「どあほう」
    「な、なんだとぉぉぉ!!!」
    「そんなドリブルじゃ、俺なんか抜けねー」
    「うるせーよ!抜いてやる!!」
 
    湘北の他称スーパールーキー・流川楓と、海南大附属高校の自称ゴールデンルーキー・清田信長は、
    合宿中なかよく喧嘩を始めた。
    恋人同士だというのに、顔を合わせればケンカしかしない。
    きっかけは本当にくだらない事で、ただジャンプボールで清田が流川に負けたことから始まった。
    いつもは流川に闘志を燃やす花道が、赤木と魚住と牧そして仙道と一緒にリバウンドの練習をするため、
    この体育館にいなかったのが何よりの救いだった。
    そして、この2人を進んで止める人もまたこの体育館にはいなかった。
    清田が低い姿勢で流川にフェイクをいれて左から抜こうとすると、流川はそれを読んでいて、ボール
    のある手を思い切りはたいた。
    「あー!!!」
    「ふん。チョロイな・・・」
    「くっそ〜〜っ!!!」
    流川は必死に追いすがろうとする清田を無視するようにダンクを決める。
    「うちの10番よかマシだけどな・・同じくらかな・・・?」
    「な・・・っ!!俺が赤毛ザルより下だって言いテーのか?!このキツネ!!」
    「誰も下だなんて言ってねーだろーが・・・」
    「同じ意味なんだよっ!!」
    「うっせーな、ギャ−ギャ−ギャ−ギャ−・・・どあほうと同じくらいどあほうだ・・・」
    「だから赤毛ザルと比べんな!!」
    「・・・・野猿だから同じだろーが・・・」
    「比べんなっつってんだよ!このキツネッ!!」
    ゴール下で口喧嘩を始めてしまった2人に、大きく溜め息をついて、やっと神が動いた。
    「いい加減やめなよノブ。うるさいし迷惑だよ」
    「だって神サン、このキツネがっ・・・」
    「流川がキツネならノブは猿でしょ」
    「じ、神サンッ!」
    「先輩に猿って言われてんの・・・プッ・・・」
    「こ、・・・っこのキツネヤロォォォォ!!!」
    「ノブ!!あとで牧さんに言いつけるからね」
    海南の最終兵器『牧 紳一』の名を出せば、途端清田は大人しくなる。
    「神サン!牧さんには言わないでくださいよぉ!」
    「流川。お前もいちいち構うなよ」
    湘北の新キャプテンもやっと動き始めた。
    「新キャプテン・・・」
    「流川。こっち来て3メンだ。三井先輩と俺とお前対、藤真と神と福田だ」
    「ういす。新キャプテン」
    「・・・その新キャプテンってやめてくれ」
    「うす。し・・・キャプテン」
    清田を無視して、流川は宮城と一緒に向かい側のコートに行ってしまった。
    「ほら、ノブももう忘れて、武藤サンや早くフリースローの練習しなよ」
    清田の頭をぽんぽんと叩いて神はほうっと溜め息をついた。
    「牧サンには言わないであげるから。せっかくの合宿なんだから仲良くしなよ」
    「・・・・・」
    「清田、こっち来いよ」
    陵南の越野が清田を呼んでいる。
    彼も陵南の問題児の面倒を見ているので、神の大変さは良くわかる。
    「神も大変だな」
    「越野こそv」
    神は軽く手をあげて、向こう側のコートに入っていった。
    渋々、清田は越野の横に行き、越野のフリースローを見つめる。
    「・・・・覚えとけ、あのキツネ・・・・」
