『 お清め妄想話 』


イズミル王子の人生は旅と調査の連続だ。今回も愛しいキャロルを置いて調査の旅に出かけなければならない。
キャロルは皆の手前、明るく笑って「いってらっしゃいませ」と言ってくれた。王子も淡々と「行ってくる」と答えただけ。
でも本当は王子は寂しくて物足りなかった。
もっとキャロルが名残惜しげにしてくれればよかったのにとか、人前でもいいから泣くとか、いってらっしゃいのキスをしてくれたらいいのに、などと考えてしまう。
キャロルは、大人びて威厳に満ちた王子に遠慮しているだけなのに。
キャロルも寂しかった。
ヒッタイトの王子であるイズミルが普通の恋人同士のようにベタベタすることはない、ましてや行ってきますのキスなんて・・・と分かっているのに我が儘な気持ちが生まれてくる。
王子は恥ずかしがりのキャロルの気持ちを思いやってくれているだけなのに。

王子が帰ってきた。旅の埃を落とそうと、とりあえず自室に入った王子はキャロルに出迎えられた。王子は驚いた。さっき城門で出迎えてくれたキャロルがなぜここにいるのかと驚く王子。
キャロルは「おかえりなさい。王子がいない間、寂しかったから・・・」
そう言ってぎゅっと抱きつき、素早く王子の顎のあたりにキスした。
「邪魔してごめんなさいっ!あっちで待ってるわね」
そう言って駆け出していってしまったキャロル。王子は何だか嬉しくて踊りだした
い気分だった。


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