「レオ…今までありがとうね」
「何言ってんだよ、これからもだろ」
………非常にまずい、なんとかこの状態を切り抜けねば…
「本番始まりますー役者の皆さんスタンバイして下さい」
よし、行け、早くスタンバイしろ、近衛!
「その…レオ…?…もう、スタンバイ前だから…キスして?」
なっ…なんだとぉ!?キス?!あぁ、もう、なんでこうなんだよっ…

話は30分ほど前に遡る


「佐藤さん、って進路どうするの?」
いつもの竜宮、いつものメンバー
2年も終わりかけの2月、この言葉がキッカケで、俺はとんでもない目にあう
「え?私は…キリヤカンパニーに就職かな?」
「そっか、カニは?」
「んー?まだ、決めてねぇや。
プログラマーとか、やってみたいんだけどねーつか、楽できりゃどれでもいいんだけど」
どこまでもカニだった
「あらあらぁ、もしかして、対馬君、進路決めれてないのー?」
姫がにじり寄ってくる
「嬉しそうに聞かないでくれよ、姫……まぁ、そうなんだけど…」
「坊主は進路決めなくても、大丈夫だぜ?俺が面倒みてやる」
「スバル…それは、嬉しいがその手の冗談は止めてくれ」
「ったく、つれないねぇ…」
「この二人…やっぱり…」
「エリーそれ、夏からずっと言ってるよぅ?」
姫が何時ものようにふざけ、佐藤さんが何時ものようにツッコミを入れる
そう、ここまでは、普通だったんだ…



「なら、私が、迷える子羊に手をお貸ししますわー」
「祈先生?」
「手を貸すってどんな風に?
ま、まさか……ハァハァ」
フカヒレ…
「フカヒレさん、気持悪いですわー」
あっけなく玉砕する、学習能力が無さすぎる…
「本題ですが、私の術で未来を見せて上げます………一度きりですよ?疲れますから…」
未来が…見れる?
「それ、本当なの?祈先生」
まず、一番始めにツッコミを入れたのは、姫だった
「本当ですわー…私を信じないのなら、ご勝手ですけど…」
「はいはいはーい、信じます、信じます!是非、俺の未来を見せて下さい!」
フカヒレが真っ先に飛び出す
「浮浪者になる未来は…見ない方が宜しいでしょう?」
笑顔で毒舌だなぁ……
「ふ……ふふふ……幸せになる奴なんか居なくなっちまえ、ウワーン」
泣き叫びながらフカヒレは消え去った
「でも、祈先生にしては、珍しく生徒思いじゃないですか?」
「珍しくは、余計ですわー対馬さん…と、いうのも…2-Aの担任が、ねちねちと言うものですから…」
「あ、なるほど、分かりやすいです」
やっぱり祈先生でした
「と,言うわけで今から2-Cの皆さんに一人ずつ未来を見せますわ…霧夜さん、いらっしゃいな」
祈先生が姫を手招きする


「私は別にいいですよ?先生」
「私がサービスする、と言ってるのですよー?慎ましく受け入れなさいなー」
イスに座りながら祈先生が言う
「はいはい、分かりました、見させて貰いましょう?キリヤカンパニーを乗っ取った未来を」
そういいながら、反対側のイスに腰かける
「そうですか、では、この水晶玉をご覧下さいな」
姫が水晶玉を見た瞬間、二人とも机に顔を突っ伏して眠りだした
「うわ、なんだ!?」
「始まったんじゃ、ねーの?」






祈先生に未来が見れると言われても、半信半疑だった
だけど私は今確実に未来を見てる…何故か、私と…対馬君の未来を…
私の目の前で、数年後の私と対馬君が仲良さげに話してる
私の姿は数年後の私達には、見えてないらしい
そして向こうの声は私には、聞こえない
「これ、どういう事ですか?祈先生」
すぐ隣に居た先生に問いかける
「どういうもこういうも、対馬さんと霧夜さんがお付き合いをしていて、霧夜さんがキリヤカンパニーを乗っ取ったって、事でしょう?」
「冗談にしては、笑えないですね…」
声が少し強ばる、何を焦ってるのだろう、私は…
「今、私が見せてるのは、可能性の一つですわー」



「はっ…ありえないですね…よっぴーならともかく、私が?対馬君と?付き合う?冗談もほどほどにして下さいよ!」
何故か、声が荒くなる
「本当に、対馬さんを意識してませんかー?貴女も気付かない内に対馬さんを見てたり、探したりしていませんか?」
何故か私は言葉が出なかった
「では、そろそろ戻りますよー霧夜さん…自分の未来は人に話してはいけませんよ?」
「わっ……分かりました」




姫と祈先生がむっくりと起き上がる
「終わったみたいだぜ?坊主」
「そーみたいだな」
姫がこっちをじっと見ていたがあえて気にしない事にした
「私が…?…あり得ない…あんなのを…」
何か聞こえるが嫌な予感がするので気にしない




その後カニ、佐藤さん、何故か椰子、乙女さんと続いたが
皆何故か終わった後、俺を見て何か呟いてる
何か怖いので気にしない
「では、次…対馬さんですわよー…」
「あっ…はい」
慌ててイスに腰かける
「では、この水晶玉を見てくださいな」
水晶玉を見た瞬間…視界が薄れていき……俺は意識を手放した


