「Trrr…Trrr…」
ガチャ
「はい、キッチン・椰子ですが。」
「あ、私○○テレビのものですが。」
「はい?」
「実はですね……」
「はぁ。分かりました。いいですよ。」
「ありがとうございます。ではまた後日連絡します。」
この電話が俺たちの夢をかなえることになるとは予測できなかった。

俺は今、なごみと結婚し、二人の夢であったレストランを開店した。
名前はキッチン・椰子。小ぢんまりしてる店だが、誰にでも気軽に入れる店だ。
スバルやフカヒレのサイン色紙が飾ってある。あと、村なんとかのも西崎さんと一緒に来たときにサインをしていってくれた。
そんなこんなでちょくちょく人は来てくれてはいるものの、ちょっと満員御礼には遠い。
そんなある日
「えぇ!?フカヒレが松笠を案内して、その中のお気に入りの店として紹介したいだって?」
「そうみたいです。以前……というか、オープンの時にあなたが連絡したじゃないですか。それで、友人であり幼馴染のあなたが経営して
いるこの店を紹介したいっていうフカヒレ先輩の希望らしいですし、幼馴染が出るって事でテレビ的にも面白いだろうって事で。」
「それでその撮影はいつ?」
「来週の日曜日だそうです。」
「分かった。これで、少し客足も伸びるかな。あ、そうだ、友人&幼馴染って事で、久しぶりに竜鳴館の旧生徒会メンバーでも呼んで、撮
影終わった後に宴会でもしないか?何だかんだ言って俺たち卒業してから同窓会とか行ってないし。フカヒレもメジャーデビューしてから
そう簡単にこっちに帰ってこれないだろうしな。」
「……それもいいですね。よし、あたしも当日料理頑張っちゃいます!」
「お、がんばれよ。じゃあ俺はみんなに連絡とって見るかな。」


で、当日。撮影は夕方頃ということでちょっと早めに店を閉めて来れるやつらを待っていた。
「で、結局これたのはボク達だけか。」
「ま、仕方ねぇよな。」
「姫と佐藤さんは時間ができたら、乙女さんは出張だとか言ってたけど。こうやって集まるのは本当に久しぶりな気がする。」
「そうだな。何年ぶりだ?でも、今日はフカヒレの事をたてようぜ。何だかんだ言ってもあいつが主役だし。」
「オウヨ!」
「そういうカニが1番心配なんだが。」
「んだと、このココナッツ風情が!」
「あたしはもうココナッツじゃない。間違うなよ『伊達きぬ』さん。」
そういいながらなごみはカニの頬をひっぱる。どこか微笑ましい光景だ。ちなみにスバルとカニは結婚している。そしてお互い伊達姓を名
乗っている。しかし、ずっと呼びなれているためカニと呼んでしまうことが多い。なごみはからかう時だけ使い分けているが、普段は大概
カニだ。二人はお隣さんだ。スバルがマスオさん状態だが……。
「ウガー!!」
微笑ましいが、ちょっと近所迷惑になりかけているので止めに入る。
「なごみ、そのへんでやめとけ。」
「あ、はい。」
ぱっと、手を離す。そこを間髪いれずにスバルが後ろからカニを抑えて(というか抱きしめてるという感じだが)なだめる。
「いい加減にしておけ。きぬ。いちいち突っかかってたら大人気ないぞ。」
「うー。スバルがそういうなら。」
ナイスフォロー、スバル。俺となごみが付き合うようになってからこういう仲裁が日常茶飯事となった。
まぁ、スバルがいない時は俺がどうにかするしかないんだが。それでも、高校時代より仲がいいと思う。この間も二人でどこかに食べに行ったようだ。
「なごみ、料理は大丈夫か?」
「はい。あとはお皿に盛り付けるくらいです。とはいっても、軽く炒めたりもしますが。」
「なら、大丈夫だな。ところで、スバルやカニは予定のほうは大丈夫なのか?」


