手遅れ。
最初にその事にはっきりと気づいたのは、ある日の朝。
新しい生徒会の選挙の結果が発表されるって日。
そんな日に限ってあたしは寝坊する。
いつも通り愛車を走らせ、学校に急ぐ。
校舎に滑り込み、廊下を走って教室へと。
そして、空き教室の前を通った時、見てしまった。
朋也とアイツがキスしてるところ。
頭の中が真っ白になった。
とにかくその場から急いで立ち去った。
教室に入った時に友達に顔が赤いといわれたのは、急いで走ってきたからと誤魔化した。
それからというもの。
あたしはよく夢を見るようになった。
それも、普通の夢じゃない。
―その…、えっちな、夢だったりする。
しかも相手は決まって朋也。
確かに去年一緒のクラスだった頃から好きだった。
でも…そんな、悶々とするほどでもなかった…と思う。
…あの空き教室の出来事を見て以来、気持ちが抑えられなくなっていたんだろう。
噂で朋也の彼女の事を聞いた。
どうしてそんな女なんかと付き合ってるの、と思った。
喧嘩が強いだけの、ほんの数日前に出会ったばかりのくせに…。
あたしなんて二年生の時から好きだったのに…っ!
どうしたら勝てる?
そんな事はあり得ないのに、そんな無用な気苦労。
でも、この気持ちはそう簡単に消えたりなんてしない。
あたしは、本当に朋也の事が好きだったから。
そんな気持ちを捨てられるわけが無い。
そうして、嫉妬の心は燃える。
あぁ、あの頃に帰りたいな…。
朋也と、陽平と三人で馬鹿をやってた楽しい日々に…。
それは、たまゆらの幸せだった。
決して戻らない日々を願い、決して手にはいらないものを追い続ける。
―まだ、あたしの心は燻っている。
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