目の前に未来の俺がいた…一緒に居るツインテールはまさか……近衛?
親しげっていうレベルじゃない位仲良さげに話す未来の俺達
クソッ…何を話してるのか聞こえねぇじゃねぇか…
「何を話しているか聞きたいですか、対馬さん」
「聞きたいです」
聞きたいあまりに余り考えず答える
「なら、あの対馬さんの中に入りましょう」
………え?
「いきますよ?対馬さん?」
既に後ろでは呪文が唱えられていた
避ける事も受ける事も叶わず…そのまま飛ばされ…
俺は、未来の俺に憑依した
近衛の顔がドアップで視界を覆う
まずい…
「レオ…今までありがとうね」
「何言ってんだよ、これからもだろ」
………非常にまずい、なんとかこの状態を切り抜けねば…
「本番始まりますー役者の皆さんスタンバイして下さい」
よし、行け、早くスタンバイしろ、近衛!
「その…レオ…?…もう、スタンバイ前だから…キスして?」
なっ…なんだとぉ!?キス?!あぁ、もう、なんでこうなんだよっ…
近衛は目を閉じ、既に準備万端だった
これは、近衛じゃない…そうだ違う奴だ
そう言い聞かせながら、近衛にフレンチキスをする
「えっ…?」
近衛が驚いた顔をする…ヤバいのか?!


「んふふっ、何か学生時代のキスみたいだったわよ、元気貰ったわ………じゃあ、行ってくるね」
顔を真っ赤に染め、近衛が走りさる
なんとか、ごまかしきれたようだ…と一息ついてると後ろから引っ張られる感覚がする
そのまま意識だけ引っこ抜かれる
「どうでしたー?対馬さん」
「いや、えらく疲れましたよ…というか…何故に近衛なんですか?」
「この術…実は…その人の未来の中で、一番その人がなりかった未来なのです」
祈先生の話は更に続く
「今、対馬さんは彼女と喧嘩してますのよね?でも、本当は仲直りしたい、そして、その先へ行きたい………そう、思ってるのです」
「でも…俺は………」
「男なら、テンションに身を任せてもいいのではないか、私はそう思いますわ…」
俺の中でふつふつと何かが沸き起こる
…迷いは無くなった
「……では、戻りますわよー」





現世に戻った対馬さんはまっすぐに竜宮を出ていきましたわ
「祈よぉ、どうして…あの小僧にはぁ本当の事を言ったんだぁ?」
「土永さん…あの子、私と同じような事を言ってますでしょう?
あの子は、まだ取り返しがつきましたから……
私みたいな人生を生きて欲しくなかったのですわ〜」
「全く…罪なぁ男だぜぇ、アイツは…結局生徒会の女子全員のハートを盗んで行っちまいやがったぁ…」


現世に戻った俺は、祈先生に礼をすると、皆を無視してまっすぐに竜宮を飛び出した
体育館裏を通り、雪の積もったグラウンドを抜け、校門にでる
…いた、近衛だ!
「…近衛!」
大声で近衛を呼ぶ
「………対馬…?」
走って来たから息切れして何も言葉が出ない
「なに…なんなのよ!早く言わないと、帰るわよ!」
クソッ、思考がまとまらない、何か言わないと…何か…
「好きだっ!?」
え…?いや、違っ…ちょ…え…?
校門前だから、かなりの人が見てる…近衛も赤くなってる
「ななな…何を言ってるのよ、アンタはー!こんな所で!」
終わった…仲直りしたかっただけなのに…
近衛が真っ直ぐこっちへやってくる
「わ、私にこんなに恥かかせたんだから…責任とりなさいよ」
真っ赤になりながら俺に手をさしのべてくれる
「OK…」
その手を取り、近衛を抱きしめる
「あぁっ…ちょっと何するのよ!?
あ…べ、別に嫌じゃないわよ?どうしてもって対馬が言うなら…」
こうして、俺は史上最大の喧嘩にピリオドを付けた


「レオ…今までありがとうね」
俺には最愛の彼女がいる
「何言ってんだよ、これからもだろ、素奈緒」
その彼女が、今日ついに、主役を演じる
素奈緒は学園を卒業後、劇団に入り、俺は同じ劇団で大道具をしていた
「本番始まりますー役者の皆さんスタンバイして下さい」
ついに、スタンバイの声がかかる
「その…レオ…?…もう、スタンバイ前だから…キスして?」
かすかに震える声で素奈緒が呟く
そういえば、7年前にこれを見たときは素奈緒の声が震えてるのなんて気付かなかったなと思い、子供だった自分に苦笑いする
あの時は近衛じゃないとか、思いながらやったっけか?
そう思い出しながら、素奈緒にフレンチキスをする
「えっ…?」
素奈緒が驚いた顔をする…そのまんまだ
「んふふっ、何か学生時代のキスみたいだったわよ、元気貰ったわ………じゃあ、行ってくるね」
顔を真っ赤に染め、素奈緒が走る
それを呼び止め
「素奈緒、この公演が終わったら結婚しよう!?」
「うんっ!」
飛び抜けに明るいOKの声は客席にまで届いて客を驚かせたとか…


(作者・633氏[2007/03/29])

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル