scene0 「カニvs姫」

「突然お邪魔してごめんねー、きぬっち」
「ホント突然だな、姫。卒業式以来か。いったいどうしたんだ?」
「ンフフー。ちょっとねぇ。会合の帰りついでに近くに寄ったから」
「・・・姫、なんかたくらんでねぇか? 目が少し怖ぇぞ」
「それにしても、結構お腹大きくなったわねぇ」
「ん・・・おう。性別も分かったぞ。男の子だってよ」
「ふーん。オーガズムを感じたら男の子が産まれやすいっていうけど、対馬くんもなかなかのテクニシャンということかしら」
「さらりと下ネタをいうなよ」
「お腹もそうだけど・・・ふふふー♪ やっぱ胸も若干大きくなってるわね」
「・・・ハイ?」
「きぬっち」
「なんだ」
「揉ませて♪」

・・・・・・

「な、何をいきなり言いやがりますですか、姫! それにあんた、巨乳好きじゃなかったのかって
うおぉおぉぉ! 自分で胸小さいと認めちまったぁぁぁぁぁぁ!」
「確かに私は巨乳好きよ。これまでありとあらゆる胸を揉んできたわ! ・・・乙女先輩の牙城はついに崩せなかったけど。
しかし! 古今東西! ありとあらゆる胸を揉んできた私でも、妊婦の胸は揉んだことがないわ!
そして、揉む機会が今まさに訪れている! ここで揉まずして何が乳マニアか!」
「おぉ・・・なんて力強い演説・・・ってそうじゃねぇ! 冗談もよしてつかぁさいな! 姫がやっとボクの胸に興味を持ったのは嬉しいというか、
そこはかとなく複雑な気分だけどさ」
「断るというのね・・・」
「当たり前じゃん!」
「ふっ・・・ならばそれはそれでよし。無理やりって言うのも、私は嫌いじゃないわよ」
「上等だっ!この胸はレオのもので、これから産まれてくる子供のものだ! ハイ、どうぞ、と簡単に揉ませてたまりますかってんだ!」
「その意気やよし。遠慮なく行くわよ!」
「来やがれセクハラ女帝がぁぁぁぁ」


scene1 「夫婦喧嘩?」

とある病院の一室。そこで二人の男女が対峙していた。
「きぬよ。俺はお前と付き合い始めて今ここに至るまで、お前の頼むことやること、最大限オレは譲歩してきた。
しかし、これに関しては、お前に譲る気はない!」
男、対馬レオが宣言する。
「ボクもレオに対していろんな迷惑かけてきたかもしんない。でもこの我儘だけは通してもらいたいね」
それに対し、対馬きぬ(旧姓・蟹沢)も我が夫の顔を見据えたまま言った。
「ほほぉ、一応自覚はあったんだな。我儘結構。しかし、たまには譲歩という謙虚らしいこともしてみてはどうだ?」
「情報だか検挙だかそんな難しい言葉を使ってボクをだまくらかそうとしたってそうはいかないね。
ボクの『名前』の法がこの子はきっと喜ぶに決まってるさ!」
「何を言う! この子の名前は『大河』だ!」
ドーン! と、いう効果音が鳴ったかどうかは知らないが、なかなかの達筆で『命名・大河』書かれた紙を突き出すレオ。
「い〜や! 『甲太』だ!」
こちらも負けじと『命名・甲太』と書かれた紙をきぬは差し出した。
言い忘れていたが、レオとかに、二人が対峙するその中間にベビーベッドがある。
その中には一人の男児の赤ん坊がこの喧騒などどこ吹く風。すやすやと眠っていた。
「・・・ふふふ、お前が妊娠して大河が産まれてくると分かってから幾数十日。このままでは埒があかないな」
「甲太だっつってんだろダボが!って、レオ、何してるんだ」
きぬの訝しげな表情を横目に、レオはガチャリと病室のドアの鍵を閉めた。
「レオ?」
「きぬよ、ここは一つ勝負といこう。これにお前が勝てば、この子の名前を甲太にしよう。だが、俺が勝てばおとなしく大河ということで納得しろ」
ネクタイを外しながら、レオはきぬが腰掛けているベッドに近づいていく。
「勝負って何をするんだ?」
「簡単なこと。これから俺はお前を襲う」
「ハイ?」
「俺の攻撃に耐え切れればお前の勝ちだ」
「な、ちょっ、まっング」
皆まで言う前にレオはカニの唇を自身の唇で塞いだ。クチュクチュと淫猥な音が病室に木霊する。
「ちょとまっちくり。それズルんっ・・・」
容赦なくレオの攻撃は続いた。
先程とは違った喧騒の中ベビーベッドの赤ん坊はのんきにクァッと小さなあくびをしながら夢の中にいた。


