『 ムーラの独白・2  』


ムーラの独白
今朝の王子はいつになく上機嫌だった。
やはり愛しい姫と結ばれたのであろう、ずっと秘めた一途な王子の激情が今は満ち足りた瞳の中には伺うことが出来ない。
恥ずかしげに寝具に身を隠すようにしている姫の横で乱れた寛衣を直していらっしゃるその満足げなご様子。
「ムーラ、姫の身支度を頼む、あまり目立たないものでな。」
「はい、かしこまりました、姫様、朝の湯浴みをどうぞ。」
姫様をおつれしようと近寄ると、王子が寝具ごと姫を抱き上げられた。
「私が連れていこう、姫よ、ムーラを困らすのではないぞ、よいな?」
優しい物言いで姫様にご注意なさるそのお顔。
王子が幸せなら何も言う事などあるわけも無い。
恥ずかしそうに湯浴みをなさる姫様のお身体には王子の愛された証があちこちに見受けられる。
姫様は黙ったまま私のする事に素直に身を任されている。
温まった白い肌はうっすらと薔薇色に変わり、この私でも美しいと感嘆させられる清純な妖艶さ。
身支度をして差し上げると恥ずかしそうに「ありがとう、ムーラ」とか細いお声でお礼を仰る可憐なご様子。
「さあ、こちらでお食事をなさいませ。王子もお待ちでいらっしゃいます。もうご夫婦なのですからご遠慮なさらずに王子のお側へあそばし下さい。」
そう申しあげると姫様は顔を真っ赤に染められて今にも泣き出しそうな青い瞳でこちらをごらんになった。
「おめでとうございます、どうぞまめやかに王子にお仕え下さいませ。」
困ったようなお顔をされた姫様は足早に王子の元へといらっしゃった。
無理もないこと、婚儀に先だって契りをかわされたばかりなのだし。
王子がお喜びなのだ、私にとっても喜ばしいことなのだ・・・。


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