『 寂しい夜には 』 イズミル王子とキャロルが婚儀から、はや二月が過ぎようという頃………。 長い恋慕の末、国をあげての盛大な華燭の婚儀を挙げ、国民や臣下達が祝賀の狂喜に舞い踊るなか、初夜の床でイズミルは愛しい娘をついに女にした。 エジプトから連れてきたこの幼い姫に恋を教え、妻と娶るまでにどれ程の苦労をした事か。 なので、初夜のイズミルの喜びはひとしおであった。 初心で清らかな姫に、夜毎、イズミルは夫として妻を愛する行為を優しく手ほどきする。 一度その悦びを知れば、二人の愛情は更に深まるばかりで、時の許す限り互いを求めて愛し合った。 まだキャロルにとって愛の秘め事は、とても恥ずかく、どこか後ろめたい事であったが、それでも愛しいイズミルに抱かれ、彼に少しずつ体が慣れていくのは嬉しい。 彼を受け入れても、もう最初の時のように痛みを覚える事もなくなった。 イズミルに満たされると、体も心も彼に捧げたのだと、深い満足感と幸福感に満たされる。 夜の閨のなか、薄い衣を一枚づつ剥がされながら、逞しい彼の胸に抱かれるのは心臓がドキドキして苦しいけれど、それは息をもできぬ程のときめき。 キャロルの肌に触れながら、口づけを求めるイズミルの貌はこの上なく色っぽくて……。 恥ずかしいと頬を染めて涙しながらも、実は彼が触れてくれるのを心待ちにする日々だった。 しかし。その後のイズミルは病に臥せる父王に代わり、何かと政務や視察などに追われ忙殺されていった。 特にこの月は多忙を極めており、数日間留守にする事も多かったし、王宮内で政務に就く日であってもキャロルが床に就くより先にイズミルが戻った試しはないし、キャロルの起床を待たずに早々と出かけてしまう。 共に床に就いているとはいえ、キャロルは寂しい夜を過ごしていた。 新婚直後の、彼の甘い睦言に浸った夜、彼の激しい愛に抱かれた夜の思い出が、却って胸に切ない。 愛する夫への恋しさは募るばかり………。 夜毎、帰りの遅いイズミルを何とか起きて待とうとするキャロルであるが、瞼を重くする睡魔には勝てず、どうしても気がつくと先に寝てしまっているのだ。 そしてキャロルが目覚める時、王子の姿はもう見当たらず、キャロルの隣には彼の寝跡と甘やかな温かみがシーツに残るだけ。 キャロルは枕や寝具の中に残る彼の体温と肌の匂いを抱きしめては、恋しさに涙する……。 (寂しい……寂しい……王子。傍にいて……) 「ムーラ王子はまだお帰りにならないの?」 キャロルは寂しさと心細さに溢れた青い瞳で、ムーラを見やった。 「はい。王子は早朝より視察へ出られ、その後政務がおありです。 今宵のお戻りは夜半過ぎになると仰っておられました。 姫君は先に床に着かれるようにとの……お言付けでございます」 「………!!」 キャロルの瞳に不意に涙が滲む。 (もう、20日も王子の顔をろくに見ていない気がするわ……!眠ってる時しか一緒にいられないなんて……、王子が忙しいのは分かってるけど…我がまま言っちゃいけないのは…わかってるけど………それでも、寂しい。) 「ムーラ、どうして起してくれないの?王子が帰ってくる前に寝ちゃったら、起こして欲しいっていつもお願いしてるのに……!」 「いいえ、姫君。姫君は先に休まれるようにと、王子は厳しく仰せでございます。王子は何よりも姫君のお体を案じておられるのですよ。まだ姫君には慣れぬことばかりですから、無理をさせたくないと思っておいでなのです。御心配なさらなくとも、王子はいつも優しく添い伏して下さるではないですか」 子供のように首を横に振って哀しい顔を見せるキャロルに、ムーラは肩をすくめた。 (まったく、姫君ときたら。お年の頃よりずっと大人かと思えば、このように王子の事となると幼子のようになられる!王子がどんなにお戻りになった後、どれ程あなた様の寝顔を愛しげに見つめていらっしゃるか…。そして、どれ程あなた様を気遣っておられるか……!) 「でも…でも…。今日こそは起きて王子を待つわ!そうだわ!寝室に入るから寝てしまうのよ。