分の物にしちまいたかった。
少しあいた唇をふさいで、隙間から舌を忍ばせた。
千代姉の舌が俺の舌に絡まってきた。
驚いた瞬間。
身体に力が入らなくなり、覆い被さるように重なった。
指先までしびれている。そうだよ、千代姉はくのいちだった。

□ □ □

全身がビリビリとしびれてやがる。
まるで、身体に弱電流が流れてるみてぇだ。
もっとも、気持ちのほうもずっと前から痺れたままだったんだけど。
身体より、そっちのほうが重症だな。
少しずつ千代姉の毒にならされて、気がつきゃ身動きも取れなくなってた。
さっきの乱暴が俺に出来る最後の抵抗だったんかもな。
どうせ、薬を盛るんだったら催眠剤で記憶を消すか、いっそ殺してくれりゃあいいのに。
いつかはきっと、届くんだろう。
そう思って毎晩、背伸びをしても星には届かなかった。
今はもう、姿さえ見えなくなった。
俺は、一度も触ることが出来ずに星を諦めちまった。
そしてまた、こんな中途半端なところで、千代姉に向かって伸ばした手を引っ込めなけりゃならない。
最後まで、決まんねーな。
俺の体の下敷きになった千代姉の柔らかく暖かい身体を感じると、勝手に目から涙が零れ落ちてきた。
「…わかってるわ。左介。あんたが理由もなくこんな無茶をするヤツじゃないってこと。」
何で、そんな優しい声出すんだよ。俺は慰められてぇんじゃねぇ!
もっと、怒って怒鳴って、部屋から放り出すなり縛り上げるなりしてくれよ。
思い切り、ボロボロにならなけりゃ諦めらんねぇよ!
どうして!そんな優しい手で髪を梳くんだよ。
あんまり惨めじゃねぇか。最後までただの馬鹿な弟だっていうのかよ。
「あんたは優しいから、いろんなことを胸に抱えすぎてるのね。望のことも、才蔵のことも、…私のことも。」
止めたいと思うのに、涙はとまらねぇ。
千代姉に顔を持ち上げられ、正面に向き合うようにされる。
俺の涙が、千代姉の顔にかかる。
「ストイックなあんたの表情、すごく色っぽい。私を見る目はいつも何かを我慢しているようでゾクゾクしてたわ。
…でも、今日はなんだか、瞳の色が違うみたい。」
俺の身体を押しのけて、仰向けにすると、転がっていた水のボトルを口に含み、それを俺の口に流し込んできた。
ただの水よりも少し粘度を持って口に浸入してくる。
舌の痺れが少し取れた。
俺の口から溢れ、筋になって流れ出した水を、千代姉がぺロリと舐め取る。
「今日のあんたを放っておくと、遭難しそうだって思ったの。
なんだか、星の見方も方角の図り方も知らないくせに砂漠に出かけようとしてるみたいだった。」
突然、俺のシャツを脱がしはじめた。
俺の胸に手を載せて、自分のトレーナーをおもむろに脱ぎ始めた。
なにが、起ころうとしているのだろう。
「あんたが言いたくないのなら、何があったかは聞かないわ。
…解決することは出来ないけど、一瞬でも忘れさせてあげることは出来る。」
「…そ…なこと、、して、欲し、、じゃね…。」
情けないことに、流れつづける涙を、千代姉が舌で掬い取る。
「あんたがずっとそんな顔してたら、私が困るわ。…だって、誰にも見せたくないんだもの。
独り占めしたいのよ。あんたの弱いところ。」
「趣味、…悪ぃよ。」
「…今だけ、忘れちゃいなさい。こんなに弱ってるあんたは、私しか知らないわ。」
「一ば…、知られ、たく…ねぇ。…好きな…女に…。」
「もう、黙りなさい。」
ゆっくりと、千代姉の唇が俺の口をふさいだ。
時々、柔らかい乳房が俺の胸に当たり、尖った先端が、かすかに俺の肌を掠めた。

