『 猜疑 』 ヒッタイトとの戦も終わり・・・様々な誤解も解けキャロルと再び心を通いあわせたメンフィスは、婚儀の日を待つのみ。 だが。メンフィスの心には小さな、しかし鋭い棘が刺さっていた。 ヒッタイトで・・・キャロルはすでに王子に・・・ 「さぁ、キャロル。これを」 メンフィスは甘い果汁の入った杯をキャロルに渡した。自分は葡萄酒の入った杯を干しながら、キャロルが美味しそうに果汁を飲むのを見守る。 「あ・・・ら?おかしい・・・わ・・・?」 果汁には眠り薬が入っていた。崩れ落ちるキャロルを抱いて支えるメンフィス。しばらく娘の息づかいを確かめる。 「キャロル・・・キャロル・・・?眠ってしまったか」 メンフィスは扉の外に声をかけた。入れ、と。 小柄な体をさらに小さく折り畳むようにして入ってきたのは王宮付きの産婆だった。王宮で生まれる赤子は全て彼女に取り上げられる。嫡子も庶子も。身籠もった女も彼女に体を見せる。 「さぁ。私の妃となる娘だ。確かめよ。良い子を産めるか・・・そして・・・」 産婆は頭を下げた。王の側にあがる女の身体を改めるのも役目であったから。 寝台に寝かされたキャロルの衣装の裾はメンフィスがめくりあげた。脚は産婆が拡げさせた。 「拝見いたします」 メンフィスも産婆の隣に立ち、キャロルを見つめた。 産婆は淡い茂みを掻き分け、亀裂を押し開いた。色素の薄い未熟な器官が露わになる。産婆の指は更に花弁をくつろげた。甘い匂い。身体の内側に続く泉がすっかりさらけ出された。 その入り口には紛う事なき乙女の封印。メンフィスは体が燃えるように高ぶるのを感じた。 (キャロルは・・・清らかな身であったのだ!) 産婆の拝診も終わり、衣装を整えられたキャロルをメンフィスはしっかり抱きしめていた。自分の醜い猜疑心がひたすら厭わしく、いまはただ詫びるように最愛の少女を抱きしめるだけ・・・。 |