私、今日からはこの長椅子に掛けて王子を待ってます」 しかし、ムーラにあっさりと諌められてしまう。 「なりませぬ!姫君をこのような場所がお休みになるなんて、王子のお叱りが目に見えるようでございます!風邪でも召されたら、それこそ王子へお詫びのしようがございませぬ」 「じゃ……お願い、ムーラ。また寝てしまったら、起してくれるように王子に伝えて。ね?お願いよ」 「……かしこまりました。では、姫君がそのように仰っておられたと王子へお伝えいたします」 「絶対よ、絶対伝えてね!・・・ね!」 何度も念を押しながら、キャロルはムーラに促され帳の奥の寝台に上がる。 書物を読んで時間をつぶそうと、キャロルは寝台に横になり、王子がくれた巻物を広げてみる。 しかし寝具からかすかに漂うイズミルの男らしい香りが、胸を切なくときめかせて、どうも書物には熱中できないのだ。 キャロルは書物を脇に退けると、イズミルの枕をぎゅっと抱きしめた。 今日も会えないかも知れないと思うと、我知らず涙が目尻に浮かんでしまう。 何だかとても、夫であるイズミルの存在が遠く感じられてしまう。 「王子……早く帰って来て。また…眠くなって来ちゃう……早く、早く……」 眠らない…寝てはいけない…と自分自身に言い聞かせるのだが、悲しいかな夜に弱いキャロルはすぐ睡魔に引き込まれてしまう。 そして、夜半過ぎ。 イズミルは長い政務を終えて、やっとキャロルの待つ部屋へと戻って来た。 厳しく表情を崩さぬイズミルの冷たい美貌が、優しげなそれに変わる瞬間である。 「お帰りなさいませ、王子」 「おお、ムーラ。姫はどうであった?変わりはないか?寂しくしておったのではないか?」 「……それは、もう。大変な寂しがり様でいらっしゃいました。王子のお帰りを寝ずにお待ちになるのだと言い張っておられて……」 イズミルはクスクスと押さえ切れぬ笑いを漏らす。 「……しかし、また待ちきれずに寝入ってしまったのであろう?」 「はい。……でも、王子がお帰りになったら必ず起して欲しいと……」 「そうか……わかった。さぞ寂しがっている事だろうとは思っていたが…。あまりに愛らしい顔で寝入っているので、起してやるのが可哀想になるのだ」 イズミルはキャロルの寝顔を思い出し、思わずという風に目を細めて微笑んだ。 「ああ、それと。明日の朝はゆっくりと休みたい……そのようにしてくれ。今宵はもう下がってよいぞ、ムーラ」 そう言うと、イズミルはキャロルの眠る寝台の帳の中へと消えていった。 燭台のほのかな明かりに照らし出されたキャロルの寝姿をしばし見つめるイズミル。 キャロルは穏かな寝息を立てながら、イズミルの使う枕をぎゅっと腕に抱きしめて眠っている。 長い睫毛の淵には少しばかり涙の跡が残っていた。 「姫……、すまぬ。可哀想なことをしたな。よほど寂しかったのであろうな……?そなたを起してやった方が良かったのか…?」 王子はキャロルの白く滑らかな頬を愛しげに撫でながら、涙の跡をそっと舐め取った。 上掛けをそっと剥がして、寝台の中に大きな体を滑り込ませる。 キャロルの腕からそっと枕を取り上げて、彼女の小柄な体を胸の中に抱きしめた。 柔らかくて暖かい。そして愛しい。 「姫……私だ……」 キャロルの薄い耳たぶを甘噛みしながら、低い声で囁いてみる。 「起きよ……、私を待っていたのであろう……?」 しかし、キャロルは愛しい男の呼びかけに、心地よさそうな寝息で応えるばかり。 「姫…」 腕の中で安心しきった様子で眠るキャロルの黄金の髪を指で梳きすかしてやりながら、イズミルはさも愛しげに彼女の寝顔を見つめている。 これ程までに眠りが深いのは、おそらく無理をして遅くまで起きていたに違いない。 そんないじらしい、子供っぽいとも言える努力が殊更可愛く思えて、イズミルの口元は自然と柔らかな緩みを見せていた。 キャロルの白く小さな手を、武具を扱い馴れた彼の逞しい大きな手の上に載せてみれば、それは何とも頼りなく儚げに見える。 