『 魅惑の午餐 』 1 日の光目映いエジプト王宮。メンフィスは協議の間で鹿爪らしい顔をして臣下達と政務に励む。その傍らに控えるのは王妃キャロル。 慎ましく、でも注意深く全身を耳にして政務を見守るキャロルは求められれば的確な意見を出し、問題が膠着の兆しを見せれば何らか の質問をして新しい切り口を提示する。「姫君、姫君」と奉られている、生身の人間離れした可憐な容姿のキャロルだがなかなかどう して頭も切れるというわけだった。 そんなキャロルを目の端に捉えながら、メンフィスは何とも落ち着かない気分を味わっていた。少しでも気を抜けば脳裏に浮かぶのは 昨夜のキャロルの媚態。白い身体が自分の上に重なり、華奢な指先が肌を撫で、接吻を繰り返し、薔薇色の唇はメンフィス自身を貪欲 に呑み込んで見せた・・・! メンフィスに貫かれるたびに未だ苦痛を感じるらしいほどに未熟な身体の主が!男女のことを未だ恥ずかしがっているキャロルが! メンフィスは体の前面を覆うように羽織ったファラオのマントをちらと見おろした。誰にも見えぬその下では、男の体に特有の変化が 起こっていた。 (早く・・・政務が終わらぬものかな。もう夜まで我慢することなどできそうにもない) ようやく政務も終わり、午餐の時間となった。侍女達が食卓を整え給仕のために定められた場所に控える。 「メンフィス様、今日はカーフラ様もご同席を希望しておいででございます。じきに参られますでしょう」 苦々しげに言うナフテラにメンフィスは命じた。 「今日の午餐はキャロルと二人で食す。政務向きのことで相談せねばならぬことがあるゆえな。カーフラ王女はお断りせよ。それから 給仕も不要だ。人払いを命じる!」 召使い達は、驚くキャロルを置いて下がっていった。 2 「メンフィス・・・?」 メンフィスは大ぶりの焼き肉にかぶりつきながらキャロルを見つめる。困ったようにパンを口にしていたキャロルは真っ赤だった。 「どうしてそんなに見つめるの?恥ずかしいわ・・・。それに政務の相談って?」 メンフィスはワインを一気に飲み干すと新たに杯を満たし、その中身をいきなり口移しでキャロルに与えた。 「きゃっ・・・!どうした・・・の?何を・・・あ・・・!」 メンフィスはキャロルを押し倒すと滾りたった自身をキャロルの柔らかな太股にに擦り付けた。 「どうしたのかと聞くのか?何をするか分からぬなどと申すのか・・・?」 メンフィスはかすれた声で耳朶に囁きかけ、手で柔らかく白い身体をまさぐった。 「昨夜のこと・・・忘れたとはもはや言わせぬぞ。もっともっと・・・そなたが欲しくてたまらない。お願いだ、どうか昨日のように・・・」 キャロルは真っ赤になって本気でメンフィスを押しのけようとした。カーフラ王女にメンフィスを取られたくなくて、淫らな企みに身を投じた昨夜!でも今になって思えばあれは誰か知らぬ女が、自分の身を借りて為したことのように思えて・・・。 「いやっ・・・!やめて、恥ずかしいの。お願い、昨日のことはごめんなさい、忘れてっ・・・!ああ・・・っ!」 抗いがメンフィスの男を煽った。メンフィスはいきなりキャロルの衣装を引き裂き、押しのけ、爪を立てる手を頭上で長椅子の肘掛けに縛り付けてしまった。 「誰が忘れられるものか。あのように魅力的な妻の姿を!知らぬフリなどしてくれるな。乱れてみよ、淫らになれ。私を悦ばせる女になれ、昨夜のように・・・!」 メンフィスはまろびでた胸の膨らみを口に含み、舌先で頂の果実を味わいなぶった。 