『 秘密 』

そろそろ眠りに着こうとしたエジプトのファラオとその王妃キャロル。
ナフテラが寝仕度を支持する横で、テティの叫び声がする。
「ひ、姫様!姫様がお倒れに!」
そそっかしいキャロルが酒の入った杯を間違えて呷ったのだ。
アルコールに弱いキャロルはそのまま寝台に入れられ、メンフィスが自分でキャロルの様子を見るからと、側仕えのものを追い出した。
キャロルの横で寝転び身体を楽にしながら、メンフィスは様々なことを考えていると、キャロルが身じろぐ気配に、視線をそちらに向けた。
「気分はどうだ、キャロル。誠にそなたは・・・。」
まだ半覚醒のような、ぼんやりしたキャロルは、薄くそ青い瞳を開け、メンフィスを見た。
「メンフィス・・・。」
キャロルの白く細い指がメンフィスの胸に這わされ、触れたところからメンフィスの身体に火がついたような感触に飲まれていく。
いつもは慎ましやかなキャロルをメンフィスが誘い、官能の海に漂わせてやるのに、今のキャロルは妖艶でうっとりとメンフィスを誘いかけるのだ。
それまで抑制していた箍がはじけとび、メンフィスは白い身体を組み敷いた。

夜明け頃、メンフィスは非常に満たされた面持ちで、キャロルの体を抱きしめながら目覚めた。
キャロルがあんなにも自分を求め、自分もキャロルを求め絡み合った濃厚な夜を過ごしたことにメンフィスはキャロルが女として目覚めてきたのだと満足した。
「う・・・ん・・・。なんだか・・頭が痛いわ・・。どうしたのかしら?」
腕の中で顔をしかめているキャロルだが、自分が何故メンフィスに抱かれているのかもわからないようで、不思議そうな表情をしている。
「いやね、お酒のせいかしら?これからは注意しないと」とはにかみながら言うキャロルに、「そなた、覚えておらぬのか?」とメンフィスが詰問する。
「?なんのことなの?メンフィスったら、ふざけて薄絹までとるなんて、恥ずかしいからやめてね。」
全く覚えていないような昨夜のことを話そうとすると、部屋の外から「お目覚めでございますか?」と侍女達の声がし始め、メンフィスはその機会を失ってしまった。
「姫様、おはようございます、ご気分はいかがですか?」
「テティ、おはよう、なんだか頭が少し痛いの、きっとお酒のせいね。」
「それはいけませんわ、もう少しお休みになってはいかがでしょう?」
キャロルが侍女達と会話しているのを呆然と見つめるメンフィス。
あれは酒を飲んだゆえのことだったか、と気付いたメンフィスの横では、「もうお酒はこりごりだわ、これからは注意するわね。」と朗らかに話すキャロルの声がしているのであった。
昨夜のことはメンフィス一人胸にしまわれた秘密である。


続編、書ける方お願いします。
なんだか上手くまとまりませんでした。

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