イズミルはキャロルの手を優しく握り締め、ほんのり桜色に染まる可憐な指先の一本一本に口づけを与えた。 「ふっ……愛しいことぞ。この体の一つ一つが…そなたのなす事のすべてが愛しい……我が妃…私の姫よ」 やがて見つめているだけではあき足りなくなったイズミルは、静かな吐息の漏れる唇に、己の唇を重ね合わせてみる。 少し開いた唇をそっと吸いながら舌を挿し伸ばし、キャロルの舌先を捉えて絡め取る。 唇は触れれば蕩けそうなほど柔らかで、甘やかな舌先は媚薬のように男を酔わせ熱くする。 どんな美姫を抱いてもさほど感動を覚えないイズミルであったのに、キャロルに至っては、接吻のひとつだけで胸の中に何やら妖しい欲望が萌して、心乱される。 キャロルが愛しいくて堪らない。溺愛している。 認めるのは癪であるが、素直にそう思う。 だが、どれだけ可愛がって大切に愛しんでみても、渇望を宥める事ができない。 イズミルのような男の夜伽を務めるには、キャロルはまだ幼く無知すぎてもどかしい。 しかし、そのもどかしさすら、イズミルを夢中にさせる要因のひとつなのだから、もはや手の施しようがないと言える。 そっと啄ばむように始まった接吻は、次第に深く激しいものへと変わっていくのに、キャロルは少し息苦しそうな顔して彼から逃れようとするだけ。 唇を離すと、イズミルはキャロルの頬を優しく二三度叩いた。 「姫……姫……起きよと申すに」 「うん……」 一向に起きる気配を見せないキャロルに悪戯心を起したイズミル。 それならば…と、夜着の合わせ目から、そろりと手を忍び込ませた。 男の手が薄い生地の下で蠢き、まろやかに膨らんだ少女の乳房を撫で回す。 柔らかに眠る先端の蕾をイズミルの指が戯れに弄れば、それはすぐに反応し彼の指の中で固く起立する。 それを更に指先で捻るようにして、感触と女体の敏感さを愉しむ。 かすかに甘い吐息を漏らし始めた腕の中のキャロルを見やって、イズミルは耳元に囁く。 「まだ…起きぬのか?」 キャロルのしっとりとした肌に触れるうち、イズミルの体の奥に熱い炎が灯り始めた。 愛しい娘の体でしか鎮める事のできぬ炎が。 もどかしげにキャロルの夜着を腰まで脱がせて、露わになった乳房を両手でまさぐりながらその先端を口に含み、音を立てながら優しく吸いあげる。 「んっ……んん……」 キャロルの体は明らかに愛撫への反応を見せるというのに、キャロル自身は相変わらず心地よさそうに寝入ったまま。 「まったく!姫……そなたを起すは、まこと難儀ぞ……」 そう愚痴をこぼしながらも、深い眠り故にまったくの抵抗を見せぬキャロルの美しい乳房を思うままに愛撫するイズミルは満悦の至りであった。 いつものように恥ずかしさに涙を浮かべるキャロルを宥めながら可愛がってやるのも良いが、たまにはこんな風に好きな様にキャロルの肌を楽しむのも悪くはない。 そして、眠りながらも甘美な官能の悦びに眉根を寄せ、色づいた吐息を漏らすキャロルの艶めかしさときたら……。 眠りに耽るキャロルの裸の上半身に思うまま唇を這わせ、至る所に接吻の跡を残していった。 しかし、そうこうしている内にすっかり昂ぶってしまったイズミル。 もはやこうなってはキャロルを起さずにはいられない。 肩を揺すり、耳元で名を呼んでみる。 「姫…!姫……、起きぬか!」 「う…ん……王子……?」 「おお、私だ。目覚めたか?」 「……ん………すき…よ……王子……んん……」 それは他愛のない寝言。 キャロルは無意識にイズミルの腕の中に深くもぐり込んで、子猫のように鼻先を胸に擦り付けた。 愛らしいキャロルの寝姿と甘えた仕草に、イズミルはいよいよ高まってキャロルが欲しくなる。 そうでなくとも、この20日間は忙しいばかりで、この愛しい新妻に触れる時間も機会もろくに持てなかったのだ。 キャロル以上に辛い思いを押さえ込んでいたのは、実はイズミルの方である。 我が妻を愛しく大切だと思えばこそ、無理に寝込みを襲ったりせず、この20日もの間、ただ抱き寄せて添い寝だけに終わる実に耐え難い夜を過ごしてきた。 