3 メンフィスの手はキャロルの脚を無遠慮に割り開き、その奥を探った。いきなり荒々しくメンフィスに挑まれたにもかかわらず、秘密の場所は切ない歓びの涙に潤んでいる。 メンフィスは乳嘴を、薔薇の唇を、華奢な鎖骨の窪みを気の赴くままに味わいながらキャロルの敏感な下肢の薔薇花を弄りまわした。 「ああ・・・メンフィス・・・!私、もう・・・!」 キャロルがたまらず腰をくねらすのをメンフィスは嬉しそうに見やった。だがまだまだ許してはやれない。 「よほど空腹なのだな。このように涎を垂らしたりして・・・」 メンフィスは淫らに囁くと、いきなり体の向きを変えてキャロルの秘花にむしゃぶりついた。甘く蜜を滴らせながら蠢くそこ。メンフィスは食卓の上から蜂蜜の壷を取ると 中身を膨らんだ花芯にたらたらと垂らした。 「ああっ・・・!」 甘い自分の蜜の匂い、蜂蜜の匂い、狂おしい感触、羞恥、欲望、メンフィスの舌、メンフィスの指先・・・! 「甘いな・・・」 メンフィスの舌は残酷な巧妙さでキャロルの身体を味わった。蜂蜜に飽きれば濃厚なクリームやワインが垂らされ、蜜壷には果物が差し入れられる。まるでソース壷に 食べ物を浸けるかのように。 促すように自分の唇に触れてきたメンフィス自身をキャロルは頭を擡げて受け入れた。猛々しく、固く、熱く、塩辛いメンフィス自身。恥ずかしいことをしている自分 たちへの猛烈な羞恥心と共に、メンフィスにこのようなことができるのは自分だけだという妙な自信が、心を熱く燃やす。 キャロルは甘い蜜を吹きこぼし、激しく身体を震わせながら絶頂を味わった。同時にメンフィスも激しく痙攣しながらキャロルの口中に情熱をぶちまけた。 4 「まだ・・・眠ってはならぬぞ」 メンフィスは口移しでキャロルに水を飲ませながら囁いた。汗に濡れたキャロルからは蠱惑的な麝香の香りが立ち上る。 「メンフィス・・・」 「昨夜はそなたが私を翻弄した。まるで女主のように。でも、まこと主であるのは私だ。そなたを愛して、そなたの乱れようを、恍惚の声を愛でることができるのは私だけだ・・・」 メンフィスは細い腰を引き寄せ、満開の薔薇の中に自身を埋没させた。激しく動けばキャロルは切なげに身を捩りながら従う。 「苦しいか?切ないか?もっと・・・脚を開け、腰を上げよ。楽になるぞ」 メンフィスは残酷に教えてやった。指先は勃ちあがり喘ぐ花芯をくりゅくりゅと揉みしだく。 キャロルはじき達してしまった。激しい痙攣と締め付けがメンフィスを苛んだ。男は女の敏感な胸の果実をきつく弄り回して欲望の爆発を我慢するとさらに動いた。 「メンフィス・・・メンフィス・・・ああ・・・っ!」 あまりに激しい快感にキャロルが気を失ったのとメンフィスが妻の中に情熱を注ぎ込んだのはほぼ同時だった。 「あ・・・?」 キャロルが気を失っていたのはほんの短い間のことだったらしい。 メンフィスは恥じらう妻を優しく窘めると、優しく白い身体を撫でた。 「ふふっ、そなたは美しかった。奔放で気高い野生の獣のように美しかった。 恥じらってくれるな。そなたが誰よりも愛しいのだ・・・」 メンフィスは言った。 「ええ・・・メンフィス、大好き・・・」 恋人同士は長椅子の上で抱き合って眠った。涼しい午後の風が恋人同士の火照りを優しく冷ましていく。 食卓を片づけに来たナフテラは食堂の乱れようを見て、そっと溜め息をついた。 「本当にお二人はお若いこと・・・」 老練な女官長は、配下の侍女達に後かたづけの延期を命じるためにそっと出ていった。 |