「おい、 カニおきろ!」
ペシペシ脚を叩きながら、めんどくさいのでボディーにブローをかました。
「ぐふっ!」

「なにさらすんじゃぁ〜〜!。こら〜〜!!」
通学路を全速力で駆け上がっていく。周りなんて気にしてる余裕はない。
「お前が、いつまでも寝てるからだろが!」
スバルが朝練だから余計遅れちまったぜ!もうちょっとちゃんとせな。
「レオだって、 今日ねぼうじゃんかよ〜〜!」
「つべこべ言わず走れ! ばか!」

青空の下、二つの足音が幾重にも重なってこだまする。追い風も吹いた。

「あと30秒! 何だお前たちか! もうちょっと余裕を持って来い!」
「聞いてよ、おとめさ〜〜ん。 レオがボクをおいてこうとしたんだぜ!」
「途中でジュース買うとか言うな!」
「まったく。 せっかく用があって呼び止めたのに、これか。先が思いやられるなぁ〜〜」
乙女さんがため息をつく。できの悪い妹はホンと困る。
「鉄先輩! すいません。用事をたのんじゃって!」
「なに。 二人の登校時刻なんて知れてるからな」
「って、 ふたりとも聞いてないですね」
「……」

「みっともないから、やめろ!!」
乙女さんが俺の首をつかんで右の校門にぶつけた。ブオンとすごい音がした。
「ぐかっ! いったたた!!」
あやうく気を失うとこだった。 最後に佐藤さんのパンツが見えた。
「まったく、 朝っぱらから元気なやつだ! 自重しろ!」
あんた、だけには言われたくない。鍛え方がちがうんだ。


「蟹沢! ネクタイが曲がってるぞ!」
こうしてみると二人はいい姉妹なのかも。乙女さんなんだかんだでやさしいしな。
まあ、まだ体が校門にめり込んで、世界の上下が逆な気がするけど、よいしょ!
「ありがとう、乙女さん。ざま〜みろ、レオ!……って、れお?」
「対馬君、 ネクタイ曲がってるよ!」
「ありがとう、 かわいい佐藤さん」
「え! え!え!」
「てぃあ〜〜〜!」
「ぐほ!」
カニがおもいっきし強烈なケツキックをかました。
「な〜〜に!よっぴーにネクタイ直されてぐらいで鼻のした伸ばしてんだ、この純朴田舎少年!」
「itano?」
「よし。 殺す!」
「二人ともけんかはやめようよ〜〜!」

「で、 用件ってなに?、佐藤さん」
「それより、カニッチは」
「ああ、ここから100mはなれたイチョウの木に縄でしばってつるしてきた」
「いいの?、そんなことして!!」
「たまには、上下関係を示さないと!っで、はなしは?」
「化学の資料集がクラス全員分、職員室にあるから運んでほしいんだけど……」
「お安い御用!」
「わあ! ありがとう、対馬君!」
「なんだ、たのめば、私がやったのに」
頼られない年上のねたみが聞こえてきた。さびしそうだった。
「じゃあ、私は、これで。 エリーをまたしてるから!」
そういって良美は足早に去っていった。まじめなんだな。俺らと違って。
姫を待たしてるなんて難儀だな。きっといじめられる。
俺はかばんを二つ持ってグラウンドに向かった。


「そこで、頼れる親友の登場ですよ!」
「まあ、 わるい気はしねえな」
レオはスバルの朝練上がりを待っていた。
「うっかり、俺ルート突入かと思ったぜ!」
「そういう冗談はやめれ!」
たしかに冒険してるだけに、後先が保証できない。
「まあ、お前がよっぴーにたいして前向きなのはいいんじゃねえの?」
「でも、佐藤さんはな〜〜」
「お前に、もったいないとも思わないぜ」
「でもクラス委員長だぜ!」
「関係ねえよ! いざとなったらな……」
「そんなもんか」
「そんなもんだ!」
「料理うまいしな」
「負けん」
「そういう冗談は、いいって!」
「ゆずらん!」
「わかったよ」
「でも、あんなにまじめで綺麗って珍しいぜ」
スバルが二つのかばんを指差した。
「特別だよ! 佐藤さんは……」
vサインを二つ作った。カニのを貸せと合図する。
「本気になったら、いつでも応援するぜ!」
「善処します」
いつもながら手馴れた政治家発言だった。スバルにきぬのかばんを渡した。
結局佐藤さんは俺の中で……うほ! いい若妻!!


