「なんだと〜?!この野猿が!」

        「なんか文句あんのかよ?!赤毛猿!!」

        顔を合わせればケンカしかしないこの2人。

        今日は、海南との初の練習試合。

        ウィンターカップ予選以来の顔合わせになったこの日は、両高校の3年生の引退試合になる。

        普通なら感動で試合を終えるはずなのに、試合終了間際にちょっとした小競り合いから、

        試合が終わってもこの状態である。

        お互いサルと罵りながら、すでに殴り合いにまで発展してしまっている。

       

        「赤毛猿のくせに生意気なんだよっ!」

        「そりゃそっちだろ、野猿っ!」

        すでに両キャプテンは怒るを通り超えて呆れている。

        皆着替えはじめているのに、まだユニフォーム姿でいる。

        2人は、試合終了間際、清田がファールぎりぎりで花道をぶっ飛ばしたのが原因で揉めているのだ。

        ファールだ、と審判である牧に訴えたのだが、今のはファールじゃないと言われ、仕方なしにぐっとイライラを

        飲み込もうとした時に、清田が愚かにもちょっかいをかけた・・・・ということなのだ。

        「うっせー!あれくらいでファールだなんて言えねーだろうが!」

        「俺の時はファールで、なんでてめーの時はファールじゃねーんだよっ!!」

        「ファールはファールなんだよ!!あれくらいでファールだなんて言ってるからてめーは流川に勝てねんだよ!」

        流川・・・という言葉を聞き、花道の頭の中に雷が光った。

        「誰が流川に勝ってねーだと?!」

        ケンカにおいては両バスケ部内ではピカイチの花道の右ストレートが、清田の頬を掠る。

        「いって〜〜〜っ!!」

        途端、頬を押さえて清田は大きく仰け反った。

        清田の左頬が紅く腫れている。

        「て、てめー!今マジでやりやがったな〜!!」

        「あ、わざとじゃないぜ?」

        清田が避けられなかったのが凄く意外で、思わず花道は謝ってしまった。

        「こーんの、大馬鹿者めっ!!!」

        まさか花道が本気で殴るとは思っていなかったから、赤木は慌てて花道の首根っこを掴んだ。

        「スマン、清田・・・」

        花道に大きなげんこつを食らわせてから、赤木は呆然としている清田に声をかけた。

        清田は左頬を押さえて、そのまま動かない。

        「おい、大丈夫か?」

        三井が動かない清田に手を差し伸べる。

        「あいつ昔ケンカじゃ右に出る奴はいないってくらいケンカ早い奴でな、俺も昔殴られたが、かなり痛かったぜ」

        三井はさも痛そうに頬を押さえてみる。

        清田は初めてその事を聞いて驚いた。

        ケンカ早い奴とは思っていたけど、そんなに強かったのか・・・。

        掠っただけの頬がじんじんしてきた。

        「・・・あれ・・・?ノブ、口切れてない?」

        神の言葉に、唇に指を添えてみると、血が付いていた。

        「おい、花道。そんなに強く殴るなよ〜」

        「ふぬ?違う、掠っただけだ、りょーチン」

        「ウソつけよ、掠ったくれーで血が付くかよ」

        すっかり悪者になってしまった花道を尻目に、神がノブの唇にハンカチを押しあてようとした。

        「待て、神」

        それを赤木が止める。

        「ハンカチより、保健室に行ったほうが良い。この大馬鹿に連れていかせるから、先に着替えていてくれ」

        「でも・・・牧さんは・・・?」

        頭をガシガシとタオルで拭いていた牧に承諾を得ようとする。

        「ああ。いいさ。清田にだって落ち度はある。そう甘やかす事もない」

        牧は少し怒っているようだった。

        「ほら、桜木。ちゃんと保健室まで連れて行くんだぞ!ケンカしたら承知せんからな」

        赤木の低い声に、仕方なく花道は清田に付いてこいと手でジェスチャーして、部室を後にした。









        保健室までの道のりは、短いはずなのに、すごく長く感じた。

