月光






情事を終えた後のけだるさは、なんとも言いようがない。
疲れた身体と興奮したままの感情がゆっくりと身体から抜け出るまで
横たわるのがアーロンのくせだった。
ジェクトはタオルを求めて立ち上がり風呂場へ向かっている。
アーロンは枕に顔を預けて窓の外を眺める。



真っ黒な闇に浮かぶ月を見つめ、自分はまるで月のようだと思った。
太陽を求め動き、太陽に照らされていずれ見えなくなる。
太陽に翻弄され、夜になって初めてその光を称える事が出来る。
アーロンは起き上がり、月に照らされる黒髪を手ぐしで整える。
紙紐をみつけ、髪を結ぶまでの間、ずっと月をみていた。


「なんでぇ、もう結んじまったのか」
「ジェクト」
吹き出た汗を拭きながらジェクトはすでに結ばれた黒い髪に手をかける。
「背中に張り付いて気持ち悪いからな」
「俺が結んでやったのに」
「お前にやらしたらすぐにほどけてしまうではないか」
「解けるのがいいからな」
ジェクトに髪を梳かれるのは心地良く、思わずその心地良さに
瞳を閉じる。



もうすぐガガゼト。
主はそこを越えれば究極召喚を手に入れてしまう。
そんな思いを一瞬でも忘れさせてくれる手。
ジェクトは自分の汗を拭き終わり、アーロンの背中へタオルを降ろす。
「・・・・・・綺麗だな・・・・・・」
ジェクトの呟いた言葉に月の事かと思い、月に目をやる。
「そうだな。今宵は満月だからな」
「違う。お前の事だ」
「・・・・・・またそんな戯言を・・・・・」
「嘘じゃねぇって」
拭き終えた背中に指を這わせながらいうジェクトの言葉に、
もう何度心動かされてきたか。




「お前は綺麗だ」
「・・・・・・・・・・・」
ジェクトは立ち上がり、窓の近くにたつ。
「?」
「こっから見るとな・・・」
手が伸び、アーロンの顎を掴む。
「月の光が反射して・・・・・こう・・・」
髪を梳き、アーロンに頬に触れる。
「煽情的っつーか・・・な」
「なんだ。よくわからないぞ」
「とにかく、色っぽいっつーことだ!」
「フッ・・・ますます意味がわからんな」
「ばーろ!言ってろ」
そして優しくキスをする。









ジェクトの背中越しに見た月は

きっと一生忘れない。





約束の地は近い







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