『 厨房王子の物語 』

王子がようやく執務を終えたのは真夜中すぎのことだった。
寝室に入るとキャロルは机にうつ伏して眠り込んでいた。
「姫・・・こんなところで眠り込んで・・・風邪をひくではないか。」
王子は耳元にそっと囁きかけると、軽い体を抱き上げてそっと寝台に降ろした。
「う・・・ん?」
キャロルは低く吐息をついたが目は覚まさない。無防備な寝顔。子供のような。それでいて夜着から覗く肌の白さはどうだろう。かすかに上下するまろやかな胸の双丘の艶めかしさはどうだろう。
王子に触れられて急速に成長する体。キャロル自身は気づいていない。だが王子はその体の変化をつぶさに知っていた。
「姫・・・。」
首筋にそっと唇を這わせながら王子は囁く。疲れているはずなのに体は昂ぶり、昼間は深く眠っている好色な獣が目覚める。
「起きよ・・・。夫を待たずに眠るとは・・・。まだ・・・しておらぬことがあろう?」
「う・・・ん。王子・・・?大好きよ・・・。」
夢うつつでキャロルは馴染んだ匂いのする暖かな体に身を寄せ、また深く寝入ってしまう。
(うう・・・。全く子供だな。こんな時にそのように身を寄せられると・・・!)
王子の眉根が寄せられる。やっと王子は自分の衝動を押さえ込むと憮然とした表情でキャロルの横に身を横たえた。
ふと目を足下に落とすと、王子の意志とは関係ない変化はまだ収まりきっていない。
王子は厨房のようにもんもんとして、夜明けを迎えるのであったよ・・・。
合掌。

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