大きな太陽が空を紅く染めながら沈めば、俺は桜木に会うことが出来る。
「―――っした!!」
部活が終わって、俺はいそいで部室になだれ込み、着替え始める。
「おい仙道、そんなに急いでどこいくんだい?」
いそいで部室に戻ったはずなのになんで見つかっちゃうんだ、と思いながら、俺は声の主を
振り返った。
「こ、越野・・・・、だから、湘北に・・・」
「前もそう言ってたよな・・・?なんでいつもいつもキャプテンの仕事を俺がして帰らなきゃいけないんだ?!」
「い、いやぁーそれが副キャプテンの仕事じゃないかぁ。キャプテンが居ないときは越野がキャプテンなんだから」
「いっつもお前が先に帰るからだろう!今日という今日はきっちりキャプテンの仕事をしてもらうからなっ!!」
ゴンッと頭を殴られてちょっぴりへこんだツンツン頭を優しくさすって、俺は越野を恨めしそうに見上げた。
越野はいつも俺が監督に怒られるんだからな・・・と呟いている。越野が俺に背を向けた。
・・・今がチャンス!!
俺はカバンを持って、越野の一瞬のすきをついて部室から飛び出した。
「あーーー!!仙道っ!!」
不意打ちを食らった越野も一歩でるのが遅れて、仙道はどうにか無事に学校を出た。
「ふい〜〜。明日が怖いけど、まあいいや」
スポーツバックを肩に掛けて、駅へと向かった。
彼はその頭と図体のでかさですぐ分かるんだ。
今日も彼は噴水の縁に腰掛けて、俺が来そうにもない道を俺を捜しているかのように見ている。
ふふふ・・・今日も驚かせてやろう・・・。
花道が見ている方向と逆のほうから忍び込んで、思いっきり背中を押してやった。
「わっ!!」
「うわあ!」
「・・・え?」
途端、俺の視線から桜木が消えて・・・・。
ザッブーン・・・・・。
「え?まじで・・・??」
桜木は、噴水の中に落ちてしまった。
「だーかーらー、悪気はなかったんだって・・・本当にごめんなさい!」
水浸しのまま、桜木が進む道を謝りながら歩く。
「ごめんじゃねーんだよっ!どーすればいいんだよ、これ!!」
桜木は、濡れたコートを俺の前に突きだして、顔を真っ赤にして怒った。
「じゃ、じゃあさ、早く乾くとこに行かない??」
「んなところあんのかよ、こんなところに」
桜木と待ち合わせしたのはけっこう設備の整った街で、コインランドリーみたいなものはまったく見あたらなかった。
桜木は、きょろきょろと辺りを見回して、コインランドリーを探しているらしい。
「ほら、あれ」
俺は指で、服を乾かせる物があるところをさしてやった。もちろん、桜木がどういう反応をするのかわかってね。
「あれって・・・・・・・・」
ほら。黙り込んだ。次に来るのは、怒れ狂った怒声だな。
「あれのどこが乾くんだ!!!!!」
桜木は、ラブホを目の前にして、俺の想像通り怒声を浴びせたんだ。
「ほらほら。良くドラマとかでやってたでしょ?女優さんとかが、シャワー浴びたあと髪ドライヤーで乾かしてるでしょ?」
「ふぬ????そうだったか?」
「そうそう!ドライヤーがあれば、ちょっと時間かかるけどなんとか乾かせるぜ」
「・・・・乾かせる・・・・」
「そうそう」
よし・・・桜木をラブホに連れ込めれば、俺の勝ちだ・・・!!
告白して以来何もなかった俺たちの関係も、やっと人並みに恋人って言えるものに近づいてきたっ!!
だけど、そんな俺の思考が読めてしまったのか、桜木は俺の顔をいきなり睨みつけてこう言ったんだ。
「・・・・センドーの考えてる事なんて、俺には分かってるんだからなっ・・・!
変な事したら、絶交だかんな!!」
「(`ロ´;)」
な、なんで判るんだろ。俺、そんなに顔に出やすいかなー・・・??
「いいか?ドライヤーだけの為にここに入るんだからなっ!!金はもちろんセンドー持ち!変な事したら絶交!」
「・・・はぁ〜〜い・・・」
ちぇ・・・。今回はダメだったか・・・。
休憩を取ったので、あんまりお金が掛からなかったので、ひとまず良かった。
さっきからドライヤーで乾かしているのだが、桜木のコートを乾かすのにはもう少し時間がかかりそうだ。
浴室にあったバスタオルを下に引いて、暖房の近くに持っていって、ドライヤーの風力を最大にして20分程乾かして
いると、やっとじめじめ感が取れてきた。
「センドー、じめじめしなくなってきたな」
「うん。あと少しで乾くね」
もう一枚バスタオルを持ってきて、コートの上に掛けて少し押しつけると、バスタオルに水分は付かなくて、なんとか乾いた
らしい。
「あー!!!乾いたよー桜木ー」
途中から乾かすのに飽きてしまって、テレビを見始めてしまった桜木を呼び、コートを羽織ってもらい、これくらいで良い??
と訊ねる。
「おう。これだけ乾かせばもう外に出ても寒くないし、大丈夫だな!!」
「はあ・・・・・疲れた・・・・」
もう二度と、桜木を驚かすのはやめようと心に決めようとした時だった。
「ありがとな、センドー」
俺にはキラキラと可愛さ200%並みに見える極上の笑顔を浮かべられちゃうと、また脅かしたいなぁーと、思っちゃうんだよね。
どうしても、可愛くて、絶対に手放したくない相手。
俺にとってはそれが桜木なんだ。
よく意地悪とかしちゃって大嫌いとか言われちゃうのはすごく悲しいんだけど、それでもいじけてる桜木の顔とか、どーしても
見たくなっちゃうんだ。
でも、本当にいやがる事は出来ないんだ。
惚れた弱み・・・ってやつ?
とにかく、俺、桜木に強引に迫れないんだよね。お許しが出るまで、じっくりと待ってるつもりなんだ。
う〜・・・・ん。でも、俺がそんなに長い間、我慢出来るとは思わないけどねー・・・・。
駅への道を歩いているうちに、今日はコートを乾かす以外に何もしてなかった事にやっと気が付いた。
「今度こそ、一緒に遊ぼうね」
「おう!!今度は絶対まけないからな!!あのゲーム!」
「え?まだやんの?桜木もうちっと上手くなってから俺に挑戦しなよ」
「ふぬー!何を言うかこの天才に!!天才は練習なしでもセンドーに勝てるんだ!!」
「はいはい。じゃあ、次桜木が負けたらどうすんだ?」
「うーんとな・・・じゃあ、俺がちゅうしてやる!!」
「え?まじで?」
「おう!天才に二言はなーし!」
そう言って、一度も俺に勝った事ないのに・・・そんな約束していいの?桜木♪
手を繋いで駅まで歩く。
そんなのも、すごく幸せなんだよね、桜木・・・。
翌日・・・・、2人はゲーセンへと繰り出した。
両手には、それぞれ100円ずつ握られている。
「俺が勝ったらちゅうな」
「俺が勝ったらセンドーは1週間俺にマックを奢るんだからな」
チャリン・・・・・