『 王子の独り寝 』



(今日も一日終わったな)
政務も終わり、風呂にも入り、鳩にえさもやって、寝酒もひっかけた王子は服を脱ぎ捨てるとごろんと寝台に横になった。
(姫はどうしているだろう?)
眠る前のこのひととき、王子は激しく片思い中のキャロルのことを思うのだった。
姫の笑顔、泣き顔、恐怖に強ばった顔さえ王子をときめかせる。好きで好きでたまらないから思わずいじめてめちゃくちゃにしてみたくもなる。
姫の声、身体の手触り、肌の匂い・・・。
王子の想像はすでに妄想の域に入っていた。ポエマー・イズミルはキャロルにあーんなことやこーんなことをしてしまっている!
(ああっ!姫!何故、そなたはメンフィスの妃なのかっ!そなたを意のままにできるメンフィスが私は憎いっっっ!)
寝台を転がり回る王子。
(ああ・・・今頃、メンフィスと姫は・・・)
王子の脳裏にありありとエジプト王宮の閨の様子が浮かび上がるのだった。
(メンフィスは姫にあーんなことやこーんなことを・・・そして姫はあーなってこーなって・・・。ち、ちくそぉぉぉっ!)
悶々とするイズミル。だがその様子さえも耽美に美しいのだからさすがにヒッタイトの王子である。

そしてそのころエジプトでは・・・。
キャロルは黒髪かつらでお忍び中。メンフィスはキャロルのゆで卵を賞味中。
あーんなことやこーんなことどころではなかったのだった・・・。ちーん。

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