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クラナド第二次創作小説 『 暗がりの中で』



ガラッ

保健室の窓は当然の様に開いた。
鍵を掛け忘れているかもしれないと期待していたけど、その通りだった。
あたしと朋也は靴を脱ぎ、窓をくぐって中に入った。

朋也をベッドの上に座らせて、あたしは棚から救急箱を取り出し、朋也の隣に座る。
水に濡らしたタオルで口から出た血を拭き取り、傷口を消毒して、絆創膏を貼っていく。
頬が腫れているけど、こういう場合はどうするんだろう。
素人知識では分からない。
それでも、何もしないよりはマシだと思って、濡れタオルで頬を冷やすことにした。

「朋也、こっち向いて」

左手で朋也の顎を掴み、あたしの顔と向かい合わせる。
隣に座ってから、朋也はあたしと正面きって顔を向けず、あたしと目を合わせないようにしていた。
だから、顎を掴んで振り向かせたんだけど

「いっ痛――」
「ご、ごめんっ。痛かった?」

慌てて手を離した。
もしかして、顎も痛めていたのかもしれない。
腫れてるような感じじゃなかったけど、この暗がりの中じゃ良く分からない。

「もしかして、顎も殴られてた?」
「さっきな、春原に殴られたばかりだよ」

『痛え』と言いながら顎を押さえている。
でも、その目は笑っていた。

「ほら、じっとしてて」

朋也の顔を挟む様に、頬に濡れタオルを軽く押し付ける。
痛そうな表情を浮かべた朋也だったけど、すぐにいつもの表情に戻った。

「どう?」
「ああ。ひんやりして気持ちいい」
「じゃ、しばらくこうしてる」
「ああ」

とは言ったものの、朋也の顔が目の前にある。
吐息が届くほど近くに。
目を逸らしていた朋也の気持ちが分かった気がする。
こうも至近距離で向き合っていると、やっぱり恥ずかしい。
なにか、なにか言わなきゃ・・・・。

「とっ、朋也っ」
「なっ、なんだよ・・・」

互いの息がかかる程の距離。
小さな呟きさえはっきり聞き取れてしまう距離。
ちょっと顔を近づければ、口付けできてしまう距離。

二年生の時から抱いてきた想いが、今大きく膨らんでいる。
周りからは不良扱いされている男子生徒。
実際に話をしてみて、確かにその通りだと思った。
それがこいつの第一印象。
でも、日が経つ毎に、こいつに対するあたしの評価は変わっていった。
他の男子生徒とは違う。
むしろ、その他の男子生徒の多くの方が不良に見えてしまう。

あたしはクラス委員長だったから、よく遅刻してくるこいつとは顔を合わすことが多かった。
朝のHRで配られたプリントを渡したって、見もせずに机の中に押し込んで、それを
あたしが咎めたら言い合いになって。
でも、不思議と不快な気分にはならなかった。
その内、陽平も混ざって三人で話をすることが多くなった。
家に帰って、家族に朋也と陽平のことを話すこともあった。

そんな日常を過ごしていく内に気づいた。
『ああ。あたしは朋也のことが好きなんだ』
漠然とした感情だったけど、そのことを意識しだしてからは、その感情は現実味を帯びていった。
朋也の顔を見ると嬉しくなる。
表面はいつも通り振舞っていても、内面は心ときめいていた。

三年生になり、別のクラスになってからは、『好き』という想いが一層増して、
この気持ちを伝えたくて、でも言えなくて。
そして、その好きな相手と、夜の保健室のベッドの上で、息がかかるほど顔を近づけている。
よく考えて見れば、すごい状況である。
傷の手当てをしてあげることが目的だったわけで、そこに他意はなかったけど。
今なら・・・・言えるかもしれない。

「杏」
「な、なに?」

努めて平静な声で返した・・・・・つもり。

「もう、タオルぬるくなってるから」
「あ、そ、そう。じゃあ、これは洗って乾かしておかないと」

朋也の頬から手を離して立ち上がろうとすると、朋也に腕を掴まれ、
引っ張られて再びベッドの上に座り直してしまった。
も、もしかして、『その気』になったとか?

「駄目だったらっ。そりゃあたしは可愛いし、よく考えればすごい状況だし、気が昂るのも無理はないけど!」
「い、いや、お前、口から血が出てるからさ」
「そうよっ。初めてはすごく痛くて血が出るって言うしっ・・・・・て、血が出てる?」

口元に手を当てると、少しだけ血がついた。
部長に殴られた時だろう。
唇の皮が少し剥けていた。
朋也はあたしの手からタオルを掴み取ると、『拭いてやるから』と言って、
あたしの頬に手を添えて拭きとってくれた。
―――頬に朋也の手が触れた。
どきどきする。
言わなきゃ・・・・・・今しか言えないかもしれない。
伝えるんだ、あたしの気持ちを。

「ねえ、朋也」
「なんだ」

さっきと同じ。
朋也の顔が目の前にある。
視界の半分は朋也の顔で埋まってる。

「もし、もしもよ。あたしが朋也のことを好きだって言ったら・・・・どうする?」

この!あたしのバカ!こんなこと言うはずじゃないのに!

