欠けた魂、繋がる記憶。
業火、転生、そして消滅。
己が魂の片割より、この欠乏を満たす。
其れを、渇望していた。
[言葉は劣化する代物だから]
永遠なんて存在しない
僕は信じない
あれほどこの身引き裂かれるまで彼を愛したはずの僕自身が、今、君を愛しているのだから。
あんなに彼を愛していた君が、今僕に永久を囁く。
彼に永久を囁いたのと同じ唇に声。
呪われし千年に及ぶ思いを遂げてさえ、君を求めた。
「一瞬後には僕の事を恨んで殺していいよ。未来なんていらない。今は全部あげる…」
愛し続けるなんて言わなくていい。
縛らなくていい。守らなくていい。
僕だって、君を愛したように、明日誰かを抱いているかも知れないから。
ずっと好き、なんていって自分を戒めなくていい。
でも今僕の事を愛しているなら、今だけ頂戴。
殺しはしないよ。僕もきっといつか、別の誰かを愛するから。
今の思いをどれだけ知っても、たった一時の先を知ることすら叶わず。
誓いなんていらないから、思いの続く限り此処にいてくれさえすればいい。
身を焦がす激情も、狂おしいほどの愛しさも、過ぎ去ってしまえば灰にすらならないから。
「お前は今、誰より幸せで、そして誰より悔やんでいる。」
ベッドの中、後戯のまどろみ、睦言。
ハオはラキストに囁きかける。
「ハオ様……。」
否定する事も出来ずに、ラキストは困惑する。
どんな言葉を何度繰り返そうとも、ハオには意味の無い事だ。
「気にすることは無いんだ。」
そう、ラキストが今これ以上無い程の幸福に満たされているのは、分かっていた。
平凡な教会での暮らしの中で、穏やかに微笑んでいたときより。
全てを焼かれてなお、残された者と立ち上がったときより。
それらを超越した、憎悪と恋心。
至上の幸福の中で願う事は、ただ一つ。
この刹那、殺して欲しい。
純粋なる最期への渇望。それだけがハオへと流れ込む。
ハオがそんな簡単なことさえも叶えないのは、それが誰よりも愛しく憎いモノだからだろうか。
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