『 宴の翌朝 』 朝の光が鎧戸の隙間から漏れて、睦まじく眠る二人を照らした。 王子はかすかな光で眠りから覚めた。 鼻腔に感じる甘い香り。暖かく柔らかな肌の感触。 (そうか・・・昨夜は姫を私の寝台で寝かせたのだったな) 王子は上掛けをそっとずらして、愛しい恋人の寝顔を眺めた。 (よく寝入っておるな・・・しかし何と幸せそうな・・・まるで幼子のようではないか) キャロルは王子の逞しい胸に抱かれまどろみながら夢を見ていた。誰よりも愛しい王子の夢を。 いつも王子は、これ以上は無いという程キャロルに優しくしてくれるのに、王子の真っ直ぐな瞳に見つめられると恥ずかしくてどう振舞えば良いのか分らず、胸がドキドキして逃げてしまいたくなるのだ。 王子がこんなに素敵な人じゃなかったら、ここまで胸が苦しくならないのに・・・とさえ思う事もある。 でも夢の中でなら、彼女は照れることも恥じ入る事もなく恋しい王子と向き合い触れ合う事ができるのだ。 だから、キャロルはよく王子の夢を見たし、また王子の夢を見るのは幸せだった。 しかし今日の夢は格別だ。王子の体温までがリアルに伝わってくる。 「はて、そなたはどのような夢を見ているのであろうな?」 王子はさらにキャロルの上掛けを下にずらしてみて、思わず息を呑んだ。 薄絹の衣がはだけて胸のふくらみもあらわに、滑らかな白い肌が寝息に合わせて上下している。 形よく盛り上がる双丘に引き寄せられるように手が伸びる。 自分を諌めてみても、理性だけではもはや抗えない。 王子はキャロルを起こさないようにそっと衣の下に手を差し入れ、優しく手のひらで包み込んだ。 (何と柔らかな・・・) 触れるだけでは物足りず思わず衝動に駆られて胸元の合わせ目を解くと、眩しいほどに白く初々しい乳房が目の前にこぼれ出た。 淡く色づいた頂。 指先で軽く触れてみると、敏感そうなそれはたちまちそれはキュッと反応した。 (ああ・・・何と美しいのだ。欲しくてたまらぬ) 王子は立ち上がった頂を口に含んで愛でてみたかったが、そんな事をすればもう自分を抑えられない事は火を見るより明らかであったので、何とか自制した。 愛しい娘が寝ているのを良い事に、これ以上の無体はできない。 ここでキャロルに目を覚まされては困ってしまう。卑怯だとは思われたくなかった。 大切に大切に愛してやりたいのだ。 自分の身勝手な欲望などで最愛の娘を傷つけたりしたくはない。 (いつになれば、そなたを私の思うままにできる? 愛しすぎて・・・そなたに手さえつけられぬ。 私の想いの半分でも、そなたが私を想ってくれればな。 もっと私を愛させたい。もっと私を求めさせたい。・・・どうすれば良い?) 名残惜しくてたまらなかったが、王子は大切な宝物をしまうようにキャロルの衣の胸元をきちんと整えてやった。 「えっ・・・嘘。 私、王子に何か恥ずかしい事をした?」 クスクスと王子のからかうような笑いが漏れる。 「何も恥ずかしい事などなかろう。 もう一度酔わせてみたいものだな。 普段のそなたは恥らってばかりだ。いつもあのようにあれば良いのに」 キャロルはますます赤面した。 (いやだ、私いったい何をしたの?) 「さあ、姫。こちらを向くのだ・・・姫・・・姫」 優しい仕草ではあったが、王子は少し強引にキャロルの体を自分のほうへ向き合わせた。 頬に手を沿えると、唇を奪うように重ねた。 キャロルの唇と舌を丹念に味わう。 柔らかく甘い感触は何度触れても色あせる事はなかった。 ますます王子を虜にさせ、欲望に火をつける。 昨夜の果たせなかった欲望をあがなわせるかのように、王子はいつまでも執拗に唇を求めた。 突然の官能的で激しい接吻にキャロルは動揺して震え始めた。 王子は唇を離すと、キャロルの背中をそっとさすり震えを鎮めてやった。 彼女が落ち着くまで、優しく抱きしめた。 (いつかそなたに教えてやろう、接吻よりもっと深く愛を交わす手段があると言う事を) ♪おしまい♪ |