scene結婚以前 「メリークルシミマス」


「やぁ、対馬レオ君。メリークルシミマス」
「・・・フカヒレ、なんだその格好は?」
「私はフカヒレではない。しっと団のしっとマスクその人だ」
「はいはいパッパラ隊パッパラ隊。ずいぶんと貧疎なしっとマスクだな。
俺はこれからきぬと聖夜の一夜を過ごすんだから、玄関からどいてくれないかな?」
「聖夜だと? 性夜だろがアホが! クルシミマスを一人身で迎えて早17年。貴様に俺の苦しみが分かるか! 分かるまい!
そう!! これは天に代わって悪を討つ正義のわざ! 決して私怨からでわない!! 聖戦だぶゎは!?」
「殴っていいか?」
「もう殴ってるじゃねぇか!」
「とりあえず、そんなカッコで外を出歩くお前に敬意をひょうそう。風邪を引くなよ」
「うるせぇ! バーカバーカ! キリスト生誕を受精卵生誕日にしちまった世の中のバカップルなんてしんじまえばいいんだバーカ! ウワァァァン!」


scene花嫁修行 「愛○プ」


「皆さん、こんにちは。愛の○プロン、司会のシャークです。現在、蟹沢きぬ選手が我々ゲストのために料理を作っております」
「いかん! フカヒレが現実逃避を始めた! フカヒレ! 帰ってこい!」
「エェイ! レオ! 貴様が女の子の手料理を食いたくないか? と言うからついて来てみれば、よりによってカニの手料理かよ! オレを殺す気か!」
そう。現在オレこと対馬レオとフカヒレこと鮫氷新一は現在、蟹沢家の食卓で料理を待っていた。蟹沢きぬ手作りの料理を・・・
「落ち着け。今回はおばさ−もとい、お姉さんがきぬのサポートについているから、そう酷いものは出てこないはずだ」
お姉さんとは、松笠の呂布こときぬのおふくろさんのことだ。
「しかしなぁ・・・。予想の斜め上を行くのがカニだからな。サポートがいるとはいえ、不安だ」
「確かに・・・」
「なぁにをごちゃごちゃと失礼なことを言っているさね」
不安を述べる俺たちの前にきぬが皿を持ってやってきた。その後ろから小皿を手にしたおば−もといお姉さんも。
「あんたたちが不安視している味じゃないはずだよ。なんせあたしが見張ってたからね」
おばさ−もとい、お姉さんが胸を張って答える。
松笠の呂布のお墨付きか。なら安心かもしれん。
きぬが俺たちの目の前に料理を置く。甘スッパ辛い香りが漂う。
「へへ♪ ゆっくり味わいな。蟹沢きぬ特製エビチリだ!」
オレンジ斑模様の海老と豆板醤とケチャップの赤の色の取り合わせがたまらない。
見た目は合格だ。
「おぉ!? これはまさか、期待できるんじゃないか」
「あんたはどこの志村けんですか。失礼だぜ」
きぬが不平を言うが、オレもフカヒレに同意だ。
料理音痴という言葉すら生ぬるかったあのきぬが、まさかここまで綺麗に仕上げてくるとは。
きぬはおば−もとい、お姉さんから小皿を受け取り、エビチリをとりわけていく。
「ハイ、どうぞ。ありがたくいただきな。そしてレオは生まれ変わったボクに惚れ直すがいい」
「心配するな。惚れ直す必要がないほど惚れてるから」
「ハイハイバカップルバカップル」
箸で海老を一尾掴み、チリソースをたっぷりと絡めてやる。そして、箸を口に運ぶ。
「いただきまーす。ハム」


ウ ギ ャ ァ

「に、苦ぇぇぇぇぇぇつ!! 何だコリャー!」
「し、したが、舌がスッパ辛苦い!? 何だこの三重奏は!?」
もだえ苦しむ俺たち。なぜだ? なぜ、こんなに完璧に見えてこの破壊的なまずさなんだ。
眉間のしわもレベルマックスだ。
きぬも俺たちの予想外の反応に唖然としている。
「フム・・・」
見れば、おば−もとい、お姉さんがチリソースを指に絡めてぺろりとなめている。
「あぁ、なるほど。おい出涸らし。あんた、チリソースの仕上げにとろみを出すのに何を使った?」
「へっ? そりゃ、教えられたとおりに水溶き片栗粉を・・・」
「あんた、間違えたね。片栗粉じゃなくて、こりゃ重曹だ」
じゅ、重曹・・・。水溶き重曹でここまでのとろみを出すとは逆に尊敬に値する。
「ふーむ。最後の仕上げ以外の工程は完璧だっただけに残念だねぇ。まぁ、気にしなさんな。
あたしも若いころはよく醤油とお酢を間違えたもんさね」
・・・一つ謎が解けた。きぬの料理ベタはおば−もといお姉さんの遺伝なのだと。
とりあえず、この仕返しはオレのベッドの上でたっぷりとすることにしよう。


(作者・名無しさん[2005/12/04-2006/02/06])

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