一目惚れってすごく不思議。
話した事もないのにその人のコトが忘れられない。

好きってすごく不思議。
目が合うと恥ずかしいのに気がつけば目で追ってる。

こんな気持ち、何て言うんだっけ…


『ビバ☆青春』


そこの喫茶店の扉を開ければ、綺麗なベルの音が響く。
そしてその中からは、ウェイトレスのいらっしゃいませ〜という声が聞こえる。
俺たちは、ここの常連だ。
と言っても、ここ最近来たばかりなのだが…。
しかし、必ず毎日ここの喫茶店に足を運んでいる。
その理由として、一つはタケだ。
タケがここのウェイトレスに惚れたらしい。
名前は真希と言っていた気がする。
俺たちは、タケを冷やかすのを目的として毎日タケについて来ている。

でも実のところ、それはただの口実でしかない。
俺が毎日タケについて来る本当の理由は、もっと別。
それは…。

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

真希ちゃんとは違うもう一人のウェイトレスの女に俺が惚れているから。

「5人」

名前は
聞いたわけじゃなくて、名札に書いてあったのを読んだだけ。

「ではこちらにご案内いたします」

そう言って、微笑むちゃんの笑顔はまさに天使。
いつもの5人席に俺たちを案内したちゃんは、
こちらの席でよろしいでしょうか?と言ってまた微笑む。
その笑顔にノックアウトの俺。
でも顔には出さない。
これと言って意味はないけど。

「メニューがお決まりになりましたら、声をおかけ下さい」

その場から、立ち去るちゃん。
その背中を、気がつけば追いかけている。

「…かなり重症だろ」

竜が何やらそう言ったらしいが、聞こえないフリをした。
すみませーん!とちゃんに声をかけて、注文する。
するとツッチーが、いつもの。と言った。
定番だから言ってみたい気持ちも分からなくないが、いちいち覚えているとは思えない。
日向が覚えてないっしょ?と笑いながら言ったとき、ちゃんは言った。

「いつものですね」

と。
正直驚いた。
これには他の4人も驚きだったようで、ぎょっとしている。
ちゃんはそれに気づいたらしく小さな声で、え…?と言った。
何故自分がこんなにも見られているのか分からないのであろう。
ちゃんは確認するように言い出した。

「ピン止めのタケちゃんが、いちごタルト&フルーツオ・レ。
 柄シャツの日向君が、クープサンデーのブルーベリィ&メロンクリームソーダinバニラアイス。
 186センチのツッチー君が、チョコレートパフェ&アイスミルクティー。
 クールな竜君が、ミルフィーユ&ブラックコーヒーホットで。
 それから、
 黒銀の頭の隼人君が、ティラミスケーキ&ストベリィフロートのさくらんぼ抜き。
 違います?」

ご名答だった。
しかも注文だけでなく俺たちの顔や、名前まで完璧だった。

「…あってる」

竜が驚きながら言うとちゃんはホッとしたように笑って、よかった…と言った。

「では、すぐにお持ちいたしますね」

ちゃんはふんわり笑って、再びこの場を去った。
隼人君。と呼ばれたのがすごく嬉しい。
顔が緩んでいるのが鏡を見なくてもわかる。

そんなところにやってきた客に見覚えがあった。

「やぁ皆さんおそろいで」
「…轟の田辺」

竜がやる気がなさそうに言った。
都合がいいのか、相手は一人。

「この間の仮を返しにきた」
「一人か?」

そう聞いて立ち上がると、突然思い切り殴られた。
殴られた口元が、熱い。
手の甲でそこを拭うと、赤い血が付いていた。
丁度田辺がやっていたリングのところが当たったらしい。
痛くないと言えば嘘だが、奥歯が欠けるほどでもない。
突然殴られた事に腹が立ち殴り返そうとすると、ちゃんが止めてくださいと言った。

「ほかのお客様のご迷惑になります。
 これ以上続けられるようであれば外でお願いします」

回りを見れば、客全員がこちらを見ている。
やってしまったと思った。
まさか、好きな女の前でこんな無様な姿を見せるはめになろうとは。
田辺は、舌打ちをして喫茶店を出て行く。
最悪な空気だった。
きっと、ちゃんはこんな俺に幻滅しただろう。
無言で椅子に座ると、ちゃんは何処かに言ってしまった。
俺の青春は終わった…なんて冗談でも言いたくなかった。
下を向いて、苛立ちを抑える。

「大丈夫ですか?」

そこで聞こえたのは、間違いなくちゃんの声。
ちゃんは手に救急箱を持って俺の前に立っていた。

「見せてください」

溜息を吐きながら言って、ちゃんは俺の切れた口元の消毒をした。
異常な程にしみる消毒に思わず顔を逸らしてしまう。
するとちゃんは、こっち向いて下さい。と言って
俺の頬に手を当てて、ちゃんの方を向かせた。
真っ直ぐにちゃんの顔を見ることが出来る。
ふと目が合うとちゃんはまたふんわり微笑んだ。

「せっかく綺麗な顔してるのに勿体無い。
 自分の体、もっと大切にしてあげて下さい。」

そう言った後、ちゃんは俺の頭をくしゃりと撫でた。

、ちゃん!!」
「はい?」
「俺、マジで好きです!」
「…ティラミスが?」
「じゃなくて、ちゃんが!!初めて逢った時からずっとです!!」

頭を撫でてもらえたのが嬉しくて、気がつけば告白していた。
タケ、ツッチー、日向の3人が、こっちを見て驚いている。
竜には気持ちがバレていたから、驚いてはいないようだけど。

「こんな俺でよければ、是非付き合ってください!」

すると、ちゃんはくすくすと笑い出した。
そして、ごめんごめん…と言って一度深呼吸した。

「こんな私でよければ、是非付き合わせてください!」

返ってきたのは夢のような言葉。
まさかとは思ったが、そのまさかのようだ。
パチパチパチパチと拍手が上がる。
今までにこんな嬉しいコトがあっただろうか?

「これからよろしくね。
 私の名前は、知っての通りって言います」
「俺は、隼人。矢吹隼人です」

そう言って、遅い自己紹介をすると、ちゃんはくすくすとまた笑って言った。

「知ってるわ。初めて逢ったときに目をつけたのは、私も一緒だもの」

要は、俺もちゃんもお互いに一目惚れだったと言うことらしい…

                               〜Fin〜

〜あとがきっぽくないあとがき〜

何なんや、これは。大事な一目惚れネタがこんなモノに…。
「こんな俺でよければ、是非付き合ってください!」と言う隼人君の言葉、
本当は、「こんな俺でよければ、是非付き合って下パイ!」と言う予定でした。
それの方が、隼人っぽいかな?と思ったんです。
でも、止めました。
理由はとっても簡単。
あっしの中で告白って言うのは、真面目なものなんです。
でも隼人君が、〜パイを使うと、どうもおちょけてる感じがして嫌なんです。
告白はやっぱり、真剣がいいと思いますよ。
あっしは、竜よりも隼人派なんで、小説が確実に多いんですが、
もしも、隼人に付き合って下パイ!と言われれば、
最初はまず振るでしょう。
嘗めんなよ、ボケぇ!!って言って、殴ると思います。
このヒロインにはそんな気持ちになって欲しくないので止めた。それだけなんです。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

2005・04・12・(Tue)





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