「くそっ…このままでは…おさまらぬ……姫…姫…!!」 イズミルは半ば呆れた顔で、眠り続けるキャロルを見つめていたが、ニヤリと好色な微笑を片頬に浮かべて、片手で彼女の細くくびれた腰を抱き寄せる。 キャロルの腰元を覆う夜着の裾から、もう一方の手を差し入れて彼女の脚の間の秘密の谷を探る。 谷間に咲く花びらの間に指を忍ばせると、すでにそこは蕩けたように熱っぽく、ぬめった蜜に溢れかえっていた。 「む……眠っておるくせに……こんなに潤ませて……そなたは…!」 イズミルは焼けるような激情に流され、キャロルの甘やかな寝息を封じるように唇を覆った。 キャロルと激しい口づけを交わしながらも、己の指で女の蜜をたっぷりと秘芯全体に塗り広げ、濡れた指先で敏感な真珠を捉えてなぶり始める。 花弁の奥に眠る小さな真珠は、男の与える刺激にすぐさま応えて震えだし、指先を押し返すように強く張り詰めて固くなった。 「う……っ……うん………あっ……」 そこを執拗に愛撫してやれば、指の動きに合わせるように薔薇色の唇から漏れ出でる、いとも甘い声。 指先で触れるだけではいたたまれなくなったイズミルは、キャロルの夜着の裾をやや乱暴に腰の上までたくし上げると、眠りこけて正体の無いキャロルの脚を大きく割り開かせた。 目の前に、馥郁たる香りを漂わす女の花園を寛げる。 ――思わず、感嘆の溜息を漏らすイズミル。 髪と同じ金色の草むらは、ごく薄く淡く上部に佇むだけで、可憐な女の器官を隠すに至らない。 すべすべとした色淡いそれ。いまだ処女(おとめ)そのものに見える。 「……美しい……な…」 イズミルは真っ白な内腿を優しく撫で上げ、彼女の潤んだはざまにそっと息を吹きかけた。 じかに触れずとも、キュッと花自身が収縮し、妖しく蠢く様が何とも悩ましい……。 すでに何度もキャロルの体を改め、その甘美さを味わったイズミルではあったが、極度な恥ずかしがりやのこの幼な妻は、秘所を彼の目の前に晒すことに、今だに耐えられない。 無理に脚を開かせようものなら、本気で泣き出してしまう始末なのだ。 泣きじゃくるキャロルを宥めすかし、小さく開かせた脚の隙間から舌を差し伸ばしてそこを愛してやるのがやっとであった。 だからこのように脚を大きく割り開かせて、キャロルのすべてを心ゆくまで観賞するのは、これが初めてであった。 イズミルの指先で散々弄ばれた薄紅色の真珠は、すでにぷっくりと膨らみ、すっかり蜜にまみれて濡れている。 薄く小さな可憐な花びらは、蜜の湧き出す神秘の泉の入り口を護るように重ね合わさっていた。 キャロルの秘唇全体をしとどに濡らす女の蜜が、甘く濃厚な香りを漂わせ、イズミルの口づけを誘う。 「おお…姫よ……なんと愛らしい…」 イズミルは吸い寄せられるように接吻し、舌を伸ばしてそこに滴る甘美な蜜をすくい取る。 愛しい娘のそこは、イズミルの口中で蕩けるように柔らかで、舌で弄れば弄るほど透明の甘い蜜をいくらでも湧き出させ、彼を喜ばせる。 両手でキャロルの細い腰を浮かすように掲げながら、イズミルは愛らしい花を啜るように味わった。 「んん……っ……あ……っあ…………ん……ああっ……んっ…」 イズミルの舌遣いが早まり激しくなるにつれて、キャロルの甘い声も切なげに高まってゆく。 追い討ちをかけるように、弾力のある小粒な真珠をイズミルは舌先で巧みに転がしてやった。 そして、それを歯の先で優しく甘くしごいた時……。 「ん……あ―――っ!!」 キャロルの体は強く弾むように震え、ついに彼女は眠りから覚めた。 「はぁ……はぁ……はぁっ………、お……王子………?」 「ふ……やっと、目覚めたか?…そなたを起すのに苦労したぞ」 イズミルは大きく開かせたキャロルの脚の間に顔を埋めたまま、何食わぬ涼しい顔でそう言って、ひきつづき彼女の秘所を舌先で愛でる。 快楽の中で目覚めたばかりのキャロルは、全身を真っ赤に染めて、羞恥に身を捩る。 こんな恥ずかしい格好で…こんな恥ずかしい事を…! 