公園のコートは、いつも誰もいなくて、広々と使えるのでとても便利だった。

          いつものように今日も朝6時にコートの前に立って、シュート練習を始める。

          体がまだ起きていない始めはなかなか入らないのだが、数10本も打っていると、

          自然と入るようになってくる。

          そうした頃に、いつもあいつはやってくるんだ。

          「よう、三井」

          公園のフェンス越しに俺に声をかけてくるこいつは、毎日自転車通学をしているらしく、

          いつもウォームアップをせずにぽんぽこシュートを決めるんだ。

          「・・・よう、藤真」

          「今日も早いな。三井は遅刻魔だって赤木が言ってたぜ?」

          なーんて、顔には似合わず冷たい事を言う。

          県内トップクラスのポイントガードである藤真は、言うまでもなくシュートも上手く、

          少なくとも俺が見ている限りではあまり外さない。

          ほら、また決めた。

          「どうした?三井。腕が止まってるぞ」

          それでも、こいつがどんなに綺麗なフォーム持ってても。

          どんなに綺麗な顔してても。

          「俺の力に恐れをなしたか」

          口だけはすこぶる悪い。

          口で言い合っても自分が勝った試しがないもんで、三井は苛つきを抑え、シュート体制を作る。

          こんな朝が、インハイを終えてからほぼ毎日のように繰り返されるようになった。

          









         

          赤木達が引退して1ヶ月・・・・・

          選抜の前にある国体のため、三井。流川・宮城は、海南のスタメン・翔陽の藤真・仙道達と

          会う機会がどっと増えた。

          試しにやった紅白の試合では、牧、藤真に宮城を加え、ポイントガードをめぐってデットヒートが

          繰り広げられた。結局勝敗は牧に軍配が上がったが。

          俺はそのとき、思った。

          宮城はすでに見飽きたから良いにしろ、宮城より牧より細そうに見えて、まるで白く感じる彼が、

          その体ではかなわないだろう彼等と、互角の戦いをしている姿を見て。

          綺麗だな・・・と思った。

          特に、よくあれだけの体格をしている牧と3年間ライバルと呼ばれたなと思う。

          身長はあまりかわらないが、体重に関しては13キロも違う。

          強いて言えば、一回りほど相手のほうが大きいのだ。

          それでも藤真は一歩も怯まず、他を魅了するバスケットをする。

          本当に綺麗だな・・・・と思う。

          その美しさは、男のものとは思えなくて。

          「三井」

          「あ?」

          ふと気がつくと、俺は藤真に顔をのぞき込まれていた。

          「何ボケっとしてんだよ。学校行かなくて良いのか?もう8時20分だぜ?」

          「ああー!!!やばい!遅刻だ!!」

          慌ててカバンを握りしめて走ろうとする。

          「明日もな!」

          そう言って手を振る藤真は、学校はすぐ近くにあって、5分もしないうちに着くという。

          「気が向いたらな!」

          そう言ってフェンスを飛び越え、走り、学校が見えてきて、初めて自分が公園にボールを置いてきた

          事を思い出した。

          「あ・・・やっべー・・・・」

          だが、戻っていたら遅刻になってしまう。

          遅刻するくらいなら欠課してやる!と思っている俺はこれ以上欠課したら単位があぶない。いくら1学期半分から

          真面目に来ていたとしても、やはり受けたくない授業は受けていなかったし、なにより今までのぶん

          もあるので、欠課は避けたい。だが、ボールを誰かに盗ませるのも嫌だし・・・。

          少し考えて、俺は仕方なしに踵を返した。

   









 

          「・・・・ない・・!!!!!!」

          ハアハアと息を付きながら戻った公園にはボールひとつなかった。

          これは完璧に盗まれたな・・・くそっ。

          せっかく欠課覚悟で戻ってきたのに・・・・。

          学校行く気なくなってきた・・・・・。

          こんな風にボールをなくすのはもう5度目くらい・・・いや、もっとあったかな・・・。まあ、これくらいだろう。

          あ〜あ・・・。また買わなきゃいけねーのかよ・・・。

          公式ボールって高けーんだよな・・・・。

          学校も、部活だけ出れば良いか。

          学校に行くのもおっくうになってしまい、ベンチに腰を下ろす。

          家に帰ったら親がうるさいし、これからどう時間を潰そうかと考え、ふと藤真の事を思い出す。

          あいつ・・・俺のボール持ってってくれたとか・・・??

          まっさかな〜。ありもない事を考えて、俺はふと笑みを浮かべてしまった。

          藤真・・・・・あいつ、美人だよなぁ〜・・・・。

          なんで男なのに、あんなに白いんだ。あれがスポーツやってる人間の体か?

          そりゃ、確かにバスケは室内のスポーツだけど、それでも翔陽ほどの学校だったら校庭にもコートは

          あるだろうし、ランニングとかは外のはずだろう??

          なのに、あんなに真っ白だ。

          あれ・・・・服の下はもっと白いんだろうな・・・・・

          自分で考えて、俺は途端にぶっと吹き出した。

          お、おいおい、何考えてんだよ、俺は。冗談じゃねー。

          立ち上がり、もう一度深くベンチに腰を下ろし、俺は頭を押さえて藤真の事を頭から出そうとした。

          まったく・・・、ちょっと・・・・やばかったじゃねーかよっ!!

          なんて、一人慌てていると、大きな影が俺に近づいてきた・・・。

          「三井」

          「うわあ〜〜!!!」

          思わずベンチをひっくりかえす勢いで顔を上げた俺の前には、藤真がいた。

          「何そんなにびびってんだ?」

          「なっ・・・な・・・」

          「ほら、忘れもん」

          「へ?」

          藤真が持ってたボールは、確かに俺ので。

          こいつが持っててくれたのか・・・。

          「お、お前、学校どーしたんだ?!」

          「休み」

          「休み?」

          そう言えば、制服着てなかったかも・・・

          「相変わらず慌てん坊だな。そんなんじゃ、選抜は俺がもらうぜ?」

          にたっと意味ありげな笑み・・というより、俺をバカにしたような顔で俺を見下ろしてくる。

          こ、こいつ・・・・

          「選抜には俺等が行く!今度は負けないからな」

          いつもの藤真の顔だ。

          決して誰にも負けず、強い意志を持ったこいつの顔だ。

          心臓が、ドキッとしたのは嘘じゃなかった。

          恋・・・なんて言葉が、俺の脳裏を駆けめぐる。

          マジ・・・か、俺・・・。こいつに・・・・

          「ほら、三井!学校サボってんじゃねーよ、俺はもっとやるんだから、さっさと学校行けよ」

          「うっせーよ、ボールあったからもう行くぜ、じゃあな!」

          火照る体を隠して、俺は藤真に背を向けた。

          顔が合わせられねー。

          「三井ー!明日もなー!」

          つい、振り返ってしまった。

          最高の、笑顔。

          ・・・・やべー・・・・・。マジだわ、俺。

          「ああ、明日な」

          背中を見せたまま答える。

          恋、しちまったな・・・・。しかも男に。人生変わるかもな。

          俺は、なんだか今まで解けなかった謎が解けたような満足感を感じた。

          そして歩き出す。

          心に芽生えた、恋という、新しい想いを胸に

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