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〜水も滴る良いオンナ〜
ミーン、ミーン、ミーン…。 いつもは静かなこの並木道を蝉の鳴き声が埋め尽くす。 「あちぃ…」
岡崎朋也は木陰のベンチで暑をしのぎながら、呟いた。
高校を卒業した後、杏は幼稚園教諭の免許状を取るために大学へ進み、 「にしても、遅いな、アイツ…」
時計に目をやると9時55分。待ち合わせの10時までにはまだ少しの余裕があった。 ばっ!! 「!?」
突然目の前が真っ暗になる。瞼を通して伝わるひんやりとした手の感触。 「だ〜れだ?」 背後から悪戯っぽい声。朋也はその声が誰のものであるかはもちろん分かっていた。 (まったくこいつは…) 軽くため息を付き、目を覆っていた手に自分の手を重ねる。 「お待たせしてしまってすみません、お姫様」 冗談交じりでそう答える。すると目を覆っていた手が離れた。 「あはは、お姫様だって。そうなると、あんたはあたしを護ってくれる騎士様ってカンジ?」 振り向くと薄紫の長い髪の女の子が、口に手を当ててクスクスと笑っていた。 ベンチに座ったまま、朋也は尋ねた。杏は少し考えるような素振りをして、 「んー、9時20分ぐらいからかな…」
と答えた。朋也がここに来たのは40分程だった。となると、現在の時刻は57分。
「お前、アホの子だろ」
杏が顔を真っ赤にして怒る。もちろん、本当に怒っているのではなく、
「あれ…お前髪型…」 「うん、夏だしね。ちょっとイメチェンしてみようと思ったんだけど…似合う…?」
そういって杏は後ろで結んだ自慢の長髪をかきあげた。髪の隙間から覗くうなじが妙に艶っぽい。 「あ、ああ、似合っている、と思うぞ」 杏の新鮮な姿に戸惑いつつも、素直な意見を返しておく。 「へへぇ…」
まるで喉を撫でられる猫のような表情をして杏は照れ笑いを返してくれた。 「そ、それよりも早く映画館に行こうぜ。のんびりしてたら上映時間を過ぎちまう」 動悸の高鳴りを悟られないようにあわてて話題を変える。時計を見てみると、 「あっ、ちょっと待ってよ。喉渇いちゃったから水飲んでから行く。はい、これ持ってて」
朋也に鞄を預けて、杏は公園の水飲み場まで小走りで駆けていった。 (あいつの長い髪を見ると、いつもあの時の事を思い出すな…)
それは、朋也のはっきりしない態度から生まれた、杏の誰にも言えない横恋慕。 「きゃあっ!」
と、突然、公園の中からか細い叫び声がした。杏だ。 水飲み場。そこに水浸しになった彼女がいた。
「何やってんだ、お前…」
そう悪態を付きながらも、キチンと水を飲むという目的は忘れない。 「あ、朋也。あたしの鞄にハンカチが入っているから出してくれる?」
水を飲み終わったあと、こちらへ向き直る。 「あ…コホン。分かった。それと…今日はお前、水色のストライプなんだな」 わざとらしく咳きを払い、気付かせるためにそれとなく言ってみる。 「…は? 何言ってんの、あんた? それよりハンカチ頂戴…って…〜〜!!」 朋也の視線に気付いた杏はみるみる内に顔を真っ赤にして胸を隠す。
「あ、あんたねぇ〜!!」
顔を真っ赤に膨らませ、杏は半ば強引にハンカチを朋也から奪い取った。
ミーン、ミーン、ミーン…蝉の鳴き声が相変わらずうるさい。
「服、乾いたか?」
そう言って杏は朋也の傍に身を寄せた。 朋也の顔を見つめて、杏が尋ねる。 「いや、今日はもうやめておこうか。良いものも見れたし…って痛ッ!!」 いきなり腕に痛みが走ったかと思い、見てみれば杏が朋也の腕を抓っていた。 「もうっ、ホントにスケベなんだからっ! まったく!」 頬を膨らませて朋也を睨みつける。だが、その表情もすぐに穏やかなものに変わる。 「ん、そうね。あたしも今日はこのままで居たい気分…」
そういって、杏は朋也の肩に自分の頭を乗せた。
●はーい、やたら長い文章&御目汚しスミマセンでした〜w 絵のほうは夕方くらいに出来てたんですけど、文章のほうに手間どっちゃいまして…。 やっぱ普段SS書かないから、イザとなってやってみると時間が掛かりますなぁ…。
●というわけで、この長い文章を読んで下さった方、ありがとうございました!
つーか、そこ! サービス絵ばっかかっさらっていって、
●どうでも良いんですけど、どこのサイト様の絵を観ても、杏ちゃんはストライプ着用ですな…(≡▽≡) ●とりあえず、文章の推敲はあまりしてないんで、明日こっそりと修正しているかも知れません(爆) |
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