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『Deal』




 ベッドの上で目を閉じたまま今夜もう何度目かわからない寝返りを打つ。
 いったい何時間前からこんなことをしているんだろう。
 別に今は寝苦しいほど暑い熱帯夜とかじゃない。だいたい今は夏じゃないし。

――眠れない。

 眠りたくないわけではない、眠くないわけでもないのにだ。
 ベッドに転がったまま、部屋の灯りは消えているのに、私は眠ることが出来ない。
 しかも、これは今日だけに限ったことじゃなかった。
 どんどん膨らみ続ける想いはキリなんてないみたい、どんどんどんどん好きになる。愛しくなる。
 ケンカだってしたことあるけど、やっぱり好きで。最後は向こうから謝ってきてくれて――と思い出してまた頬が緩んだ。
 こんなことを毎日思い出しているから眠れない夜の記録を現在進行形で更新中だ。

 ああ、もう。そんな心地いい頬の熱さに笑い出しそうになる気持ちを抑えてまた寝返りを打った。

 一年前のお姉ちゃんの話を聞いて憧れているだけのときでは想像も出来なかった。
 私が朋也くんと付き合って、こうして交際が続いてキスも何度もしてそれで――思い出して私は耳まで赤くした。

 憧れは小さな思い。
 でも、それは色づいて膨らむ想い。
 あの頃だって、お姉ちゃんの話を聞いたりいいなぁって思ってフトンの中で悶々としたこともあったけれど、今はその比じゃない。本当に好きっていう気持ちに上限なんてあるんだろうか。
 昨日よりも今日の朋也くんのことを好きになる。
 今日よりもきっと明日はもっと好きになる、そんな確信がある。

『付き合ってみないと良さなんてわからないものよ?』

 後で朋也くんに聞いた話なんだけど、そう朋也くんに言ったのはお姉ちゃんらしい。
 そうお姉ちゃんが推してくれて私と朋也くんは付き合うことになった。すごく感謝している。
 でも、その言葉はむしろ私に当てはまっていたみたいだった。

 やっぱり憧れから思い続けただけでは本当の朋也くんなんてわかっていなかった。
 だから、付き合いだして本当の朋也くんに少しずつ触れていって、私はどんどん好きになる。
 私の本当に少しずつ触れてもらって、やっぱり私はますます好きになるんだ。

 相手を知ることは自分を知ることだったいうけど、本当にそうかもしれない。
 朋也くんを知れば知るほど、私ってこんなだったんだ、と新しい自分を発見していた。
 それは意外な積極さだったり、好きな人のために頑張るとあれだけ駄目だった料理が急に上達するようになったりととにかくいろいろだ。

 それに、それは朋也くんも同じらしい。
 互いを知り合うために、私たちは今までにいろんな話をした。
 趣味、勉強とこと、進路のこと、なんでもない日々の雑談でも何でも話した。
 そのとき、朋也くんも言ってくれたのだ。

「今まで、自分がこんなに他の人のために頑張れるなんて思ってなかったんだ」

 今は二人でいっしょの大学に行こうと勉強したりしてる。
 朋也くんは本当に頑張っている、やる気があれば上達が早いのは私の料理と同じなんだろうけど凄かった。
 そして、それだけ想われていることに胸を熱くさせた。

――恋にはいろんなカタチがあるだろう。

 苦しかったり、楽しかったり、嫉妬で自己嫌悪してみたり。
 でも、今は私たちはお互いに高めあえるとてもいい状態だった。
 互いを知って、互いに頑張って、励ましあって、いっしょに幸せを分け合う。

 そう。
 あなたが居るというだけで。
 とめどなく想いは膨らむ。

 彼が笑うだけで、私は幸せを感じる。

 まるではまったレールに沿って物語を進めているような感じ。
 ぴったりとはまった二人の思いは止まらない。限りなんてない。
 朋也くんがいれば私は無敵だ。
 何が束になってかかってきてもへっちゃらだ。

「私は、朋也くんが……好き」

 そうだ、それは約束だ。
 寝る前に互いに誓おうと決めたことだ。
 でも、その誓いこそが私がいつまでも朋也くんを想い続けて眠れない原因だったり。
 でも、それは幸せだった。

――だから、夢の中でも会えますように
――明日はもっと 今日よりも楽しい物語の中に私を連れていってね。