そう、スバルは銅メダリスト、カニはゲームクリエイターとして有名だ。二人ともフカヒレのために時間を割いてくれたみたいだ。
「あぁ、大丈夫だ。まぁ再来週にはちょっとした大会、というかチャリティーみたいなのがあるがな。でも今は比較的暇なほうだ。」
実際、次のオリンピックを狙っているので休む暇など無いと思うが、あえて聞かないことにした。
「ボクはぜんぜん大丈夫だよ。ついこの間手がけてたゲームが仕上がったから今は暇だね。」
「あ、そうだ。俺たちの間だとあいつはフカヒレだけど、一応あいつ芸名はシャークだしな。そこのところ気をつけようぜ。」
「あぁ、そうだな。」
さて、そろそろ準備のためにスタッフが来る頃だ。こっちもちょっと準備しなきゃな。

「すみませーん。○○テレビのスタッフですが、準備に来ました。」
「はーい。」
テキパキと、俺となごみで対応する。
ちょうどそこへトイレにでも行ってたのかスバルがスタッフの前を通る。
「!!?」
「どうかしたんですか?」
「あなたは、もしや、陸上の伊達スバル選手ではないのですか!?」
「はぁ、そうです。」
「本物だ。メダリストが目の前にいる。あとで、サインもらえまs「準備終わったか?」」
そこへディレクターらしき人が来た。
「ちょっと、ディレクターさん、来てくださいよ。本物の伊達選手ですよ!」
「何だって!?それで、なんで、伊達選手がここに?」
「実は…かくかく…しかじか…で。」
「なるほど、幼馴染4人そろってですか。しかし、ちょうどいい。サプライズとして、伊達選手に登場してもらっていいですか?」
「もちろん構いませんよ。こっちはテレビにはだなれてますし、あと、もう一人の幼馴染のきぬさえ出してくれればOKです。」
「こちらとしてはぜんぜん構いませんよ。もともとは、対馬さんだけで話を進めていこうと思ってました。これはとんでもないサプライズ
ですね。視聴者もそう思うはずです。あ、セリフとかは、特定のコーナーのところはありますけど、そのほかは基本的にアドリブですので
。」
「分かりました。」
「では、よろしくお願いします。そろそろスタンバイのほうよろしくおねがいしまーす。」
「はーい。」


「今日最後のお店はシャークさんの幼馴染が経営されてるというレストラン・椰子です。この店はつい最近開店したそうですね。」
「そうです。つい最近できたばかりです。ここのマスターは俺のすっごく小さい頃からの付き合いで。まぁ、料理を作ってるのはあいつの
奥さんだけど、味は保障できますね。開店してすぐとか、高校時代にカレーとか食わせてもらいましたしね。」
「そうですか。それは楽しみです。では入ってみましょう。」
カランカラン
「こんばんは。失礼します。」
挨拶をしてなごみが席に案内し、料理を出す。何で俺が案内しないのかって?
スタッフがうまく俺の悪口をフカヒレに言わせてそこで登場させて少しあたふたさせようって事らしい。
さらに、ディレクターの考えはそこで一緒にスバルを登場させてレポーター(?)も一緒に驚かそうって話らしい。
で、そんなこんなでうまくそっちの方向にレポーターが話を持って行ってくれている。フカヒレも乗りやすいから簡単に言うだろう。

「で、実際に学生時代、ここのマスターに対して思っていたことは?」
「熱くなれば本当に頼りになるやつだけど、普段は簡単なことですぐへこむヘタレ……。」
やっぱり簡単に言った。基本的に調子に乗りやすいやつだからな。
「……あ、レオ。久しぶり。もしかして、全部聞いてた?」
「当たり前のことを言わないでもらおうか。お前に比べたらましだとは思うがな。」
「よう。元気そうで何よりじゃねぇか。」
「……………あなたはもしや伊達選手ですか?」
「そうです。陸上の伊達スバルです。」
「よっ。フカ……じゃなくてシャーク。」
「カニ!何でお前まで!?」
「失礼だね。ボクはもうカニじゃないです。伊達ですよ。」
「えっと、失礼ですが、シャークさん、そちらの方々は?」
「あ、すみません。えっと、順番にここのオーナーの対馬レオ、皆さんご存知の陸上の伊達スバル、ゲームクリエーターの伊達きぬです。
あと、さっき料理を持ってきてくれたのがオーナーの奥さんの対馬なごみです。」
「フカ…じゃなくてシャークてめぇ、さっきはよくも俺のことへタレ呼ばわりしてくれたな。」
「ごめんってば。やめてよ、お姉ちゃ〜ん、いくらなんでもそこまで関節は曲がらないよー。」

