Happiness`s form








ふと、思い出す事がある。
大きく足を踏み出したあの日。
今思えばそれは必然的な一歩ではあったが、この男によって動かされた
運命的な第一歩。
そして今、こんな風にこの男と夜を共にするような関係になるなど
とてもではないが、想像できなかった。



「あぁ……疲れた…」
「オヤジくせぇこと言ってんじゃねぇよ。たかだか一回くらいでさ」
快感の余韻に浸りながら深く息を吐き出す男を見下ろしながらエドは言った。
彼の身体を丁寧に拭きながら、29の男とは思えないキメ細やかな肌を撫でる。
10代の女の肌のような(といってもエドはそれを知らない)日に当たらない肌は
白く、月明かりに照らされるとまた若い性が顔を擡げてくる。
毎日毎日デスクワークばかりで、食事は無茶苦茶。
なのになんで、こんな肌の状態をいつまでも保っていられるのだろう。
世の女性達の憧れの的だろう。(色んな意味で)
「オヤジで悪かったな。どうせ三十路前だ」
「あ、すぐいじける」
枕に顔をうずめる恋人は、この地を統括する司令官。若くして佐官の最高地位に
居ることも、司令官を務めているのも気に食わない上層部の一部からは何か
事件が起こるたびに嫌味たっぷりの激励文が届くという。
いつもは飄々としている彼が、自分の前でだけ素直になってくれるのが嬉しい。
「いじけんなよ」
「いじけさせたのは誰だね」
枕から覗く漆黒の瞳はまっすぐにエドを射、仕方ないな、と表情を和らげたエドは
ロイの傍まで寄った。
その白い頬にキスを降らせて、優しく微笑む。
「機嫌なおして」
「…私はそんなのには騙されないぞ」
「こういうときは騙されようよ」
本当にこの男は素直ではない、と先ほど思った事を撤回しようとする。
だけど、キスを落とした頬が赤くなっているのに気付き、嬉しくてまたキスをしてみた。
「ロイさ、可愛い」
「男に可愛いといわれて素直に喜ぶ歳ではないぞ」
「ロイは特別なの」
「さいですか」
そんなに紅くなって。素直に嬉しいとか言わないまでも、すこしはにかむとか、色々な
表現方法はあるだろう。

それでも、こういうロイだからこそ、自分は好きになったのだと。
肌が白いとか、顔が綺麗だとか、そんな理由じゃない。
いや勿論、外見上を挙げるならばロイにはなんの文句もない。
それよりもその内面に惚れたのだから。
気に食わない処も勿論ある。だけど、それらも含めてロイ・マスタングという一人の
人間の魅力にとりつかれたのだから。



「ロイ。明日は早いの?」
「……そんなに早くはないな。10時くらいに着ければ文句言われないだろう」
「じゃ9時には着いてないとね。明日は7時に起こすよ」
「…………」
じとり、と視線を向けられたが、そんなのは日常茶飯事。
時間を遅く自分に伝えるのも自分と少しでも長く一緒にいたいから、だと自負しては
いるが、ロイの仕事場での評価が下がるのは好ましくない。
遅刻くらいで、ロイの評価が下がることは勿論ないのだけれど。

時期は冬。
いくら抱き合っているとはいえ、夜はひどく冷え込む。
エドはロイの身体にタオルケットを掛けた後、厚めの布団を上から掛けてやる。
「明日はさ、司令部まで見送ってから行くよ」
「そうか」
「いってらっしゃいのキス、よろしく」
「はぁ?」
「いいじゃんそれくらい。また暫く会えなくなるんだから」
「…………」
無言を承諾と受け取って、ロイを抱いて目を瞑る。
半分欠けている月が、優しく2人を包み込んで。







それが、2人の幸せのかたち









end





リハビリSSS。
未だにスランプ状態です。。。










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