「……ホスト部?」

「そう、ホスト部。せっかく美形の伊達クンもいるんだし
 次の竜鳴祭、生徒会企画としてどうかしら?」

昼休みの竜宮で
また姫がおかしなことを言い出した。
姫の背後では佐藤さんが

『また何かに影響されたみたいだけど気にしないで』

的なオーラを出している。
……ああ見えて、姫はミーハーだからなぁ。

「どうかしらって言われても
 俺とスバルとフカヒレだけじゃ……」

「ん?フカヒレくんは数に入れてないわよ?」

この場にフカヒレがいたら号泣しそうだ。
まあ、アイツにホストとかさせるわけにはいかないだろうけど。

「それじゃ余計足りないよ。俺とスバルの二人だけじゃ
 ホスト部って言えるほどにはならないだろ」

「もちろん、二人だけにやらせる気はないわよ?
 私と乙女センパイ、それになごみんにも男装してホスト役をやってもらうわ。
 どう?この5人でならいけそうでしょ?」

と、ソファに寝転がっていたスバルがムクリと起きあがってきた。

「悪ぃな姫、俺はその企画パスさせてもらうぜ」


「あら。伊達クンならファンの女の子も多いし……」

「二度言わせないでくれ。俺は、やらない。
 ……じゃ、ちょっくら走ってくるから」

ほんの一瞬、普段竜宮では見せたことのないような
鋭い目線を姫に送ると、スバルは竜宮を出ていってしまった。

「ちょ……なんなのよ、あれ。
 あんな風に嫌がるなんて、伊達クンってそんなキャラ……
 はっ!……やっぱり……対馬クンの前では嫌なのかしら……」

「エ、エリー、どうどう」

『また変な妄想してるけど気にしないで』

的なオーラを俺に向けながら
佐藤さんが姫をなだめている隙に
俺も竜宮を出た。
スバルを追いかけるために。

スバルはすぐに見つかった。
グラウンドの隅でいつものように、一人で柔軟運動をしている。
走り出す前に近寄って声をかけた。

「……なんであんなにいらついたんだ?
 らしくないぜ、あれぐらいで」

「ん……ま、そうかもな」

「やっぱり……夜のバイトの続きみたいなことは
 やりたくなかったってわけ?」


スバルが体の動きを止めて
ふっと空を見上げた。

「それもあるけどな……
 むしのいい話だけど、ここでまでああいう真似はしたくねえ。
 ここもなんだかんだいって、俺にとっちゃ大事な場所だったってことさ」

「そっか……」

「まして……アイツの前では、な……」

「……アイツ?」

「……なんでもねえ。それより、ホスト部の件、お前どうするんだ?
 俺が抜けると、男はお前一人……いやフカヒレもいるけど
 まあホスト役はお前だけだろ。大丈夫か?」

俺やフカヒレが困っていれば我慢しちまうんだよな、スバルは。
けど、今回はそうはならない。

「んー……まず企画そのものがポシャるんじゃないかな」

「そうか?姫はやるって言ったら……」

「大丈夫、スバルは心配しないでもいいよ」

「そうか……じゃ、走ってくる。ヨロシク頼むぜ」

「ああ、任せといてくれ」

走り去るスバルの背中に一声答えて
俺はまた竜宮に向かった。


「 却 下 だ ! 」

竜宮のドアをビリビリと震わせ響く怒声。
俺が呼びに行くまでもなく、鉄の風紀委員長・乙女さんが
俺が戻るより早く竜宮にやってきていた。
おそるおそるドアをあけると
いつになく厳しい表情の乙女さんが姫と向き合っている。

「乙女センパイ、ホストってものを誤解してますよ。
 これは接客マナーというものを学ぶことで
 円満な人間関係を築く……」

さすがの姫もちょっと飲まれ気味だ。

「それならば普通の飲食店で十分だ。
 男子が女子にベタベタする必要などない!
 我々は学生らしく、もっと健全な……」

どうも俺が口を出す必要はなさそうだな。
そもそも乙女さんがいるのに
ホスト部なんか認められるわけがないのだ。
つまりスバルの心配ははなっから杞憂だったってわけ。
これでまあ、予想通り……

と、思いきや。

生徒会企画話は二転三転し
あーでもないこーでもないと右往左往したあげく……

「それじゃ、これで決まりね」

「ちょっと待ってよ姫……なんで女装喫茶になんかなるのさ!?」


「だぁーってしょうがないじゃなーい。
 伊達クンはホストやってくれないしー、乙女センパイは猛反対だしー」

ぷぅ、とふくれっ面を見せる姫。
ふくれて見せたいのはコッチですよ?

「いやそれ理由になってないし!乙女さんも何か言って!」

「……まあ、お祭りだから、な。たまには羽目をはずしても……な?」

「さっきと言ってること違うー!!」

「い、いいんじゃないかな、対馬クンなら女装……似合いそうだよ?(ぽ」

「佐藤さん!?」

「うむ、実は小さい頃私の服を着せてみたことがあるが、あれは……」

「乙女さんやめてー!!あっ、スバル!助け……て……?」

「あ、忘れ物しただけだから。……姫?」

「なに?伊達クン、女装喫茶も反対?」

「いや、よくぞ考えだしてくれたなと思ってる。
 今まで……望み続けたものの一つがようやく……
 姫!俺にできることがあったら何でも言ってくれよな!じゃ!(シュタ」

「ぅう裏切り者おぉ〜っ!!」

飛び出していくスバルがドアを閉める音が
俺の大事な場所が一つ、壊れていく音に聞こえた……


(作者・名無しさん[2006/07/16])

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