悲しい事に、私の想いは届きませんでした。
大事な人はすぐそこに居たのに、届きませんでした。
…でも、知ってました。
私の思いが届かないって事も、あの人の心が誰のものなのかも。
だってあの人は、私と抱き合う時いつも泣いてました。
…正確には、心で泣いてました。
私がどんなに頑張っても、お姉ちゃんの代わりにはなれませんでした。
別れる時、私はできるだけ笑顔で居ようと思っていました。
涙は絶対に見せないで、笑って送り出そうとしました。
どうにか、朋也くんの前では泣かずにすみました。
…だけど、家に帰って、部屋に戻った時。
涙が自然に溢れてきました。
止めようと思っても止めれませんでした。
朋也くんと過ごした思い出が、次から次へと思い浮かんできました。
…本当に楽しくて、幸せだったから…。
しばらくして、私は他の人と付き合い始めました。
ひょんな事から出会い、そして告白された、勝平さんという人です。
…もしかしたら、朋也くんと別れた直後だったから寂しかっただけかもしれません。
広いこの町で生きていく以上、そういう事は繰り返す事なんでしょう。
でも、そんな私に勝平さんは言ってくれました。
―椋さんがここにいることが、ボクの支えなんだ。
彼は、私のこんな歪んでしまった光でも、照らして欲しいと望んでくれました。
私を、必要としてくれました。
だから私は、朋也くんへ向けていた光で、今度は勝平さんを照らし始めました。
私の選択は、間違っているでしょうか…。
私のした事は、許されるでしょうか…。
でも、私は後悔していません。
私を必要としてくれる人がいて、今その人の隣にいるから。
勝平さんの隣…ここにいることが、私自身の証明なんです。
「…で、結局何を言いたいわけ?」
「あ、あの…えっと…だから…」
「何よ…はっきり言いなさいよ椋」
「だ、だから…私…っ」
「…私、ヤリマンなんかじゃありません…」
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