        時々後ろを振り返って清田がちゃんと付いてきているかを確認しながら前に進む。

        清田は、終始うつむいたままだ。

        わざとじゃないのに・・・・怒ってるのかな・・・?などと花道は考えながら、前を見ると、やっと

        保健室が見えてくる。

        「ここだ」

        花道は言うと、がらがらとドアを開けた。

        「センセー、いねーのか?」

        静かな保健室には、もう誰もいない。そんなに遅い時間ではないのに。

        「仕方ねーな。おい野猿。ここに座れ。俺が看病してやる」

        「い、いいよ、俺自分で出来るし」

        首を振って言う清田を無視して、花道は糧に戸棚を開けて、見慣れているハズの瓶を探す。

        「あ、あった」

        奥そこに置いてあった小瓶を手に取る。

        「いーから座れ。俺が殴ったんだ。俺が看病する!」

        ほぼ強制的に座らされ、花道は小瓶の蓋を取った。

        「少し上向け。・・・もうちっと・・・そうそう」

        クリームを指に乗せ、ゆっりと切れている唇に塗りつける。

        「いってっ!」

        「あっ」

        染みた拍子に顔を上に動かしたせいで、クリームが派手に清田の顔に付いてしまった。

        「何すんだよ!!」

        清田は顔を真っ赤にして怒り出し、近くにあったティッシュで顔を拭き始めた。

        「てめーが動くからだ!じっとしてろ!!」

        「だから自分でするって言ってんだろ!!」

        「俺が殴っちまったんだから、俺がするって言ってんだろうが!」

        「こんな傷、舐めときゃ直るんだよっ!馬鹿野郎!看病したいんなら、舐めてみやがれっ!」

        カチンと来た花道は清田が言ったせりふなんて考えもせずにそれを実行しようとした。

        「なら舐めてやるよ!!!」

        花道は清田の首根っこを掴んで自分のほうに寄せ、ティッシュで拭き終わった顔に唇を寄せた。

        「えっ・・・・」

        ねっとりとした感触が、清田の唇に与えられる。

        傷口を花道の舌で舐められると、チクッと痛みが走る。

        「・・・っ・・・」

        その舌は、おそらく無意識のうちに、清田の口の中に侵入した。

        「ちょっ・・・さくらっ・・・ぎ・・・」

        わずか数秒ではあったが、花道の舌は清田の口腔で暴れたあと離れていった。

        「へ!どうでぃ!!」

        と、花道は言ったあと、自分がした事に遅蒔きながら気が付いた。

        目の前では、口を押さえて真っ赤になっている清田がいて、背筋に電気のようなものが走った。

        自分が彼にした事は、間違いなく・・・

        「・・・え?あ、あれ?俺・・・もしかして・・・今・・・」

        清田は事の重大さになにも言えない。

        「わ・・・わりい・・・今の、わざとじゃないぜ・・・?」

        花道も真っ赤になって、慌てて行為を否定し始める。

        今のがわざとだとかわざとじゃないとかの問題の前に、清田は今、自分が凄く変な事になっているのに気が付いた。

        花道のキスが・・・気持ち悪くなかったのだ。

        キスくらいの経験ならあるのだが、その中でも、一番気持ちよかったかも知れない・・・。

        そんな事を考えている自分が、すごく不思議で仕方がない。

        ただ、今硬直してるのが、いきなりの事で、びっくりしてるからだという事に気付くのには少し時間がかかったが。

        「・・・その・・・悪い・・・」

        花道はすっかり元気をなくし、しょぼんとしてしまった。

        花道とて、何故自分があんな行為に出たのか、判らないでいた。

        ただ、安い挑発に乗ってしまったとは思うが、何故、清田の口腔に舌を差し入れてしまったのだろう。

        もちろん、花道にとってはこれがファーストキスになってしまうわけだが。

        「・・・・行こう・・・・」

        清田がゆらゆらと立ち上がり、真っ赤な顔を花道に見せまいとして、すたすたと歩き出してしまう。

        なんか、花道と顔を合わすのが、すごく恥ずかしいのである。

        「お、おう・・・・」

