ロジカルことみん番外編 『ことみのドリームパーティーなの』
ことみ「夢オチなの」
朋也「最初に言っていいのかよ、それ……」
クリスマス。
今日は、ことみの家に皆で集まってパーティーをすることにしていた。
していたのだが、どうにも様子がおかしい。
「……………ここ、ことみの家だよな」
通い慣れたはずのその家を見上げると、屋根の上に大きな星の飾りがついている。
それよりも、だ。
そもそも家の形自体が元の形をとどめていない。
「どう見てもお城だよな……」
そんな異様な風景に圧倒されていると、大きな門が音をたてて開いた。
「朋也くん、こんにちは」
「ああ」
中から出てきたことみが、普段どおりの挨拶をしてくる。
その普段どおりの様子に一息いれたのも束の間のことで、俺はことみの服装に目を奪われた。
「その格好は……」
「メイドさん。可愛いの」
そういって、フリルのスカートをなびかせるようにくるりと一回転。
その黒を基調にしたメイド服は、まるでことみのためだけに作られたかのように思えるほど似合っていた。
「でも、なんでメイドなんだ?お城ならお姫様っぽいドレスとかのほうが」
照れながらそんなことを言ってみる。
「今日は朋也くんにご奉仕するの」
「ご奉仕……」
い、いかん。
今一瞬イケナイ想像をしてしまった。
「3っつまでなら、なんでも言うことを聞くの」
「何でも?」
「何でも」
「っていうか、なんで3っつ?」
「そういう設定なの」
設定ってなんだよ………………………あっ。
そうか、これは夢だ!
そうだよ、うん。そうなら話がわかる。
ことみの家がお城なのも、ことみがメイド服なのも、ことみがちょっぴりエッチなのも、そして俺が激しくエッチなのも!
みんな夢だからなんだ!!!
そうと決まれば早速。
「明日のために、その1!ご主人様って呼んでくれないか?」
「わかったの。とも………いえ、ご主人様」
「ぐほっ」
い、いかん。なんて淫猥な響きを持つ単語なんだ、ご主人様。
その言葉を言わせるだけで、さっきまで対等だった関係があっという間に主従関係に早変わりしてしまう………!
「すげぇぜ、ご主人様……」
「?ご主人様は朋也くんなの」
「あ、ああ」
「ご主人様、次のお願いは?」
メイドとご主人様。
この関係で一度はやってみたかったことがある。
それは……
「明日のために、その2!ことみの恥ずかしい姿を見せてくれないか?」
そう!羞恥プレイ!!
ご主人様とメイドという絶対的な主従関係があってこそ成り立つ禁断の技!
「………わかったの」
くーっ、恥じらいながらも受け入れることみ、これだよ!これを待ってたんだよ!!!
しかも“恥ずかしい姿”という抽象的な単語を使うことによって、ことみがどんなことを恥ずかしいと思ってるか知ることが出来る。
まさに一石二鳥じゃないか!
さあ、ことみの恥ずかしい姿をじっくり目に焼き付けよう。
一体、ことみは何をするのか。
オーソドックスに、スカートをたくし上げて下着を露わにするのか?
それも胸のボタンを外してその豊かな胸を恥じらいながらも晒すのだろうか?
しかし、ことみは俺の想像の遥か上をいっていた………………!!
なんと、一旦家に戻って小さい頃のアルバムを持ってきたのだ!!!!
「誰にも見せたことないの…」
天然か!これが天然というものなのか!!っていうかベタすぎるぜことみぃ!!!
「???」
血の涙を流しながらアルバムを見ている俺を、ことみは?三つを浮かべて見ている。
こうなったら、最後の願いに………………………………でも、まあしょうがない。
最後の願いは最初から決めていたことだ。
「ご主人様、最後のお願いは?」
「明日のために、その3。今日も明日も明後日も、来週も来年も10年後も、ずっとことみと一緒にいられますように」
「そんな夢を見たの」
「まあ、それはわかったんだが……」
ここは演劇部の部室。
俺たちは相変わらず放課後に集まり、他愛ない話を繰り返していた。
その中で出てきたことみの夢の話。
もうすぐクリスマスということで、そういう話かと思いきや全然違う内容に驚いた。
「で、なんで俺がこのメイド服を着なくちゃいけないんだ?!」
そう、今俺が着ている、というか無理矢理着せられているのはメイド服。
なんでも、ことみの夢の中に出てきたものを忠実に再現してことみが作ったらしい。
相変わらず器用であるが、俺にサイズがぴったりなのがすこし怖かったりもする。
「とっても可愛いの」
「そうじゃなくて。夢の中でこれ着てたのことみなんだろ?」
「夢の中の朋也くん、とっても着たそうな顔をしていたの」
馬鹿な。
何を考えてるんだ、夢の中の俺。
「そしてとってもエッチな目をしていたの」
なるほど。
男として正しいぞ、夢の中の俺。
「でもなぁ」
俺は視線を他に向ける。
そこには、大爆笑中の杏、笑いを必死で堪えている藤林、視線を向けると目をそらす古河の姿があった。
「やっぱりことみ以外には不評のようだぞ。よって着替えることを主張する」
「ダメなの」
「なんで?」
「今日はそのまま一緒に帰るの」
……………何かの罰ゲームか、これは?
ことみのお父さん、お母さん、俺、ことみに何か酷いことしたんですか?
『なりたいものになりなさい 例えばメイドとか』
「なりたくねぇ!!」
「???」
「こら杏!笑い転げてないでことみになんか言ってやってくれ!」
「えー、朋也だってなんだかんだ言って無理には脱ごうとしてないじゃない。ひょっとして、気に入った?」
「気に入るか!」
「気に入らないの?」
「う」
そうなんだよ、俺はことみのこの目には逆らえないんだよ。
着る時も結局それで押し切られちまったしなぁ。
「はぁ、相変わらずことみには弱いわね、あんた」
「しょーがねーじゃねーか」
「ま、いいけど」
そういう杏の顔はどこか寂しそうに見えた。
「朋也くん、そろそろ帰る?」
「ん?ああ、もうそんな時間か……………って、やっぱこのまま?」
満面の笑顔で頷くことみ。
「諦めなさい」
笑いを堪えながら肩にぽんと手を置く杏。
「う、占いでは今日の帰り道は誰とも会わないって出ました!」
死刑を告げる藤林。
「だんごっ、だんごっ」
古河のそれは、励ましているつもりなのだろうか。
「杏ちゃん、椋ちゃん、渚ちゃん、また明日」
「じゃあな…」
いつになく気の入らない声で別れの挨拶を交わし、俺は部室を後にした。
「朋也くん、今日はちょっと図書館に本を返しに行かなきゃいけないの」
「マジすか……」
こうして、俺の人生の中でもっとハードな帰宅が幕を開けるのであった………
おしまい♪
感想はこちらまで。

ナガレさん
Short Cirkit