「あ……イヤ……、王子………どうして?…あの……いや…っ…恥ずかしい……!」 必死で脚を閉じようとするが、両膝を大きく押し広げる男の手の力強さにはとても敵わない。 「…ふ……今更何を……そなたとて寝ながらに悦んでいたではないか………」 「いや……やめて…こんなの……やぁっ…!」 「……止めぬ!」 キャロルは思わず涙声を上げる。 それは羞恥のためか、それとも快楽に咽び泣く声か…。 「今宵はいかにそなたが泣いても…止めてはやらぬぞ」 情け容赦なく舌先は秘所をこねるように蠢き、イズミルの長い指はキャロルの泉の中を優しく愛撫する。 ねっとりと熱い舌で秘芯の中心をなぞるように舐めあげられて、キャロルは堪らず背を大きく反らせた。 「やっ………あ……あんっ………!」 再び大きな熱い波が来るのを感じてキャロルは観念するように目を瞑り、白い手はあてもなくシーツの上をさまよった。 その指をイズミルの手が捉え、しっかりと指を絡め合わせる。 キャロルは彼の大きく逞しい手を強く握り締めながら、激しい絶頂に身を震わせた。 続けざまに二度も登りつめて、すっかり力が抜け切ったキャロルの顔を、イズミルはからかいの色を含んだ表情で見つめる。 「久しぶりだな…姫。そなたにこうして触れるのは…」 顔をそむけようとするキャロルの頬を左手で強引に自分の方へ向き合わせた。 そうしながらも右手はキャロルの乳房に添えて、なおも甘い愛撫を与え続ける。 これは自分のものなのだとでも言いたげに、馴れ馴れしく手の中の膨らみを揉みしだく男の手。 目の淵に涙を溜めて少し怒ったように睨むキャロルを、イズミルは精悍な頬に甘い微笑を湛えながら、からかう様に問いかける。 「……どうした?何故そのような恨みがましい目で私を見る? もっと、私に甘えてはくれぬのか?」 「だって…だって…」 (やっと王子と会えたのに…恥ずかしくて…顔が見られないもの…ひどいわ) クスクスと笑いながら、イズミルは言う。 「眠っている間にひどい事をされたと思っているのか? あんなに可愛がってやったのに…」 「…い…いや………」 「ふん……、嫌ならあんな声が出るものか……こんな風にはならぬ……」 乳房に戯れていたイズミルの指が、ゆっくりと下降して、キャロルの脚の間の蜜を優しくくすぐる。 濡れた淫靡な水音が、キャロルの頬をいっそう紅潮させた。 イズミルはキャロルの鼻先や頬に口づけの雨を降らせながら、甘く掠れた声で機嫌を取ってやる。 「……それに、起せと言ったのはそなたの方ではないか? 耳元で呼んでも、揺すっても、口づけしても起きぬそなたを……私は起してやっただけぞ」 「………」 気恥ずかしさを紛らわす為にそっぽを向いて拗ねるキャロルを、イズミルは手馴れた仕草で宥める。 わざと悲しげな声色で、耳元に悩ましげな吐息を吹きかけながら囁く男の巧妙さ。 「ふふ…嫌われてしまったかな。そなたはもう、私の事など嫌いになったか…? 清らかなそなたを…辱めて…恥らわせ…このように泣かす男など…嫌か?」 その問いかけに、キャロルはビクリと身を震わせ、彼の胸に縋って首を横に振った。 「そんな!…嫌いになんてならない……!王子のこと……嫌いになんて!」 キャロルは涙目のままイズミルを見上げ、真摯な表情でそう訴える。 (おお…なんと可愛いことぞ。私が本気で申したとでも思うのか?) イズミルは愛しくて堪らぬとばかりに、キャロルを抱き寄せると愛の言葉を強引に求める。 「ならば…私を愛していると申してみよ。この唇で」 「……あ…愛して……います……王子。…ほ、本当よ……!」 キャロルにその言葉を言わせる度に、無上の幸福感に満たされ、同時に狂おしい欲望に駆り立てられる。 しかしその喜びを胸に納めて、彼は冷静な顔を取り繕った。 イズミルは、いともさり気無い仕草で自分の衣の前をはだけて見せる。 「そなたがすぐに起きぬから……、見よ。そなたのせいぞ」 「あっ……」 思わずキャロルは両手で口元を押さえ、思わず喉を鳴らしてしまう。 