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「さ、つぎはタカ坊が引く番よ」 “ざわ…―” そう言ってタマ姉が二枚のカードを差し出してくる。俺の手札は一枚、タマ姉は二枚…タマ姉の手札の内のどちらかが俺の上がり札で、もう片方がババだ。この選択を誤れば立場が逆転し、タマ姉にリーチが掛かってしまう。 (慎重に選ばないとな…) “ざわ…ざわ…” たかがババ抜きでそこまで熱くならなくても―と思う奴もいるだろうが、コレにはふか〜いワケがあったりする。話せば長くなるが…。 …1時間前― 「退屈ねー、せっかくみんな集まったんだし、なんかゲームでもしましょ」 ―と、タマ姉が提案。 「あ、あたしゲームとかそういうの、あんまり詳しくないんだけど…」 ―と、愛佳は条件付で賛成。 「このみも、あんまりルールの複雑なのは苦手かも…」 ―と、このみがそれに続き。 「私はべつに、どんなゲームでも構わないわよ」 ―最後に郁乃がしぶしぶと賛成。 …当初はこのみだけだった『お泊り』に、「ダブル告白事件」以来タマ姉が参加するようになり、事件に触発された愛佳が、 「あ、あたしも河野君のことが…」 ―と告白してきて、なぜか愛佳の妹の郁乃(このみと同じクラスらしい)まで加わり、いつの間にかこんな大所帯になってしまったのだが…。 「だったらババ抜きにしましょ。ポーカーとかだとこのみとか愛佳にハンデがありすぎるしね」 「む〜」 「環さん、何気にヒドイですぅ」 ほっぺたを餅のように膨らませて拗ねるこのみと愛佳。 こうして、タマ姉の提案により急遽催される事となった『ババ抜き大会IN河野家』だが、穏やかに催されるはずのイベントは…。 「ただのババ抜きじゃ面白くないわね…何か罰ゲームを付けましょ。負けた人は勝った人の言う事を何でも聞く―とか」 ―の、タマ姉のひと言により、違う様相を呈し始めていた。 まずこのみが圧倒的な引きの良さで手札を落としてさっさと3巡目で抜け、郁乃がそれに続き、たった今俺から引いた手札で愛佳が抜けると、残るは俺とタマ姉だけになってしまった…。 (さて、どっちにするかな…) “ざわ…ざわ…ざわざわ…” さんざん迷った挙句右側のカードを引く。しかし裏面には無情にも悪趣味なピエロの絵と『JOKER』の文字が描かれていた。 「ぐあ…」 ふと見上げると、タマ姉が勝ち誇った顔でこちらを見下ろしていた。 (くっ、まだだ…形勢は逆転したけどまだ負けた訳じゃないっ) 2枚のカードをシャッフルしてタマ姉の前に突き出す。タマ姉のアガリ札の『ハートの3』を露骨に上に上げて…。 (どうだッ!コレだけ露骨に差をつけたら、逆に引きにくいだろ?) 「ふ〜ん……じゃあ、こっちね」 2〜3秒じっとカードを眺めた後…何の迷いもなくアガリ札を引いていく。 「なっ!?」 「ハイ、アガリ〜。色々考えてたみたいだったけど、残念だったわね〜 そ・れ・じゃ・あ、タカ坊にはどんな罰ゲームをやってもらおうかしら」 「あ〜、もう好きにしてくれっ!」 「…―だって。どうする、このみ? あ、一応言っとくけど抜け駆けはナシよ」 「う…、う〜んと…じゃあこのみの宿題を代わりにやってもらおうかな…」 まぁ、それ位ならどうって事はないな。 「そんな罰ゲームじゃ面白くないわよ。どうせなら全裸で町内一周マラソンとか…」 …マテ。 「それなら、雄二を呼んで童○より先に後ろの処○喪失っていうのは…」 「ちょっと待てーっ!!なんで、たかがババ抜きの罰ゲームで一生モンのトラウマを背負わにゃならんのだっ!?」 「えっと…あたし、河野くんが女の子の格好したトコとかみたいかも…」 ・・・へっ? 遠巻きから愛佳がポツリと呟く。 「あ、あの…このあいだ、環さんが小さい頃よく河野くんに女の子の格好をさせてたとか言ってたから…それに河野くんだったらそういう格好とかよく似合いそうだなぁ―って…ゴ、ゴメンなさい、やっぱりダメですよね…」 ・ ・ ・ 数秒が何時間にも思える様な沈黙…。 「決まりね…」 タマ姉が沈黙を破ってこちらに向き直る。その目は戦慄を覚えるほど、妖しい光を放っていて…。 (マズイっ!) 本能で危機を察知した俺は咄嗟にその場から飛びのこうとしたが…。 「ごめんなさいっ! 河野くん」 “がしっ” (なっ…!?) 「あ、ズル〜イ。