「ことみ」
朋也くんだ。
朋也くんは、大切な人。
わたしを外の世界へ連れ出してくれた人。
ずっと一人で居たわたしに、外は楽しいよって教えてくれた人。
とってもとってもうれしかった。
「おーいことみ、どうしたんだ?」
だから、わたしは感謝をこめてこう言うの。
「朋也くん、ごめんね」
「…は?」
なんだか朋也くん、驚いてるの。
ちゃんと伝わるように、もう一度、言うの。
「朋也くん、ごめんなさいなの」
「…何謝ってるんだ?」
呆れられちゃったの。
「このごめんなさいは、ありがとうのごめんなさいなの。感謝の中には謝るって漢字が入ってるから…」
「あのね、いっぱい友達作ってくれてありがとうなの」
「…いやよくわかんないけど、一応どういたしまして、って言っておくよ」
「でもな、ことみ」
そう言ってポン、とわたしの頭の上に手を置く。
「友達ができたのは俺のおかげじゃない。お前の魅力だ」
わしわし、と髪をかき混ぜる。
「お前が頑張ったから、みんなと友達になれたんだ」
やっぱり朋也くんは優しい。
「うん。ありがとうなの」
「でも、卒業したらみんな離れ離れになって寂しいの…」
―せっかく友達になれたのに、みんなと別れたくないの。
「バカ。そしたらまた新しい友達を作ればいいだろ」
「それに、あいつらとは卒業してもずっと友達だ。いつでも会えるさ」
「…朋也くんは?」
「…あー…その、な。」
「???」
なんだか真っ赤な顔してる朋也くん。変なの。
「…俺は、お前とずっと一緒にいるから、さ。離れ離れになる事はないだろ?」
照れてる朋也くんがかわいくて、その言葉が嬉しくて、わたしは朋也くんの腕に抱きついた。
「アンタたちー!早くしなさいよー!」
「杏だ」
「杏ちゃんなの」
「行くか」
「行くの」
そうしてわたしたちは走り出した。
―桜の木の下で待つ、大切な友達の下へ。