    「ほら清田、お前の番だよ」
    「は、はい」
    ボールを構える時は試合だろうが練習だろうが緊張してしまう。
    清田は手首のスナップを効かせて頭の前にあったボールを優しく放った。
    ボールは放った直前はまっすぐだったのに、ゴールに近づくにつれて少しずつ左にずれていった。
    予想通りガツンといって、ボールはリングに嫌われ落ちてしまった。
    「あー!!!」
    「清田、お前は左に少し力が入ってるぞ?あと、リリースがちょっとおかしい」
    「そ、そーッすか??」
    話がバスケになって、ようやく清田にも集中力が出てきた。
    越野はそのあと、親切にも夕飯の時間まで清田にフリースローを教えたのだった。












     「なんでそうケンカばっかするかなぁ〜」
     神はほう・・・と溜め息をついた。
     横で必死にごしごしと体を洗っている清田に言ったつもりなのだが、当の本人はまったく聞いていない。
     「へ?俺ッスか?」
     じとーっと見ていたらやっとその視線に気付いたらしい。
     「海南でノブ以外にケンカするやつなんて、いないでしょ」
     「む・・・」
     さっさと身体を洗い、神は湯船につかる。
     神の言葉に、牧が反応する。
     「なんだ、清田は誰かとケンカしてるのか?」
     頭にタオルを乗っけている姿はとってもオヤジっぽかったが、そんな事を言ったら明日の練習メニューが自分達だけ
     特別なものになりそうな気がして、なにも言わない神と仙道だった。
     「いつもの事ですよ。ジャンプボールで流川に負けたのが悔しくて、そのあと小一時間程ずっとケンカしてましてね」
     「うーん・・・。確かにいつものことだな」
     牧にまでちょっと納得されてしまって、清田は慌ててザザーと身体を流し、湯船につかりながら口を開いた。
     「いつものとは違うんですよ、今日のは!」
     「どこがどう違うんだい?見るからにいつものでしょうが」
     「うっ・・・そ、それはそーですけど・・・ッ!!」
     「どーせ明日になったらまた別の事でケンカするんだろう?」
     「うっ・・・って、ってか、神さんだって牧サンに言わないっていったじゃないですか!ひどいッスよ!約束破って!」
     「そ、それは、悪かったよ!つい普通に聞いてくるから・・・っ!でも今はそんな事より!!ケンカしちゃだめだって」
     「ついじゃないッスよ〜!!約束破るなんてヒドイッス!ヒドイヒドイヒドイヒドイヒドイ!!」
     「だから謝ってんじゃんか!!」
     清田と神は湯船の中で立ち上がって喧嘩を始めてしまった。
     2人はクラブ一の仲良しで、たまにこういう口ゲンカはよくやっていたが清田はともかく、神の方はわりと大人し型
     なので、普段の神しか知らない人は勿論、部員達でも、牧までもが突如始まるこのケンカにはいつも驚く。
     「お、おい、ちょっと・・・」
     牧が止めようと声をかけたが、そんなことはお構いなしである。
     仙道なんかは、いつもにこにこしている神が聞くもおぞましい恐ろしい言葉を発しているのにすでに固まっている。
     「この際だから言っとくけど、お前はゲームに対する集中力ってのがないよ!なんであんなにフリースロー外すわけ?!
     仮にも海南の10番背負ってる奴が本番に弱いですだと?ふざけんな!本番どころか練習ん時も入ってねーだろーが!