「ああああ。だり〜〜」
スバルが大きい体をゆすりながらやっと起きだした。
「ネスギw」
「まあな、 スパイクの新調あって金が必要なんだ。スポーツも結構金かかんだよな」
大変だな、こいつも。まあ、変に同情しないけどさ。
「っじゃあ、 部活いくわ」
「ガンバ! 人妻がグランドでお前のこと待ってるぜ!」
スバルが窓から身を乗り出す。顔はわざと真剣な表情をしていた。
「軽々しくうそをつくんじゃありません!」
「ぐは!」
おもいっきり肩を叩かれた。痛いっての。
「マジなら、ほんとシャレにならんぜ!」
「ニヤニヤ」
「ニヤニヤ」
「っじゃ」
「おう」
さっそく掃除当番で欠員が出たわけだが。
しかし、教室のドアでスバルと祈がすれ違った。
祈がちらっとスバルを見る……。そして、目をつむる。
「祈センセイ、 伊達クンを華麗にスルーしたネ」
「ほんまや」
いいのか。祈先生はあたりを見回した。
「問題ないですわ〜。かえってよろしいですわよ〜」
はじまってもないじゃん。いい加減すぎ、このセンセイ。まあ、……帰るけどさ。
でもなんか忘れてる気がする。
あっ!……


「すばる〜〜〜! スバル〜〜〜〜!」
「どうした、坊主!」
「カニを校門近くに縄でつるしたまんまだ!」
「なんだって〜〜〜〜!!」

レオの部屋
「ふざけんな〜〜! マジでさっきまで両腕うごかなかったんだぞ〜!!」
「悪い! 今回は悪かった!」
てか、腕ぶんぶんぶんまわしてパンチしようとしてるお前は何さ!
「デッドだ! デッド! デッドグッツおごれ〜〜!」
「しゃーねーな、レオ」
もはや情けをかける余地なしか!
「わかったよ、安いやつな」
「だめだね! 10万のTシャツのみ受け付けだかんね!」
「氏ね!」
「あ〜ん!」
スバルが痺れを切らして二人の間に割って入った。
「じゃあ、今年のカニの誕生日会をレオがやるのはどうだ?」
「はあ〜〜!」
「いいね! スバル」
きぬとスバルがハイタッチする。こいつらグルかよ!
「いやだもんよ! そんだったらそれまでに佐藤さん彼女にしてその日デートしてやるもんよ!」
「おお!えらく前向きな発言だな」
「レオにそんな勇気あるわけねえだろ」
「いたの! フカヒレ」
「いたよ。親友忘れんなよ!」
新一はギターをかき鳴らす。まさかという顔をしている。
「知ってたっだろ!」
「いやx3」
「新一です。俺はこのゲームのヒーローだったはずとです」
そんな設定ねえよ。孫ゲー孫ゲーうるせーし!


「ま、そんな冗談を信用するほどボクもおにじゃないよ!」
「!?」
やべえ、完全になめられてる。腹が立つこと山の如し。
「わかったよ、じゃあカニの誕生日会に来る人!」
「は〜〜い!」
「もちろん、オレも参加だ!」
「いや〜〜。なんかわり〜な。みんなボクの生誕祭のために!じゃあ、ボクも〜〜」
きた!
「?」
三人とも手を目の前に返した。
「ど〜ぞ!ど〜ぞ!ど〜ぞ!」
「ダチョーさんかよ!!」
よし! すっきりした。たまにはこういうのもいい。
「そこでカニを慰める俺の登場ですよ」
「スバルの施しはうけね〜〜! ちくしょーー!」
こんな感じで俺らの聖域の時は過ぎていくわけですよ。一旦CMでーす。

スパイスの香り。悠久のインドを思わせる店内。
そして、妖精のようにかわいいボクこと蟹沢きぬがウェイトレスの店。
松笠駅から徒歩8分。松笠海軍カレーの店、オアシス。

「勝手に都合よく場を流してんじゃね〜〜!」
きぬがおもいっきり枕を投げた。



「てか、今の画面にカニじゃなくて椰子が映ってたぞ」
「マジ?」
「て、ことは。まあ、オレはどうなっても知らねえが」
「ボク呼びなごみんハァハァ……」
(先輩、ボクは子供じゃないです)←ふかひれ的脳内変換
「まあ、そこが狙いだな。椰子はブチ切れだと思うが」
「カニ! お前声はスタジオかなんかで録ったのか?」
「ううん。店内でマイク渡されて、絵は後どりだってさ! 完成楽しみだよね〜」
カワイソス。カニメチャカワイソス。
「ねえ、なんでボクがはめられたのに、三人のほうが真っ白になってんだよ!」


(作者・名無しさん[2006/07/27])

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