7月初旬、昼間は暑くなってきたが、夕方ともなると心地よい涼しさになる。
 竜宮の窓という窓から差し込むオレンジの光。何とも情緒溢れるじゃないか。
「この風景を、女の子と二人きりで心ゆくまで眺めたいねぇ〜…」
 折角この鮫氷新一ことシャーク様が、夕暮れに憂える美少女の心の隙間を埋めてやろう
と思って来たのにさ。よっぴーあたりなら遅くまで残ってるかなぁ、なんて期待してたのに…
 おっ? なにやら面白そうなモノはっけーん!
 こんなこれみよがしにテーブルの上におかれた上に、ご丁寧にも『マル秘』なんて書かれ
た資料なんて、みないわけにいかないっしょ。もしかしたら姫やよっぴーのエッチな秘密とか、
椰子や乙女さんの弱点とか… うへへ、考えただけでよだれが出そうだぜ。
「えーと、何々…『生徒会新規参入者募集及びイメージアップに関する案件』…… うへ、マル
秘なんていうから何かと思ったのに…」
 いやいや、待つんだ俺。ひょっとしたらこれはカモフラージュで、この後にお楽しみ情報が
満載なのかもしれん。もう少し読んでみよう。
「『予定している催事は食堂のラウンジに臨時で仮設する「軽喫茶 竜宮(仮称)」。スタッフ
は生徒会役員が担当するものとする……」
 ん、次のページだけ手書きだな。つか、姫の字だなこりゃ。
「A案:喫茶店って、やっぱりメイド服よね。 B案:コスプレ喫茶っていうのも、悪くないわよね?
 C案:暖かくなってきたことだし、ここは思いきって水着喫茶っていうのもアリかしら?」
 な、なんかオラわくわくしてきたぞ。D案は何故か消されちゃってて読めなかったけど、これ
どれが選ばれても… やべぇ、今からカメラ用意しとかなきゃ。リアルCG回収ポイントとしか
思えねえじゃんこれ!
 つか、俺が好き勝手にどれかに○つけて知らん振りしてても決まるんじゃねこれ?
「あれー? 私○なんてつけたっけか… まあいいや、これにきーめたっと」
 とか姫が勘違いしてさ。うん、姫なら充分ありうるな。
 よーし、ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜♪




(Cを選んでしまったフカヒレ編)

 数日後、開設を間近に控えた『軽喫茶 竜宮』に俺は呼び出された。モニターとして竜宮の
面々がきちんと応対できるかのテストということらしい。
 多分アレだ。女の子を見る目に肥えた俺に、衣装がちゃんと似合ってるかどうか一番に見て
もらいたいからに違いない。ふっ、モテる男はツライぜ。
「こんちゃーす」
「あっ… い、いらっしゃいませ……」
 おっ、よっぴーのお出迎えとは気が利いてるじゃないか。俺の思ったとおり、ピンクのエプロンが… 
エプロンが似合って……
 ごしごし。
「?!」
 ば、バカな… エプロン…… だけだと?! まてよっぴー! いくら俺が魅力的だからっていきなり
裸エプロンはマニアック過ぎないか? いや、これは俺への愛がそうさせたとしか思えん!
「そ、そんな目でみないでよぅ…」
「よっぴー… 俺のために」
「え…… え?」
 すまんレオ。俺は女の子にここまでされて我慢が出来るような奴じゃないんだ。悪いが先に大人
への階段を登らせてもらうぜ。
「おーい、そこの目が血走ってる猿顔く〜ん?」
 誰だ?! …って、俺が可愛い女の子の声を聞き間違えるわきゃあない。あれは姫の声だ。
「よっぴーをどうこうしていいのは私だけよ。フカヒレ君にはモニター越しの彼女がいるでしょ?」
「エリー… それはさすがにいいすぎじゃない?」
 姫の声に身体ごと振り向くよっぴー。ちょっ、みえるみえちゃうみたいみせてー… って、なんだ
水着着てるんじゃん。がっかりだぜ。
 とはいえ、こんな間近で姫たちの水着姿を拝めるだけでも生徒会に入った甲斐があるってもんだ。
「さて、実はフカヒレ君にもこの喫茶店に花を添えてもらいたいと思ってるの。これは… フカヒレ君に
しかできない重要な任務よ」
 なんですとっ?! そうか… ようやく姫も俺の魅力に気がついたってことだな。
「ところで、乙女さんとか椰子の姿が見えないようだけど?」
「乙女センパイは普通に風紀委員の仕事。なごみんは裏で準備してるわ。二人とも忙しいけれども、
フカヒレ君に頼みたいのは… これよ」


 俺は今、喫茶店脇に作られた小さな人工の砂浜にいる。砂浜っていうよりは公園の砂場って感じ
だけどな。
 そして、手渡されたのはヘルメット。緑と黒のギザギザ縞模様の変わったデザイン。カッコいい
とはいえないけど、姫に是非にってたのまれちゃあイヤとはいえないからな。
 んで、日がな一日窓から喫茶店を眺めながら、砂に身体を埋めてのんびりまったり。
 正直退屈ではあるけど、姫やよっぴーに乙女さんの水着姿を見放題ってのはサイコーだ。
「……フカヒレ先輩、何やってるんですか?」
「おっ、椰子じゃん……」
 うお! こいつのスク水姿初めて見たけど… なんつー反則的なスタイルなんだ。普段ツンツン
してるくせに、俺が動けないのを知ってこんなサービス… いや意地悪をするなんて。
「椰子、お前も人が悪いぜ」
「? ところで… そこに書かれているのって、本気ですか?」
「なになに、どっかに何かかいてあるの? …って、何で椰子、バットなんか持ってるの?」
「只でさえ暑い時期なのに、ろくな換気もない即席の厨房で料理なんて作ってたら… 誰だって
バットくらい持ちたくなります」
 や、椰子さん? どうしてバットを大上段に振りかぶってるのかな? どうして俺の目を見て、そんな
ことをいうのかなぁ?
 首だけを動かしてあたりを見回すと、俺のすぐ近くに立て看板があるのに気づいた。
『スイカ割り ご自由にどうぞ』
 …………
「まてっ、話せばわかる! 落ち着け椰子! どう見たって姫のシャレだろこれ?!」
「……? 疲れてる… スイカがしゃべるわけないのに……」

 鈍い音が、喫茶店に響く。
「無茶しやがって…」
 ぽつりとカニが呟いた。


(作者・名無しさん[2006/08/18])

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