     そんなんで牧サンの後を継ごうなんて、お笑いだね」
     「普通そこまで言いますかね?!仮ってなんですか、仮って!!俺は自分の力で10番取ったんですからね!!実力
     ですよ実力!!神サンこそ、もうちょっと筋肉つけたほうがいいんじゃないんスか?!そんなんだと、桜木とかにぶっ飛ば
     されちゃいますよ?フリースローは湘北戦と昨日くらいしか外してないじゃないッスか!!」
     「ご忠告ありがとう!でも俺は打ったシュートは外さないから。どっかの10番さんと違ってね。どうせおおかた流川にでも
     見とれてたんだろう?あ〜嫌だねぇ〜。恋人に見惚れてシュート外すなんて!!」
     そこまで言って、神はしまった・・・と両手で口を押さえた。
     「じ、神サン・・・・・!!」
     「え??恋人に見惚れてシュートを外す・・・??」
     仙道は今の神の発言を聞き逃さなかった。
     「・・・馬鹿め・・・・」
     清田と流川の事を知っている牧は、ほうっと溜め息をついた。
     「ノブ君、流川と付き合ってんの?」
     仙道の目はまんまるである。
     そのまんまるな瞳にまっすぐに見つめられて、清田はばれてしまった恥ずかしさを顔中に出してしまった。
     さっきまで好きなだけ悪口を言っていた神も、しゅんとしている。
     「ねえノブ君。それマジなの??」
     質問系で言ってるが、あきらかに仙道は確信を持っているはず。そう思った清田は、諦めて首を縦に振った。
     「へえ!!そうなんだ!!俺達だけかと思ってた☆仲間がいたんだね!」
     仙道の口から発せられた、思いもしなかった言葉に、清田はえ・・・?と呟いた。
     「ば、馬鹿!何言ってるんだ、この馬鹿!!」
     牧が慌てて仙道の口をふさいだが、さっきの一言と牧の行動で、神は仙道の交際相手を見ぬいてしまった。
     清田は全然わかってないみたいだが。
     「お前、風呂に入りすぎだから頭がおかしくなるんだ!もう出るぞ!神!仙道!」
     牧は2人を連れだって、風呂場から出ていこうとする。
     「ちょ、俺も行きますから待っててくださいよ!」          
     慌てて湯船から出るが、牧のきつい一言。
     「ダメだ。お前、まだ頭洗ってねーだろ。洗ってから出て来い」     
     げ!!忘れてた。仕方なしに頭をごしごし洗ってると、バタンとドアが閉じたおとがして、清田は一人置いてけぼり
     を食らった事に気付き、なんだか悲しい気持ちになってしまった。
     こうなったら風呂から上がったら絶対に牧の部屋に行ってやる・・・と心に決めた清田だった。











    牧のところへ行く階段を駆け下りる。
    ノックするなんて礼儀など忘れてバンッと部屋を開ける。
    「あ??」
    牧が仙道に乗っかって流川に何か話しかけている光景が、清田の目に飛び込んできた。
    「あ・・・れ??牧サン?」
    あっけにとられている清田の頭上に、おおきなたんこぶがつくのには時間がかからなかった。
    「先輩の部屋に入る時くらいノックしやがれ!この大馬鹿野郎!!」
    ガツンと大きな一発を食らい、清田は涙目で頭を押さえながら言い訳をしようと顔を上げた。
    居心地が悪そうに頬を薄く染める仙道と流川が何やら話している。
    「ま、牧サン、ノックしようと思ったんスけど、ちょっと・・・」
    清田の言い訳を最後まで聞かないうちに、そんな事はどうでもいいというかんじに牧と仙道が立ち上がった。
    「牧サン??」
    「じ、じゃあ、俺は仙道の部屋にでも行ってるから、あとはよろしく!流川」
    「あは、あははははは。じゃあね、ノブ君」
    「??」
    ドアが閉まって、流川と2人きりになってしまった。
    「変なの・・・・」
    なんで2人してあんなにいそいそと・・・。俺の顔見るとびくってしてたし。
    言ったものの、だんだんと居心地が悪くなってしまった。
    流川は何も言わない。口を開こうともしない。
    何か言いいたげなのは、なんとなく分かるのだが・・・。
    一向に口を開かない。
    視線が何かを言っている。だけど清田にはその視線の意味が分からない。
    付き合いはそれなりに長いけど、全然何が言いたいのかは判らない。
    が、何か言いたがっているのくらいはわかるようになった。
    ・・・仕方ねーな・・・
    「なんだよ、流川。言いたい事あんのか?」
    すると、流川は落ち着いたみたいで、少し間を空けてから言った。
    「牧・・・先輩と、仙道が、言ってた」
    その訳のわからない発言に、清田は一瞬戸惑ったがそれを顔に出さなかった。
    「何を言ってたんだ?牧サンと仙道が?」
    すると流川は、何かを言いかけようとしてはやめ、また言いかけようとしてはやめた。
    「・・・何言ってたんだ?牧サンと仙道が・・・」
    清田はこみ上げてくる怒りをぐっと押さえて、再度質問をした。
    すると流川は、いきなり清田の上に乗っかってきたのだ。
    「うわ、なんだよ!!」
    焦る清田に、心を決めたらしい流川はドアップに映った。
    「どーすれば、清田を押さえ込めるかのほーほーを教えてくれた」
    「ま、牧サンが?!」
    「・・・・・・さっき、実践してくれた」
    「じ、実践・・・?・・・!あ、さっきの、牧サンが仙道にのしかかってたやつか?!」
    そんな事より自分の心配はしなくてもいいのか、と流川は思ったが、別に反抗しないのなら
    いいや・・・と考え、どんどん先に進もうとする。
    「ちょ、待てこのキツネ!」
    清田がちょっとでも嫌がるそぶりをみせると、流川はさっと清田の上から飛び退いてしまった。
    それだけで、流川がいかに清田を大事にしているかがわかる。
    恋人同士になったはいいものの、2人共バスケしかやってなかったので、色事のほうは何一つ知らなかった。
    付き合ってもう6か月になるけど、未だにファーストキスもしていない2人である。
    当然、自分達では何も知らないので、恥ずかしいが人に聞くしかない。
    それを何故か、流川は牧達に聞いたらしい・・・というところまでは理解できた。
    「・・・で、なんでいきなり襲われないといけないんだ?」
    「・・・仙道が、そうしろって・・・」
    流川は少し元気がないように見えた。
    折角のチャンスだったんだろうな・・・。そう思って清田は顔だけで笑った。
    いや、笑い事ではない。流川は自分より10センチくらい高い男である。
    もし溜まりに溜まって暴走して襲われたとしたら、いくら自分が男でも止める事は出来ないのではないか。
    それに、自分だって、そういう欲望がないわけでもない。
    なんとなく気恥ずかしいだけなのだが・・・。
    「・・・じゃあ。キスだけでも・・・」
    なんて流川の発言に、耳まで真っ赤な清田。
    流川は無言で清田の返事を待つ。
    「・・・いいよ・・・」
    途端流川は清田を抱きしめた。
    「な、なんだよ、」
    「・・・スッゲー嬉しい・・・・ドキドキしてる・・・」
    耳元で囁かれた声に更に赤くなってしまう。
    落ち着いてくると聞こえる、流川の鼓動。
    なんだか、宙にも浮くような気持ちになった。
    「清田・・・」
    「流川・・・」
    彼らにとっては最高のムードで、初めてしたキスは。
    ガツン・・・・・
    「っつ!」
    歯と歯がぶつかった、痛いキスだった。
    そのあと2人で笑って(流川は笑わなかったけど)、もう一回キスをした。







    牧の部屋を出てもまだほわほわしている2人の肩をポンと叩く人がいた。
    「あ、神サン・・・」
    神はごめんねのポーズを取って清田に頭を下げた。
    「さっきはごめん。言いすぎた。ごめんね」
    先輩に頭を下げられて、清田も慌てて頭を下げる。
    「そんな、こっちこそ、先輩だって事忘れてすっごい失礼な事・・・」
    そう言ってから気付くのだ。自分が先輩にどんなヒドイ事を言ったのかを。
    「くそ生意気で、すいませんでした!!」
    「でね、お詫びの印にビックニュースがあるんだけど」
    神は流川にもおいでおいでと手招きをする。
    素直にちょこちょこ来た流川と清田の肩を両手でつつんで、神はさっき掴んだばっかのニュースを口にした。
    「さっき風呂入ってる時に判ったんだけど、仙道のお相手、わかったんだ」
    同性の恋人がいると告げたのに、『仲間がいたんだ〜』なんて返事をするのだから、仙道にも男の恋人がいると
    神は言った。
    「誰だと思う??」
    神はさも嬉しそうに告げた。
    「ナント、牧さんなんだ!」
    「牧さん?!」
    なんで?!と声をあげる清田に対して、流川はやっぱりね・・・という顔で神を見た。
    こういう、タイミングの悪いところにくる人を、神は知っている。
    ほら。来た。しかもペアで。
    「俺がなんだ?清田」
    「うぎゃ!!」
    ん?と首を傾げる牧に対して、仙道はやっぱりばれたか・・・といった顔。
    ・・・わざとばらしたんじゃないの・・・?
    と神は思ったが、ただにこにこしているだけだった。

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