        それは花道も同じらしく、清田との距離を少しあけて、後を追っていった。













        「遅ぇー、花道!!」

        やっと部室に戻ったころには、すでに20分の時間が過ぎていた。

        「保健室行くのに何でこんなに時間がかかるんだよ」

        「それは・・・・その・・・」

        「まあ、良い。早く着替えろ」

        牧が呟いて、清田のカバンを取ってきてくれる。

        「ありがとうございます・・・・、牧サン」

        「お前もだ、桜木。・・・まったく、保健室に行くだけなのに・・・」

        ブツブツと文句を言いながら赤木は花道のカバンを取ってきてくれて。

        やっと2人は制服に着替え終わった。







        「じゃあなー!!牧ぃー」

        海南として最後の試合を終えた牧達海南の3年生は、このまま海南大に上がると言う。

        赤木は深体大への入学が決まっていて、三井は海南大に行く。

        「今年のインハイも負けないよ、宮城」

        海南の新キャプテン・神が、宮城に叫んだ。

        「俺等も負けねーよ!!」

        宮城の返事に、手を振って、海南の選手達は帰っていった。

        花道は、どんどん小さくなっていく、清田の背中をずっと見つめていた。

        保健室で感じた、背筋を電気が走り回るような感覚は、一体なんなんだろう・・・・。

        真っ赤になった清田がやけに可愛く見えてしまった花道は、不思議なモヤモヤを感じていた。

        「はーなーみーちー!追いてくぞ!!」

        「ま、待ってくれよ、ミッチー!」

        その不思議なモヤモヤを、とりあえず忘れて、花道はラーメン屋にくり出すと行った三井の言葉を思い出して、

        彼等の後を追った。



        一方。

        「どうした?清田。顔真っ赤だぞ?」

        「あ!な、なんでもないですよ、牧サン」

        慌てて首を振って、清田は否定するが、皆は判っていた。

        さっきから紅くなったり、困ったような顔をしたりしていたから。

        目ざとい神なんか、わかっているのに口にはしなかった。

        「また桜木とケンカしたのかい?保健室に行く時に?」

        「い、いや、ケンカなんて・・・・」

        思い出すだけで、顔がさらに朱に染まってしまう。

        俺、一体どうしたんだよっ・・・・。

        そんな清田を見て、神は何かを悟った。
        
        (へえぇー・・・・・。いつもケンカしてるのは、やっぱり仲が良かったからなのか・・・・)
       
        「良かったね。仲直りしたんだ」
       
        ぽんと清田の肩を叩いて、神は笑顔で言った。
        
        「な!何言ってるんスか、神サン!誰があいつなんかと・・・っ!!」
       
        (誰が、あんな奴と仲直りなんかするかっ!男に冗談でキスしてくる奴なんかに、誰が・・・!!
       
        ・・・でも・・・俺、あいつとのキス・・・イヤじゃ、なかったんだよな・・・)
     
        そう思うと、何か体の奥のほうが変な感じになるのだ。
    
        「・・・俺、変なの・・・」
     
        「何か言った?ノブ」
       
        「い、いえ!何も言ってません!」
      
        「ようし!じゃあ、さっさと学校に戻って、引退祝い、しようぜ!」
      
        武藤の声に、皆が頷く。
       
        「最後に俺達3年とお前等で試合、しようぜ」
        
        キャプテンの発言に、さらに深く頷く。
  
        桜木との事なんてとっとと忘れて、今は先輩達と過ごせる僅かな時間を大事にしよう。

        なんて、一生懸命思っているのに、桜木の事、考えちゃうのは、なんでなんだろう・・・?

       

         始まったばかりの不思議な気持ちに、悩める2人の、16歳の初冬であった。
         

 

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