「と、突然なに言い出すんだよ」
「いいから答えてっ」

ええい、こうなったらこのままいこう!

「それってさ、友達としてか?それとも・・・・・異性としてか?」
「その・・・それは・・・・あの・・・・」

ここは『異性として』って言わなきゃっ。
でも、朋也があたしのことを単なる友達としてしか見ていなかったら・・・・。
って、弱気になるなあたし!
そんな想像するくらいなら、最初から告白しようだなんて思うな!

「杏」
「う、うん」
「もし、もしもだ。杏が俺のことを異性として好きだって言ってくれたなら」

ごくりっ。
次の言葉を期待して、あたしは唾を飲み込んだ。

「とても嬉しいよ」
「あっ・・」

その言葉はすごく嬉しい。
でも落ち着けあたし。
朋也は嬉しいとは言ったけど、あたしのことを『好きだ』とは言っていない。

「き、杏」
「な、なに・・・・?」
「あのさ、俺・・・・自惚れてもいいのか?」
「え・・」

それって、あたしに好きだと言われて、その気になってもいいか?ということだろうか。
もしも話で切り出しちゃったけど、朋也はあたしの気持ちに気づいたのかもしれない。
となると、今の言葉はやっぱり

『朋也!好きです!付き合って下さいっ』
『HAHAHAHA!こちらこそよろしく頼むよKYO!さあ、ミーの胸に飛び込んでおいで!』

ということだろうか。
変な朋也を想像しちゃったけど。
くぅ・・・今のあたし、自分でも分かるくらい顔赤くしちゃってる。
この言葉を言ったら、もっと赤くなっちゃうだろうなぁ。

「うん・・・。自惚れても・・いいよ・・・」
「そ、そうか。てことは、杏は俺のことを好き、てことでいいんだよな」
「確認とらないでよっ。今の台詞、めちゃくちゃ恥ずかしかったんだからっ」
「ああ。時々そういう困った顔をする杏のことが好きだったんだな、俺」

あう・・・。
今のは不意打ちだ。
ずるい奴だこいつは。

「俺は言ったぞ。だから杏も直接言葉にしてくれ」
「あ、あんたねぇ、女の口から言わせる気?」
「こういうのに男も女もないと思うぞ」

途端、朋也は真面目な顔つきになると

「俺は真剣だ。聞きたいんだ、その言葉を」
「朋也・・・・」

本当にずるい奴だな、こいつ・・・。
もう、言ってやるわよ。
もとよりあたしの方から今の状態作りだしたんだし。

「・・・あたし、好きだったの。朋也のこと、ずっと・・・・好き・・だから・・・」

言えた・・・やっと。
長かったな・・・・。

「さっきのはずるい言い方だった。改めて言うよ。」



『好きだ・・・杏』




視界いっぱいに朋也の顔が近づいてくる。
高鳴る胸の鼓動さえ聞こえてしまいそう。
あたしたちは吸い汲まれるように、互いの唇を重ねた。

時間が止まったかと思えた時、あたしは静かにベッドに押し倒された。
これからの事に不安を感じたけど、喜びの方が勝っていた。





乱れたシーツを直し、救急箱を棚に戻して、あたしたちは入ってきた時と
同じ窓からグラウンドに出て、学校を後にした。
帰り、途中の交差点で別れることになった。

「朋也っ」
「ん、なんだ」
「えへへっ」
「なんだよ」

まだ体の中に朋也が残っている感覚。
好きな人と一つになれた喜びの余韻が、あたしの頬を赤く染める。

「子供ができたら、ちゃんとお嫁にもらってよねっ」
「ぐあっ」







その日は夢を視た。
あたしは保育園で保育士をやっていて、大勢の子供たちと一緒に遊んでいる。
その中にはあたしの子供もいて、『ママ先生っ』って呼んでくれる。
皆と遊んでいると、同じ保育士の夫で教室から出てきて、あたしたちと一緒に遊んでくれる。
それはとても、とても満ち足りた時間。
その時間は、未来のあたしに訪れるだろうか。
彼と共に、その時間を・・・・・引き込んでみせるっ。


あとがき


いきなり保健室に入るとこから始まるので、何の話かと思われたでしょう。
今回の話は、ここに載せてもらっている「友達」に入れるはずだった話を書き直したものです。
なので、朋也が春原に殴られてたり、部長に杏が殴られたりしています。
やはりこういう話は難しいですねっ。
ま、書くのが難しくない話なんて自分にはありませんが(笑)
杏視点で話が進むので、朋也が杏のことを好きだったんだ、
と気づくような描写を入れていませんが、
「ああ、俺って杏のこと好きだったんだぁ」と、頭の中で反芻していたと考えてくださいw
最後に二人はいきなり一線を越えてしまいますが、あまり気にしないように、
HAHAHAHA!!(爆)
では、このへんで。

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鉄弥さま



戻ります〜♪