このみも〜」 “がしっ” (しまった!) タマ姉に気を取られていた俺は、背後の愛佳とこのみに気づかず、あっさりと拘束をされてしまう。 「情けないわね、女に押さえ込まれるなんて…」 「お前もそんなところで見てないで助けろ」 「姉に手を貸す義理はないけど、アンタを助ける義理はもっとないわ」 我関せずといった面持ちで、べっと舌を出してみせる郁乃。 「往生際が悪いわよタカ坊。でも、ちょっと準備に時間が掛かりそうだから、そのあいだ眠っててくれる?」 「なにを…」 “とす…” 恐ろしく早く鋭い手刀が正確に俺の首筋に打ち落とされる。肉体的なダメージはほとんどないが、延髄を刺激し脳細胞からの信号を一時的に遮断するには充分で、そのまま俺の意識は暗い淵に落ちていった… 「―で…」 「…これは―…」 「じゃあ…」 少しずつ意識が戻ってきて、周りの声が耳に入ってくる。段々と身体の感覚が戻ってくると、今自分に対して少なからぬ異常な事態が起きていることを実感することになる。 (何だか頭が重いな。そのくせ足元はスースーするし…) 「…―って、なんじゃこりゃあぁぁーーーっ!!!???」 「きゃあ!?」 「わっ!?」 「もぉ〜、突然大きな声出さないでよビックリするじゃない」 「出したくもなるわぁーっ!なんなんだよ、この格好はっ!」 「可愛いでしょ♪」 「河野くん、よく似合ってます」 「タカくん、可愛い〜」 「…気持ち悪い」 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっ」 思わず、頭を抱え込んでしまう 「あ〜もう、落ち着いて自分の姿をよく見なさい。」 そういってこちらに向けられた鏡をのぞきこむと… そこには…軽いウエーブのかかった髪の(おそらく、タマ姉が持ってきたウィッグ)、フリフリのブラウスにヒラヒラのミニスカートをはいた、俺によく似た女の子(?)の姿が映っていた…微妙〜に似合っているのが鬱になる位に…。 「なあ、タマ姉…」 「なに?タカ坊」 「今、俺の胸まわりを締め付けてるのって、もしかして…」 「もちろん、私のブ…」 「やめろーッ!!やっぱりそれ以上は聞きたくねぇーーッ!!!」 「そんなに暴れたら、せっかくのメイクが台無しになるでしょ」 イヤ、むしろ台無しになってくれ…。 「それに心配しなくても、下のほうは替えてないわよ」 「当たり前だぁーーーッ!」 「あとは、コレをつけたら終わりだから。最後くらいおとなしくしてなさい」 「“コレ”って、なに…?」 「ニーソックス♪」 そう言いながら、長い靴下のようなものをこちらに向けてくる。 「そんなモン履けるかぁぁーーッ!」 今度こそ逃げ出そうとするが、なぜか身体が重くてうまく動けない…。 「さすがはおじさま秘蔵のブランデー、効果抜群ね♪ 悪いけど、寝てるあいだに一服盛らせて貰ったわよ。逃げたり暴れられたりしたら厄介だから」 してやったりの表情で、ニーソを持ったタマ姉が迫ってくる。 (そこまでするか〜〜ッ!? そこで問題だ! この全身に酒が回った身体で、どうやってタマ姉の攻撃をかわすか?) ****************************************** 3択―ひとつだけ選びなさい 答え@ 貴明は突然反撃のアイデアがひらめく 答えA 雄二がきて助けてくれる 答えB かわせない。現実は非情である ****************************************** (おれが○をつけたいのは、答えAだが期待は出来ない…雄二があと数秒の間にここに都合よくあらわれて、間一髪助けてくれるってわけにはいかねーゼ。逆に雄二もすでにスマキにされてるかもしれねえ) 「やはり答えは……@しかねえようだ!」 なんだか酒が回ってるせいか、切羽詰ってる割には余裕かましてるようにも思えるけど、なんとか逃げ出そうと試みるが…。 「えふぇ〜、たかくん〜…」 「こぉのくん、らめれすよ〜にへたりしたりゃ…」 またしても、このみと愛佳に押さえ込まれてしまう… 答え― B 答えB 答えB (―っていうか、二人とも酒臭ぇっ!) 「二人のジュースにちょっと混ぜただけだけど、ホントよく効くわね〜コレ…」 「やっぱり、タマ姉のせいかよッ!」 「ま、そーゆーワケだから、いい加減観念して履いちゃいなさい」 「い〜や〜だ〜ッ!!!」 “じたばたじたばたじたばた…” 「たかくん、おとなしくするれありましゅよ〜」 「あ、あばれひゃらめれしゅ〜」 “ぎゅ、ぎゅうぅぅっ” なんとか振り払おうと必死でもがいてみるが逆に益々拘束を強めてくる。こんな状況でも、左右の柔らかい感触に気がいってしまうのは漢の哀しい性だ…。 (なんで、たかがババ抜きの罰ゲームでここまでされなきゃならんのだ…?) 押さえつけてくる二人の柔らかい感触と、酒気に混ざって漂ってくる女の子特有の甘い香りが酒に回った頭を侵してきて、タマ姉の理不尽さに対する反抗心に火を点ける…。 “ぷち…” 「―くしょう…」 「あら…」 「わっ」 「え…?」 「お…れは…」 「タ…タカ坊…?」 「オレは…オ・ト・コだあぁぁぁーッ!!!」 ・ ・ ・ ―翌朝 リビングで目を醒ました俺に二日酔いの激しい頭痛と、全身の力が抜け落ちたような猛烈な疲労感が襲いかかってくる。 (う゛〜頭がズキズキする。昨晩の記憶も曖昧だし…タマ姉に女装させられたとこまでは覚えてるけど…) とりあえず顔を洗ってシャンとしようと思い、洗面所に向かおうとすると途中で郁乃とすれちがった。 「あ、おはよう郁乃」 すると、普段以上に冷たい目線をこちらにむけて… 「けだもの…(ぼそ…)」 「なっ!?」 郁乃の一言に呆然としていると、今度はこのみがいきなり抱きついてくる。 「おはよ〜タカくん(だきっ!)」 「わっ、ど、どうしたんだ? このみ…」 振り返ってこのみと目が合うと、とつぜん顔を真っ赤にして… 「え、えへへ…なんでもないよ。そ、それじゃあまた後で…」 そう言いながらそそくさと立ち去ってしまう。 (なんなんだ、一体…?) 洗面所に着くとそこには愛佳がいて、やっぱり俺と顔を合わすと真っ赤になって…。 「お、おはよう、河野…た、たかあきくん…き、昨日はお疲れ様でした!」 「へ…?」 「だ、だってたかあきくん一人であんなに頑張ってたし…あんなに…あんなに…(ぷしゅぅぅ…)」 「ちょ、ちょっと…」 「そ〜ね〜…タカ坊のこと、ちょっとは見直したかも…」 ひとりパニくってる愛佳を呆然と見ていると、今度はタマ姉がしなだれかかってくる。 「でも、大変なのはこれからね〜。ま、タカ坊が選んだことだしね…」 「・・・」 この状況で叫んだからどうなる訳でもないけど…とりあえず、叫ばずにはいられないので…。 「おれは…おれはいったい何をしたんだぁーーーッ!!!」 教訓:酒と女と賭け事は身を滅ぼす
(あとがき) 拓哉です。 ―というわけで、久しぶりに日エロSSを書いてみたのですけどいかがでしたでしょうか? 正直、気合だけが空回りしてワケのわからないものになってしまったような気が… やっぱり多人数を動かすのは大変です。しかも、ちょっと長めですし…。 とりあえずはこんな感じで、気に入ってもらえれば幸いです。 ●はい、今回は『そこはかとなくヤッちゃってますっ(>ヮ<)』的なSSを書かせれば、 天下無双、強力無比の拓哉さんの提供でお送りいたしました〜。 まあエロ絵はないですけど、ヤッちゃった翌日の女の子の初々しい反応を見ていただければ、 これも「脱ぎかけ」とは一風違った萌えとエロスを感じ取れると思います。つか、いくのん間に合わなかった…。 というか、そこはかとなく5ぴ…(>ヮ<) (# ゚∀゚);y=ー(・ω・)・∴ターン ●ふと思ったんですが、ウチの日エロって何気に5人モノ多いですよね(爆) (例:朋也&杏&椋&渚&ことみ・貴明&イルファ&ミルファ&姫百合姉妹) これはやはり日本人が戦隊モノ(5人)を好む習性からきた、無意識のエロスでしょうか…。 ●というかタカ坊って何気においしいですよね。 『女の子苦手〜』とか言いながらもハーレムにまでこぎつけるとはっ! どっかの小林容疑者みたいに「ハーレムつくる〜」とか言ってるよりも、 『お、女の子は苦手〜!』と言って逃げ回ってるほうが 逆に女心をくすぐってハーレム作りやすいかもよ?( ̄ー+ ̄) あ、ちなみにタイトルは某マガジンのアレですね。あと、微妙にカイジ(笑) 最初、このSSを読んでるうちはタカ坊の色っぽい女装姿なんか書いてみようかと思いましたが、 やはり日エロの醍醐味は『そこはかとなくヤッちゃってますっ(>ヮ<)』! 拓哉さんめ…やはりエロセンス抜群だ…( ̄ー+ ̄) |