公平に不公平



「うぁ、あぁああぁあぁっ!」
大きく開いたシルヴィーの口から、こらえる事を忘れた嬌声があふれ出る。
「ん……やっぱり君の中は熱いね……」
体をすすめるボゥイの額から大粒の汗が滴り、シルヴィーの肌に落ちる。
「それに僕を締め付けて放さない……そんなに僕が欲しいの……?」
「あ、あぁっ……そんなわけ、あるかぁっ……」
「本当に君は口が減らないね……っと」
「……っ!」
ボゥイが腰を入れて、奥の奥まで自分自身をシルヴィーの中に打ち込む。
「ほら、全部入ったよ」
「は……ぁ、あ……」
シルヴィーの口から荒い息が吐き出される。
涙で潤んだ青い目が、ボゥイを見る。
震える睫毛が扇情的で、そんなシルヴィーを見たボゥイの頭に一つのアイデアがよぎる。
自分の思いついたアイデアの素晴らしさに思わず笑みが零れる。
その笑顔を見たシルヴィーの頭には、ボゥイとは対照的に嫌な予感がよぎった。
「はぁ、あ……ボゥイ、お前何、考えて……」
「ねぇシルヴィー、押し倒されるばっかじゃ不公平だって君は言ったよね?」
熱と快感で霞のかかるシルヴィーの頭におぼろげな記憶がよぎる。
「それじゃあさ、今日は僕が下になってあげるよ」
ボゥイがシルヴィーを抱えるようにシルヴィーの背中に手を回す。
「ボゥイ……?」
「だから、今日はシルヴィーが僕を存分に押し倒して?」
「っあぁああぁあっ?!」
ボゥイはシルヴィーを抱きかかえ、そのまま横たえるように体を倒した。
体勢的にはちょうど上下が逆転し、シルヴィーがボゥイの体に馬乗りしている形になる。
シルヴィーは自分の体重で、さらにボゥイを深く飲み込んでしまう。
「ん……シルヴィーちょっと締め付けすぎだよ……」
「誰のせいで……」
今度はジルヴィーの体から滴った汗が、ボゥイの体に落ちる。
「……ああ、いい眺めだね」
横たわったボゥイはシルヴィーの体を眺めた。
この体勢だと、桜色に染まった顔も、赤い跡が散る肌も、再び立ち上がったシルヴィー自身も全て眺
めることができる。
「シルヴィー、このままでいいの?ほら、今日はシルヴィーが上なんだから自分で動かなきゃ……」
ボゥイが軽く腰を揺らすと、シルヴィーの喉から引きつった嬌声が沸きあがる。
「あ、あ……んっ……」
わずかに感じた快感を追い求めるように、シルヴィーの腰が揺れる。
「は、ぁ……ボゥイ……」
「……ん?」
「後で……覚えてろよ……」
「さぁね」
「あ、あぁっ!」
ボゥイの手が、再び蜜を零し始めたシルヴィー自身に触れる。
「あ、あぁあ……ふ……んっ」
「……シルヴィー」
ボゥイの体に手をつき、前のめりになって体を揺らすシルヴィー。
「……やっぱ、我慢できないや」
「あぁああっ?!」
ボゥイが強く腰を突き上げる。
「あ、ああっ、ボゥイ……っ!」
「ん……僕ももうイキそう……」
「あ、ああぁあぁあっ!」
ボゥイが一際大きく腰を突き上げると、シルヴィーはボゥイの腹へ、ボゥイはシルヴィーの中へと、お
互いに欲望を解き放った。




「……だいたいさ」
ボゥイはベッドの中、隣で自分に背を向けて眠るシルヴィーに向けてつぶやいた。
「僕のほうが不公平だと思うんだ」
ちょっと大きいボゥイのパジャマに身を包み、疲れからかぐっすりと眠り込んでいるシルヴィー。
静かな室内にはシルヴィーの小さな寝息だけが響いていた。
「僕は、こんなに君の事が好きなのに」
素直じゃないシルヴィーの背中を見つつ、ボゥイが小さくつぶやく。
シルヴィーが寝返りを打ち、ボゥイに顔を見せる。
その顔は安らかで警戒心のかけらも見えない。
「……なんてね、君が嫌いな人にこんな姿見せないってわかってるんだけどさ」
眠るシルヴィーの額に軽く、触れるようなキスをする。
「もうちょっとだけ、僕の方を見て欲しいんだ……なんて、贅沢かなぁ?」
ボゥイは自分の発言に少しだけ顔に笑みを作り、枕もとの電気スタンドの明かりを落とすと布団に潜り
込みシルヴィーの手の上にそっと自分の手を重ねて眠りについた。


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