□ □ □

千代姉の細い指が、体中を撫でる。
痺れ薬の感覚と、くすぐったい感覚が混じってもどかしい。
時折、爪で刺激されると体が勝手に、ピクッと反応する。
ゆったりと微笑んだ後、おもむろに首筋から舌が這わされる。
カチャカチャという音のするほうを向けば、舌で愛撫しながら、ベルトをはずしている。
滅茶苦茶なさけねぇ、状態だってぇのに身体は正直に反応してやがる。
こんな、されるがままじゃなく、俺があの柔らかい胸を掴みたかったのに…。
消えることがないように、強く強く印を刻みたかったのに…。
今の俺は、なんなんだよ。ただ情けない声をださねぇように、意地張ってるのが精一杯だ。
「気持ちいい?感覚はあるでしょう?」
「解毒剤…くれ…よ。」
「だぁめ。左介に逃げられると困るもの。」
強い刺激に、思わず声が漏れた。
千代姉の手が俺の分身をゆっくり擦っている。
「千代、…やめろ…!」
「もう何も考えないで、気持ちよくなることだけ。今は、それだけでいいのよ。」
手際よく、避妊具をつけるとショートパンツと下着を一緒に脱ぎ捨てた。
理性では止めて欲しいと思っているのに、本能の部分で次に与えられるであろう快感を待ち望んでいる。
俺の先端が入り口を押し広げたとき、千代姉がはじめて甘い声を漏らした。
視界の端に移る千代姉の太ももに蜜の垂れた跡が見える。
つぷ、、ちゅぷリ。
ゆっくりではあるが、確実に飲み込まれていく。
千代姉の中は熱くてグチョグチョで何かが動いているみたいですぐにいっちまいそうなほど気持ちいい。
今までで、一番気持ちいいと思うのに、心の端になんだか苦いものを感じる。
「左介、っ気持ちいい?」
何度も繰り返された質問に、ようやく素直に答える。
「滅茶苦茶、気持ちいい。もぉ、出たくないかも。」
ニコリと満足げに笑うと、だらりと垂れた俺の手を、自分の柔らかい胸に押し付けながら、千代姉は動き始めた。
気持ち良いのに、動けないというのがなんとも、もどかしい。
押し当てられている手は、もっともっとというように、徐々に力が増していく。
体全体や、腕を持ち上げたりすることは出来そうにねぇが、指先に力を入れることくらいは何とかなりそうだった。
俺の腹の上で、乱れる千代姉はずっと俺の名前を呼んでいる。
たぷたぷと揺れる乳房越しに、額に髪を張り付かせて必死に俺を呼んでいる。
きゅうきゅうと締め付けが強くなる。
徐々に上り詰めて、2人とも同時に絶頂を向かえた。
あぁ、俺こそ今の千代姉の表情を独り占めしたい。
ずっとこうして、2人だけでいられたら良いのに。
現金にも、それまで俺の頭の中を支配していた考え事から、完全に解放されていた。

□ □ □

痺れもだんだんと取れ始め、腕が上がるようになった。
俺の上で息をついている千代姉を、抱きしめるというにゃ弱弱しい手つきで捕まえる。
あがった息が収まり始めた頃、また、千代姉がボトルの水を口移しで飲ませてくれた。
さっきとは違う何かが、喉を通る感触があった。
「今、あげたのは睡眠薬よ。今日はもうこのまま寝てしまいなさい。何も考えずに。」
千代姉の言葉を全て聞き取る、まもなく暴力的な睡魔に襲われ何の光もない、真っ暗な闇の中に落ちていった。
かすかに聞こえるバイオリンの音はいつのまにかちっこいころの、歌声に変わり、
まぶたの裏には、成長した姿で優しく微笑む千代姉の顔を残して…。

□ □ □

朝、起きてみると、千代姉は今までどおり、まるで昨日の夜のことは無かったみてぇだ。
それでも、頭に残る重苦しい眠気が睡眠薬の名残だと主張している。
あれは、夢じゃねぇ。
でも、俺達の関係は対して変わっていない。
きっと、動物と同じように、兄弟が傷ついていたら舐めて直してやるように、
千代姉は俺にしてくれたんだと思う。
朝早く、アパートから殿のマンションに戻る。
結局、何の問題も解決して無ぇから、また色々考えなけりゃならないんだけど、
一晩、空っぽになったおかげでほんの少しだけ、気が休まった。
『2週間後の水曜…。』
望兄の声がまた、蘇る。まだ、何にも解決しちゃいねぇんだ。
戻ってきた頭痛の種に、早速、髪の毛をかき乱した。
それでも、千代姉の優しさが不安でいっぱいの心を少しだけ軽くしてくれたことは間違いねぇと思った。
それに、変わっていないような関係でも、ほんの少しだけ進展したような気がしてる。
一番、格好悪ぃ所を見られちまったから、千代姉には無防備なところも見せれると思う。
もう少し、俺はこの星空の無い都会で過ごさなきゃならねぇんだろう。
でも、俺は、あの真っ暗な中にたくさんの星があることを知ってるし、どんなに無理だと思ってたことでも努力を止めなけりゃちっとは近づけるっていうのも、分かってきたよーな気がしだした所だ。
まだまだ、掴み所無ぇけどな。
考え事が多すぎて、学校どころじゃねぇ。そう思いながらも、周りに合わせて学校に行く事にした。

―the end―

 

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