驚くほどに熱くて大きなそれで慰められる時、心も体も幸せと悦び一杯に満たされるのを思い出して。 イズミルは身に纏う衣を大胆にすべて脱ぎ去ると、バサリと床に落とした。 キャロルの目の前にあるのは、見事に鍛え上げられた逞しくも美しい男の裸体。 そして、彼は卑猥なまでの色香に満ちた悩ましい琥珀の瞳でキャロルを見つめる。 見つめられるだけで、ゾクリと肌に痺れが走るような妖しく熱い視線。 「姫……この20日ほどは、そなたを抱いてやる事すら叶わなかった。 さぞ寂しかったであろう…? すまなかったな…今宵は…そなたに償いを致そう。 まだ新婚の身であるそなたを…一人寂しい思いをさせた償いだ。 どこまでも…可愛がってやろうぞ。さあ…来い」 しかしキャロルは猛々しいイズミルの自身を前に、慄いて身動きすらできなくなっている。 仕方が無いな、という風に満足げな笑みを浮かべながらイズミルはキャロルの体を軽々引き寄せた。 寝台の上に向き合って座らせ、キャロルの脚を彼の腰の前に開かせる。 キャロルが恥らっても逃げられぬように、片手で腰をしっかりと抱き寄せた。 そして、引き締まった腹部に張り付きそうになる程に昂ぶったそれに手を沿え、すっかり濡れた花弁にあてがった。 しかしそこに押し入るのはもっと後だ。 充分にキャロルを愛して、満たしてやった後だ。 先端をキャロルの蜜でたっぷり濡らすと、自身でもって愛らしい真珠を擦り立ててやる。 男の動きに合わせて、キャロルも腰を悩ましげに捩らせる。 「あ……お…王子……」 まるで、助けを求めるかのように、キャロルは縋る瞳でイズミルを見上げる。 彼の最も男らしい熱い部分で愛撫されていると思うだけで、もう体は柔らかに蕩け始めていた。 「あっ…………!」 あまりの快感に声すら立てられず息を止めたまま、またも達しそうになるキャロル。 だが達する直前に、イズミルは意地悪にもその動きを止めてしまう。 「まだだ……もう少し…我慢をいたせ」 「王子……王子……いや……ぁっ……」 すぐそこまで来ている快楽のもどかしさに、ヒクヒクと引き攣り震える女の器官を満足げに見つめながら、イズミルは手を止めたままキャロルを焦らす。 青い宝玉の瞳に涙が浮かぶ。あまりに切なくて…。 (この貌が美しいのだ…私を切に求めて涙を流す……) 「どうして欲しい……?」 「いやっ……いや……わかってるくせに……意地悪……意地悪…」 そしてキャロルの瞳から懇願の涙がぽろぽろと溢れ出すと、愛しい妻の願い通りに、再び自身の先端で真珠を愛してやった。 キャロルは感極まって泣き叫びながら、イズミルの逞しく鍛え上げられた肩にしがみついて必死に快楽に耐える。 イズミルとてキャロルの熱く潤んだ花園で敏感な部分を刺激されているのだから、そう長くこうしていられない。 時折、彼の引き締まった唇からも、悦びに耐えるくぐもった声が漏れる。 それでもイズミルは何度もキャロルを焦らして散々泣かせ、ついに彼女が絶頂の叫びを上げた瞬間に、荒々しく寝台に押し倒し、熱く怒張した自身を雫の滴る花びらの間に深く突き立てた。 男の体は女に、女の体は男に無上の悦びを与える。 目くるめく快楽にイズミルもキャロルも我を忘れて、互いの体がもたらす悦楽を貪るように求めあった。 「あ…ああ……王子……王子……寂…しかっ…たの…! お願…い……王子……好き……好きよ……傍に…いて……ねぇ……」 激しく腰を抱かれ、男に愛されながらもキャロルの唇から絶え絶えに漏れる言葉。 その言葉に煽られて、際限なく女を深く求めてしまうイズミル。 艶めかしい腰の動きでキャロルを攻めながら、彼もまた掠れた声で囁く。 「おお……愛している……もう…寂しい思いなど…させぬ…!」 啜り泣くようなキャロルの嗚咽に混じって、低く押し殺したイズミルの声が響く。 女の泣き声が高まるにつれて、男の動きはいっそうに激しさを増す。 それらは、湿りを帯びた閨の濃密な空気に混じって溶けてゆく。 二人の長い夜はまだまだ終わらない………。 ―END― |