ビバ! 人魚 - ねこの目ビー玉

【ねこの目ビー玉】

 ぼくのクラスでは、さいきん、ビー玉をあつめるのが、はやっている。

 めずらしいビー玉を、買ったりひろったりして、みんなに見せてじまんするんだ。

「よおし、今日も、がんばってさがすぞ!」

 ぼくは、学校からかえると、すぐに家をとびだした。町を歩きまわって、いいビー玉がおちてないか、さがすんだ。

「おーい、ビー玉ぁ。出てこーい!」

 ぼくがそう言いながら、公園の、草むらのところをさがしていると、足もとでなにかが、キラリン、と光るのが見えた。

「あった!」

 それは、ウーロン茶のような、こい茶色をした、ビー玉だった。

 ぼくが、それをひろうと、後ろから、チリリン、チリリン、とすずのなるような音が近づいてきた。

「それ、オイラが先に見つけたやつだぞ!」

 ふりかえると、そこには、一ぴきの黒ねこがいた。音は、このねこの首についている、小さなすずの音だったんだ。

「そんな。これはぼくが今、見つけたんだぞ。

ぼくのほうが早かった!」

「いいや。オイラ、向こうからそのビー玉を見つけて、走ってきたんだ!」

 ねこは、くりっとした目でぼくをにらんだ。その目は、ぼくが今ひろった、ビー玉にそっくりだった。

 しばらく、ぼくとねこは、言いあらそいをしたけど、どっちが先に見つけたかは、やっぱりわからない。

 そこで、ねこは、ぼくに言った。

「それじゃあ、対決をして決めよう!」

「対決?」

「かくれんぼ対決さ。きみがオニで、オイラが町のどこかにかくれる。五時のサイレンがなるまでに見つからなかったら、オイラの勝ち。ビー玉はオイラのもの、ってこと」

 ぼくは、対決をうけることにした。

「よし、それでいこう!」

「じゃあ、オイラはかくれるから、百までかぞえてから、さがしにきてくれよ」

 そういって、ねこは公園を出ていった。

 ぼくは、数をかぞえながら、しめしめ、と思っていた。ぼくには、ぜったいに勝てるじしんがある。ビー玉は、ぼくのものさ。

「もーいーかい!」

「もーいーよ!」

 対決がスタートして、ぼくはさっそくねこをさがした。耳をすましながら、ゆっくりと歩く。こうすれば、あのねこのすずの音が、どこからか聞こえてくるはずだ。

 少しすると、思ったとおり、チリンチリン、という音が聞こえてきた。

「見つけた!」

 ぼくは、音のした、大通りのほうに走っていった。けれど……。

 チリンチリン、と、ぼくの目の前を、じてんしゃがベルをならして通りすぎていった。

「なんだ、あれの音だったのか」

 でも、がっかりしているばあいじゃない。ぼくはまた、耳をすまして、ねこをさがした。

 すると、こんどは後ろの方から、チリーン、チリーンという音が聞こえてきた。

「こんどこそ!」

 ぼくはまた、音の方にむかって走った。

「あっ、あれは!」

 それは、チリーン、チリーンと、風にゆられてなっている、ふうりんだった。

「また、ハズレだ」

 そんなふうに、ぼくは、何度もにたような音にだまされてしまい、とうとう、やくそくの五時になってしまった。

 ぼくが公園にもどると、ねこが、とくいげな顔をして、まっていた。よく見ると、ねこの首には、すずがついていなかった。

「やられたぁ!」

「へへん、すずは、首からはずして、そこの砂場にかくしておいたのさ」

「ぼくの負けだな。ビー玉はきみのものだ」

 ぼくがビー玉をわたすと、ねこは、うれしそうに、ときどきとびはねたりしながら、どこかへと、かえっていった。

 つぎの日になって、学校へ行くと、となりの席のゆうくんが、

「おれ、きのう、すごいものを見たぞ!」

 と、みんなに話していた。

「首にすずをつけた黒ねこなんだけど、なんと、目が三つもあったんだ!」

 クラスのみんなは、どうやらその話を、しんじなかったみたいだけど、ぼくには、

「あっ、あいつだな」

 と、すぐにわかった。

 もし、きみが、ねこの目にそっくりのビー玉をもっているならば、そのねこは、きみのところにも、やってくるかもしれないよ。

 そのときには、もっともっと、目の数がふえてるかも、しれないけどね。

(c)Kanata Tohno

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