『 手 』

「・・・ん・・・?」
寝入っていたキャロルは不意に目が覚めた。
暖かなイズミル王子の身体が背中に感じられ、静かな寝息が耳にささやいている。
キャロルの腰の上に回されたイズミル王子の左手が、キャロルの横に投げ出されているのが
常夜灯の薄明かりに照らされて見える。
掌を上に向けて、軽く指の開かれた無防備な大きな手・・・。
武術を嗜み、剣を握り、弓を持つ手は、鍛えられたせいなのか、ところどころ節くれだち硬くなっている。
自分の掌よりはるかに二周りは大きな手。
そうっとキャロルの白い手が静かに触れてみる。
この手は私を守ってくれる手、この手で私を抱きしめ守り、それから・・・とキャロルは思うと
急に恥ずかしくなり顔が熱く火照るのを感じた。
「あっ・・!」
キャロルの手は突然触れていたイズミル王子の大きな手に握られた。
「眠れなくなったので、私の手と戯れておったのか?うん?」
首だけ振り向くと片肘ついた王子とキャロルは目があった。
「ううん、王子の手が・・好きだから・・ただ触ってみたくなったの・・。」
「可愛いことを・・・。手の持ち主のことは嫌いか?」
王子の唇がキャロルの首筋や滑らかな頬に押し付けられる。
答えようとしたキャロルの唇はイズミル王子によって塞がれ、二つの身体はもっと密接に絡み合った。
キャロルの白い指に太く大きな指が絡まったままで・・・。

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