『 お妃教育 』


民の暮らしを学びたいとキャロルはテティとヌウに頼み込むが、あと一歩のところで衛兵に見つかり、メンフィスの怒りをかう。

「うぬ等がキャロルを連れ出そうとしただと?!テティ!ヌウ!そこへ直れーっ!」
(ひゃぁぁぁぁぁ〜ころされるぅぅぅぅ〜)震えるテティとヌウ。
「やめて!テティとヌウは悪くないのっ!私が無理やり頼んだのよっ!殺すなら私をっ!」
キャロルは二人の侍女を庇ってメンフィスの前に身を投げ出し、まっすぐにメンフィスを見上げた。
「むーっ!」
メンフィスは剣を手にしたまま固まってしまう。

(ん?どこかでみたような光景…)ウナスは思う。
(どこかで聞いたような言葉…)ルカも思う。
(前にもこんなことが…)兵士達も目配せする。


その時、神殿の奥に通じる扉がゆっくりと開き、
「何を騒いでおるのです。」
と、涼やかな、だが威厳のある声が神殿に響き渡った。


「なんと!姉上か?」「なぜここにアイシスが?」「アイシス様!」
「こっそり里帰りしていたのに、騒々しい。」「おいたわしや〜アイシス様、静かにエジプトの空気を満喫することも叶わず〜」
アイシスの後ろからはアリがいつものポーズで現れる。

「姉上は今や敵国の王妃、、、」と言いかけるメンフィスに向って
「ここは元々私の神殿。バビロニアの王妃となろうとも帰ってきて何が悪い。」と一蹴する。
「だいたい、エジプトはお妃教育が為されていないではないか。バビロニアはもっと厳しいぞ。」
そしてキャロルに向って言った。
「私が大人しくしていると思って我儘三昧をしておるようだが、もう少し気を引き締めよ。
コブラやサソリ、ライオンもワニもまだまだ豊富に用意してあるので、油断していると見ればいつでも届けて遣わすぞ。」

アイシスはアリを伴って「では、バビロニアに帰る」とスタスタ歩き始めた。
「姉上!」メンフィスの声に立ち止まり、振り向いたアイシスは、
「おお、もう一つ忘れておった。キャロルの言い訳、一度目は通用したかもしれぬが、二度目ともなるとさすがに皆も呆れておるようだ。
そもそも王妃が軽々しく出歩くものではない。少しは周りの迷惑を考えよ。」

自分のことは棚に上げて言いたい放題のアイシスは( ゚д゚)ポカーンとしたエジプトの面々を残して去っていった。

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