しばらくお持ちください。


「……えっと、シャークさんはどうすれば。」
「あぁ、あいつはすぐに復活しますよ。殺しても死なないやつですからね。」
「……。」
「あいつは、こいつと同じでただ度胸が無いだけですよ。それ以外はいろんな意味ですごいやつです。」
「昔からギターはやってたんですが、竜鳴館に入ってなければ間違いなくこいつはここにはいませんからね。」
「そうそう。あいつは人間失格系のヘタレだけど、やるときはやったね。」
「そうだな。こんな事言ってると竜鳴館時代が懐かしいな。」
「あ、ではその竜鳴館時代のシャークさんについて話してもらえませんか?」
「もちろんです。」
「そうですね……まずは、……。」
「で……、こうでして……。」
「それで……。」
「こうやって聞くといろいろな意味ですごいですね。」
「そうですね。でも、こいつはだめなとこも多かったですけど、音楽関係の仕事に就く道を歩き始めなければ、この店は無かったでしょう
ね。」
「と、言いますと?」
「なごみが料理のことが好きだって思えるようになったのは、俺らが高校2年の時の夏、こいつが路上演奏を始めたからなんですよ。なごみ
曰く『貴重な青春を費やしたくない』とか言ってたらしいですけど、何だかんだ言ってその後路上演奏を始めるようになって、で、ちょう
どその時、学校の体育祭の料理のヘルプを俺が依頼したらしいですけど、こいつの演奏を聞きながら考え事していたら料理が好きだったん
だなって思えるようになったって言ってましたからね。ですからこいつが始めなければここにもいないし、この店も無かったんですよ。」
「なるほど。確かにそうですね。」
「でしょう。ですから、こいつにはそれなりに感謝してるんです。本人の目の前……というか、起きてる前ではいえませんけどね。」
「それはそうですね。」
とみんなで笑ってしまう。


途中でフカヒレが目を覚まし、俺たちの言っていることを否定していたが、何だかんだ言って、楽しんでいた。なんだか竜鳴館で馬鹿やってた時のようだ(乙女さんとか姫とかいないけど)。
時間が過ぎるのはあっという間で、撮影が終わってもそこは宴会場と化していた。
もちろん、料理はなごみの得意料理で軽いものだったけど。

「それでは今日はどうもありがとうございました。色々シャークさんの過去とか知れて楽しかったです。」
「お前らなぁ、テレビの前であれだけの過去バラしやがってぇ。」
「事実だしな。」
「それでも、やっぱりお前らといると楽しくてしかたねぇな。この場所というか、この松笠は俺らの原点だしな。」
「こいつ言うね、フカヒレのくせに。」
「これでも、俺は超有名人なの。それくらいかっこいい事言ったっていいじゃんよぉ。」
「まぁ、楽しかったよ。またこうして遊ぼうな。」
「オウヨ!」
「スタッフのみなさんもありがとうございました。また来て下さいね。」
「ぜひ、そうさせてもらいますよ。」

そして放送日が過ぎた後、店は爆発的に客足を伸ばしていた。フカヒレ&スバル効果凄まじい……。
さらにその後、ここの人気で他のテレビ局からア○街○国とかいう番組で松笠を紹介するのでアンケートをとったらこの店がベスト30に入
ったので取材させてくださいと言ってきた。
もちろん主役はなごみだ。そこでなごみは父に料理を教わったと言えた。これで、さらに人気が出てきた。
「あぁ、ちょっと前までなごみとまったりしてたのが1番幸せだったのに〜。」
「クスクス。じゃあ、お互いに夢が叶いましたね。」
「ああ、そうだな。やっぱり、お互いに頑張れたからこれまでやってこれたんだものな。」
「そうですね。でも、これまでではなくて、ずっとですよね。」
「そうだな。もっとずっと頑張ろうな。」
「ハイッ!」

こうして忙しくても、充実した日々を大好きな人と一緒にすごしていく。いつまでも、いつまでも……。


(作者・名無しさん[2007/07/06])

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